25 佐倉先生 校内、第一関門
(おお、佐倉先生! 懐かしい。そして、お若い!)
マサトのいる、三年B組の担任である。男性にしては長めの髪を、真ん中で分けている。小柄で、太めの体型。
白いポロシャツに、ゆったりした黒いズボン。
年齢は、高くても三十五歳くらいだろう。「一回目」の当時はおじさんに見えていたけれど、今は若造に見える。
(教師って、今見ると、服装は結構いい加減だったんだなー)
などとマサトが思った時、教師の佐倉はもう一度、
「遅いよ。どうしたんだよ、鈴坂!」
声を張り上げてくる。周りの生徒が、下駄箱で靴を履き替えながら振り返る。
「鈴坂」は、マサトの名字である。
「?――」
状況をつかめず、マサトが言葉に詰まると、佐倉は、
「しっかりしろよ。朝の放送、お前、担当だろ。今日、木曜日だぞ!」
苦笑しているが、割とはっきり、機嫌を損ねている様子だ。
「あっ!」
そういえば。
佐倉先生は、担任であると同時に、部活動「放送部」の顧問でもあった。マサトも部員だ。
(だんだん思い出してきたぞ)
中学では、授業の前に掃除の時間がある。その際、校内放送で音楽を流すのだ。担当は放送部員。交代で行う。
「すっ、済みません! すぐ、三年B組の教室にカバン置いて来ます。で、放送室に行きます」
マサトは謝罪する。
わざわざ「三年B組の……」と長い説明を付け加えたのは、マサトの中では三十年ぶりであり、やる手順を忘れているからだ。もし間違っていれば、佐倉が訂正してくるはずである。
だが、佐倉は、
「おお」
と、うなずいたのみだった。この順序で問題ないようだ。
続けて、
「さっき、高屋に代理で放送室に行ってもらったから。だから、焦らなくていいぞ。でも、なるべく急いで行けよ」
「はい! ありがとうございます」
マサトが頭を下げると、佐倉は立ち去る。
高屋というのは、同学年の放送部員。隣のC組の男子だ。
マサトはスニーカーを脱ぎ、校舎内へ上がる。
「むっ」
眼前に、そびえるようにズラッと並ぶ、三年B組の下駄箱。
不意にそれが、壁かパズルのように思えた。
(やれやれ。マサト君タイムリープ学校編、第一関門ってか)
内心で笑う。さあて、自分の下駄箱はどこだろうか。
【続く】
部活動は全員強制、でも、きつい運動部は避けたい。
中学時代、そんな悩める男子新入生の(私もそうでした・笑)駆け込み寺として、以下が二大候補でありました。
・卓球部
(陸上やバスケ、柔道に比べれば楽そうだから)
・放送部
(文化系で唯一、男子部員たちがいたから。他、美術や吹奏楽は全員女子)




