24 ショッピングセンター前 交差点 ……ブルマー
やがて、二人で住宅エリアを抜け、景色はひらけていく。
大通りと公園。さらに進むと、ショッピングセンター。
スーパーマーケット、床屋、酒屋に八百屋など。ささやかな規模だが、このころは栄えていた。
(大人になってから、一、二回、訪ねたっけな。全部、老人ホームに変わってたなあ……)
そのショッピングセンター手前の交差点で、手を振って二人は別れた。
別れ際は、互いに無言であった。人通りが増え、何となく気恥ずかしかったためである。
(中身が中年でも、こういう照れくささは変わらんのだな)
マサトはフッと笑った。
交差点を直進すれば、アイリの通う小学校。左折した高台に、マサトの中学校がある。
アイリの赤いランドセルが遠ざかっていくのを、ちらりと横目で見送りつつ、
(中学への道、覚えてっかな。まあ間違えるような道でもねえか)
マサトは一人で歩き出す。
その時、前方から、ジョギングで坂道を下りてくる、十人ほどの列があった。
「おお、ブルマーだ」
思わず、声に出していた。
女学生保護の観点から、1990年代終わりにかけて縮小・廃止されたブルマーも、このころには残っている。
(朝練か)
すれ違って行く女の子たちを、横目で追う。
全員、水色の半そでウェアと、赤いブルマー姿。
ウェアの背中には、マサトが通う中学校名と、「女子バスケットボール部」の文字が、アルファベットでプリントされていた。
(学校の女子体操服は、赤じゃなくて、紺色のブルマーだったよな。部活用に、わざわざ別色のブルマーを用意して、着せてたのか。部活くらいは短パンでやりたいだろうに。大変だったんだな、当時の女子は)
こうして、改めて眺めてみると、太ももはむき出しで、お尻の形も丸わかりだ。女子たちが嫌がっていたのも、うなずける。
(当時の僕が、そういうのを見て、男として喜んでなかったといえばウソになるけど……性に目覚めてた頃だったし、目のやり場に困ってたのも確かだしなあ。まして、女子側の恥ずかしさは、容易に想像できるわな)
どちらかといえば、マサトは当時から、ブルマーを着させられる女子たちに対して、同情的であった。
坂道が終わると、戸建てに挟まれた道に出る。遠くに団地やマンションも見える。
そして、前方に校舎。フェンスや校庭と共に、ドンッと横に広がっている。タイムリープ前の、我が母校! なかなかの存在感だ。
「よーし、着いたなあ」
マサトの通う中学。校舎外壁の薄黄色は、少々くすんでいる。たしか、今この時点でも、築二十年は経っていたと思う。
(おっ、特に早過ぎじゃなく、遅刻でもないようだな)
マサトはホッとした。周囲には、登校する生徒が大勢いたからである。男子は黒い学ラン、女子は紺色のセーラー服。
自転車で登校する者は、白ヘルメット着用だ。
(変な歩き方とかして、タイムリープ初日から、不良の先輩に目を付けられないようにしないとなあ。……ああ、違うや。僕は最上級生なんだから、その点は心配ないんだった!)
辺りを見回しつつ、マサトは色々考える。
タイムリープ後、まだ、家族以外とは話していない。ボロを出さぬよう、緊張感を持たねば。
(どうやら、ほどよい時間のようだな。明日からも、これくらいに来ればいいな)
ところがであった。
昇降口へ着くと、
「ああっ、やっと来た! 遅いじゃないか!」
と、マサトをとがめる男性教師がいた。
【続く】
ブルマーについては、
1 婦人解放で始まった原型は、布がモコモコしており、体の線も出なかった
(したがって、「婦人解放運動の象徴だったブルマーを、フェミニズムが否定するのはおかしい」は成り立ちにくい。両者は別物なので。)
2 しかし、服飾・縫製技術の発展で、密着型の薄い物が普及し、女子たちは嫌がった
3 一方、競技の記録が上がったり、下着見え防止用でスカートの中に履くなど、女子側にも利便性はあった。これが、話をややこしくしていた
4 とはいえ、少女を性的に見る風潮や、女性の社会的地位の高まりにより、さすがに「女子全員着用」は廃止となった
5 「3」の機能については、それぞれ、「陸上専用ウェア」、「スカート下」として引き継がれた
といった変遷をたどったようですね。
作者はリアルブルマーを知ってる世代ですが、思ってたことは、小説本編のとおりです。
ただし、男として個人的に懐かしみ、物語や絵に描くことは、社会的な主張・責任とは別に、自由な創作活動の領域だと考えています。
(批判されることも含めて、ですけどね。)




