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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
23/67

23 とりあえず今回を乗り切る枚数、確保せよ!

 マサトはずっと独身であり、「親心」など分かりようがない。だが、四十数年の人生経験で、少なくとも、「大人の世界で通用する常識のライン」ぐらいは心得ている。

 それを踏まえつつ、アイリに助言を続けるのだった。


「……このタイミングなら、突然だったから、今回だけはお母さんに相談せずにやっちゃった、という言い訳も通るだろうさ。お母さんも仕事で忙しいしね。で、恐らくは一か月後に次の生理が来るだろうから、それに向けてアドバイスが欲しい、と言えば、お母さんも、娘から頼られて、きっと悪い気はしないよ」

「なるほどー」

 アイリは目を輝かせている。感心し切り、といった様子だ。


(やれやれ。なんだかなあ。これって、助言というより、入れ知恵だよなー)

 まるで、妹が「けがれて」いくような自己嫌悪を味わいながらも、先を続ける。

「で、しかも、このタイミングで打ち明ければ、もはや赤飯を炊こうとは思わないだろうよ。今さら感があるからね」

「そうかー! 一石二鳥だね。全部解決だ」

 アイリは、うんうんと、何度か深くうなずいたあと、

「一回の生理って、何日ぐらい続くんだろ?」


 なるほど、今回の生理は親に内緒で乗り切る以上、その点は重要である。マサトは、

「んー。たしか、一週間ぐらいだったかな。ちょっと自信ないけど、長くてそんなもんだったと思う。ナプキン足りそう?」

 まさしく、アイリも同じことが気になったようで、

「そう、そこなんだよねー。林間学校のやつだけじゃ、厳しいかも。まあ、お小遣いで買お」

「えっ、自分で買うの? 大丈夫?」

「一回だけだもん。来月からは、ママに買ってもらえるから。それに、いつかは自分で買いに行くんだしさ。練習になるよ」

「じゃあ僕も、今日の学校帰りに、ひとパック買っておくよ」

 マサトの口から、自然に出た一言だった。


 予想外の言葉だったのか、アイリの笑顔がはじけた。

「わあ、本当? ありがとう! ……けど、買うの恥ずかしいでしょ?」

「家族の生活必需品を買うのに、何が恥ずかしいのさ。アイリだって、堂々と買えばいいんだよ。まあ、別に見せびらかすことも、ないけどよ」

 言い終わってから、

(ちょっと、きれいに言い過ぎたか?)

 少し自己嫌悪のマサトであった。

 こういう、ちょっと偽善的とも取れるコメントが、スラスラ出てくるようになった辺りに、我ながら、「四十代中年」の重さと、面倒臭さを感じた。

 とはいえ、兄としてアイリを励ましたいという気持ち自体に、いつわりはない。


「本当にありがとう。いつか、何かでお返しします」

 大人っぽい口調になってしまって、照れくさいのか、アイリは舌を出す。

「お返しー? 何言ってんだよ。そんなの気にすんな」

 と、マサトも笑った。

【続く】


「きれいに言い過ぎたか?」は、


 昔、ピカソが「日本のゲイシャって何なの?」と岡本太郎に尋ねた時、「地位の高い客に対して芸能を披露する、教養ある女性たちのことです」などと岡本が答えた後に、心の中でふと思ったことです。


そのエピソードより拝借しました。

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