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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
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26 いざ、三年B組 下駄箱、座席表

 クラスの下駄箱に、一人一人の名前は載っていなかった。番号があるのみだ。

(僕の出席番号は、十一番だったよな)

 昨夜、タイムリープ前に、卒業文集で確かめたのだ。

(どこだ? ……右上から、下へ数えるようだなー)

 見つけた。フタはなく、中が見える。上下の仕切り、上段が上履き。

「――」

 入っていた上履きを手先でつまんで、そろりそろりと引き出すと、つま先の上面に「すずさか」と名前が書いてあった。自分の字だ。

 マサトは、「その後」の人生でも、習字などはやっていない。ゆえに、中学時代から筆跡は変化していないのだ。

「ビンゴ!」

 マサトの上履きであった。素早く履き替えて、次は教室へ向かう。


(教室の場所はもう忘れちゃったけど、三年生なんだから、普通は三階だよなー)

 見当をつけて、階段を上っていく。

 すぐ、セーラー服姿の少女二人組に追い越される。外見も仕草も、とても幼く見えた。

「……」

 ふと、中年男性の自分が、中学校へこんな無防備に入り込んでいいのだろうか、通報されたりしないだろうか、という恐怖が頭をよぎる。

 無理もないことであろう。タイムリープしたばかりで、まだまだ、中年気分が抜けないのだ。


 だが、その直後、マサトの正面に、大きな鏡が現れた。踊り場の壁に、設置された物だ。

「うおおっ!」

 自然に声がもれた。

 タイムリープ後に鏡を見たのは二度目だが、全身を映したのは初めてである。

「――」

 学ラン姿のマサト。十代の幼い顔。もし、年を取った自分が学ランを着たなら、コスプレにすぎない。しかし、そうではないのだ。ちゃんと、服の中身も若い。

 まさに少年。誰が見ても、現役の中学生である。

(僕、本当に、本当にタイムリープしたのだなあ……)

 改めて、そのことを実感し、同時に、思い知るのだった。


 後ろから階段を上ってきた男子生徒が、マサトの背後で立ち止まり、

「なーに自分に見とれてんだよ」

 と、マサトの肩を軽くたたいてきた。

 鏡越しに目を合わせると、マサトと同じくらいの体格。にやにやしていた。

 振り返り、とっさに、

「いや、髪にゴミがさ……」

 でまかせを言うマサト。

 その男子は、「へへっ」と笑って、マサトを追い抜いて、階段を上っていった。


 明らかに、知っている顔だった。昔、見覚えのある顔。だが、名前もクラスも思い出せぬ。

(まあ、そのうち分かるだろ)

 とりあえず、マサトに対して友好的な生徒が、最低一人いることは確認できたわけで、幸先は良い。


 当時、マサトは、クラスでも放送部でも、人間関係はそれなりにうまくいっていたと記憶している。

 よって、さほど心配する必要はないのだけども、

(何しろ、三十年も経ってるからなあ。トラブルとかで、忘れてることもあるかもしれねえよなー)

 油断はできない。


 三階の廊下を歩き出したら、長身の男子生徒とすれ違う。

(おおっ、武田だ! やっぱり、でけー)

 こいつのことは、よく覚えている。たしか、クラスも一緒だ。身長は、百八十は軽く超えている。

 なお、マサトは、百七十センチ程度だ。


(教室、見つけた!)

 三年B組の表札を見上げる。ここだ。

 お次の関門としては、

(自分の席がどこだか、分からないことだよな。誰かに聞くのも変だしな。教卓の上に、座席表とか、置いてあったっけ?)

 などと考えながら、三年B組の、後ろのドアを横へ引いて、ガラガラとあける。

 すると……。

「キャあ!」

「おいおいおい!」

 女子の悲鳴と、遠くからは男子の責める声も。ざわつく教室。

「――っ!」

 何と、教室の後ろ辺り、今、マサトがあけたドアの近くで、女子が一名、着替えていたのだ。

【続く】


作者の中高生時代、女子たちとしても、


・男子に着替えを見られるのは嫌だ(当たり前)

・でも、毎回更衣室へ行くのも面倒

・別に、がっつり下着姿とかさらすわけでもないし……


という微妙な心境だったみたいですね。


中高生の頃って、男は子供だったけど、女だって子供でしたからね。

みんながちゃんと用心深かったかといえば、そうでもなくて、結構いい加減な女の子も多かった気がします。

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