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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
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27 ケイコ ――「のぞき」へ謝罪とフォロー

「済みません済みません! 本当にごめん!」

 マサトは早口で叫ぶと、横へたたきつけるように、ドアをバーンと閉めた。


 着替え中とは言っても、そこは、男子もいる教室である。一応、見られても大丈夫なやり方をしていた。

 すなわち、体操着のシャツのそでから腕を抜き、上にセーラー服を先に着る。で、後からシャツだけを脱いで、首元から引っ張り出す方式である。


 とはいえ、途中で腹や背の肌は見えてしまうし、手元が狂えば、下着の露出もあり得る。

 そもそもが無防備な体勢であり、女子としては、隠れてこっそり行いたいのは当たり前だ。


「あっちゃー、やらかした、やっちまった!」

 マサトは頭を抱える。タイムリープ後では、最も動転し、焦っていた。

(ああー……。そうだ、そういえば、教室の後ろは女子の着替えエリアだったか。当時、そういう約束事があったような……)

 うっすらと、今さら思い出す。もはや、後の祭りだが。


 かといって、教室へ入らないわけにもいかない。

 とぼとぼと、うつむきつつ廊下を直進し、前のドアに向かう。こちらは、あいていた。


 マサトの左、廊下側の壁越しに、教室内のざわめきが聞こえてきた。明らかに、笑いが混ざっている感じだ。

(おっ、もしかして、笑い話で済みそう……か? いや、だけど、エロ案件だもんなあ。やっぱ糾弾されっかなー)

 大人・社会人同士なら、こういったミスも、お互いさまという雰囲気で済むことが多い。しかし、子供は気まぐれである。空気が一瞬で切り替わってしまう場合も、多いのだ。そこが怖い。


 廊下側の壁には、全国模試のポスターと、大きな模造紙もぞうしが貼ってあった。

 模造紙には、マジックで「社会科見学を終えて」などと、手書きの記事が。

(さあ、どうなるかな。みんな怒ってるかな)

 ヒヤヒヤしながら、前の扉の、すき間から中へ入ると……。


「お前、何のぞいてんだコラ!」

 正面から、男子生徒がすごんできた。が、冗談めかしている。

 笑いと、冷やかす声が起きた。席は、半分ほど埋まっており、生徒は約二十人。幸い、険悪なムードではない。

(ホッ!)

 しかし、気はゆるめずに、

「申しわけありませんでした!」

 すぐに左を向いて、マサトは神妙に頭を深々と下げた。視線の先には、着替えていた本人がいる。もう、セーラー服に戻っていた。部活の朝練だったのであろう。


 今、事故で「のぞいた」時には、一瞬のことで、相手が誰だか分からなかったが、

(ああ、井崎いざきさんだったのか……)

 下の名前はケイコである。おかっぱ頭で、陽気な女の子。マサトとも、「女子にしては」比較的よく話す間柄であった。地元の農家の娘である。かわいい子だ。


 別の方向、窓際から、今度は女子二人組が、

「朝と帰りは、後ろのドアはあけないって、決めたばっかじゃん」

「そうだよ、エッチ!」

 今、野次った男子よりは、口調は幾分かシリアスだ。同じ女子で、当事者だからであろう。

 マサトは、そちらにも目をやって、

「ごめんなさ……」

「許す!」

 太い声が、割って入る。

 ケイコ本人であった。一同が、どっといた。


 正面のケイコに向き直って、

「申しわけないです。本当、以後、気をつけますから!」

 マサトは、あくまで低姿勢だ。

 タイムリープ前、「二十代」の頃は、仕事でクレーム対応もしてきたのだ。あの経験が生きている。


 ケイコは、まゆ毛の外側を下げて、苦笑いしながらこちらへ寄って来る。

 スカートをまだ履き終わっておらず、ホックを留め、横のファスナーを上げる動作。次に、腰に両手を差し入れ、スカート上部のふちを、歩きながらグッと持ち上げている。


 許してもらえたのは有り難いが、

(んっ……。スカート上げながらこっち来るなよなー)

 男目線では、気まずい眺め。ふいっとマサトが目をそらすと、ケイコは、

「ペコペコすんの、やめなよ。うだつの上がらないサラリーマンじゃないんだからさー。そんな、かしこまらなくていいって。これ決めたの、つい先週だもん。忘れちゃうよね」

 大きな瞳で、マサトを見上げる。

 女の子にしては、低い声だ。立ち居振る舞いもサバサバしており、どちらかといえば男っぽい。


(ああ、そうだよなあ。井崎さん、こういう奴だったよ。いい奴だった――)

 突然、マサトの目頭がジワジワと熱くなり出し、少し泣きそうになる。

(うわ! どうしたんだ僕は。しっかりしろ、僕!)

 驚きと動揺のマサトだが。

「――」

 タイムリープで、朝から色々あり、実は既に、結構、精神的に参っているのかもしれなかった。

【続く】


最近、ネットで知ったんですが、何と、水着も、小説本文とほぼ同じ手順で着替えられるそうです(スカート限定)。


まず、制服の中を、下着含め全て脱ぎます。次に、脚から水着を引っ張り上げ、腰まで履く。続いて、制服上着から両腕を抜く。最後に、水着を首まで上げて、肩へ通す。


男としては、そんなすごい技を使うなら、無理せず更衣室行ってよ、と思いますけどね。

もっとも、更衣室でも、女同士、余り下着や体は見せないという話も聞きます。


少年漫画でよくある「大胆に着替える更衣室での女子」って、あれ、どうやら男の幻想らしいのです。

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