2 「夢の続き」とやらも間に合ってますッ!
さすがに分が悪いと悟ったか、小さな女性は、話の切り口を変えてきた。
「……じゃあ、夢の方はどうですか? マサトさんは、ずっとシンガーソングライターになりたかったはずですよね。十五歳に戻って、再び夢を追うんです!」
しかし、こちらも即答であった。
「お断りします。今はインターネット、動画サイトも充実してて、サラリーマンをやりながらでも、歌の発表は簡単にできます。最近になって、随分、自作の歌を投稿したけれど、まるで反応はなかったんです。僕に才能がないことは明白ですよ」
「そんなことな……」
女性が口を挟もうとしたが、マサトは止まらない。
「……むしろ、学生時代、その気になって歌手とか目指さなくて本当によかった。万が一、何かの間違いで、二十歳とかの頃、もしインディーズでデビューしてたりしたら、大変でしたよ。きっと、すぐ売れなくなって、落ちぶれてさ。そしたら、今さら会社勤めなんか出来ないだろうし。社会人としても同期で出遅れて、今頃、サラリーマンにすら、なれてなかったかもしれない」
負け惜しみや偏見を含んでいる自覚はありつつ、本心ではあった。
マサトの独演に、手のひらサイズの女性は絶句した。やっと一言、
「つまり……」
すかさず、言葉をかぶせるマサト。
「つまり、もう答えは出てるんですよね。恋も夢も、その後の人生で、とっくに答え合わせは済んでいる。現時点の僕が、そのまま僕の実力なんですよ。むしろ、最後に手に入れた正社員の肩書きなんて、僕にはもったいない。出来過ぎですよね。僕の人生に、奇跡はとっくに起きたんですよ。だからね、妖精さん、もう帰ってくださいな。僕の人生に、魔法やファンタジーは必要ないんだ!」
【続く】
次回、妖精の反論前に、マサトの更なる駄目押し。