17 どうやら味覚はリープ前と変わらずか
アイリを二階に残し、家の階段を下りるマサト。
キッチンなどは一階だ。
(朝めしは、それぞれ、勝手に皿に盛って食うスタイルだったよなー)
冷蔵庫をあけると、大皿やボウルに料理が盛られていた。母が、数日ごとに作り置きしてくれている惣菜である。
(やっぱりな)
自分の小皿へ適当に取って、電気がまのご飯と食べる。
(うーむ。味覚は……あんまり変わってないかな)
十五歳に戻ったら、もっと、多くの食べ物をおいしく感じるかなと思ったけれど、脳に蓄積された記憶が、タイムリープ後も優先されるらしい。
(リープ前は、まずまずの収入の四十代サラリーマンだもんなあ。ある程度、舌は肥えてるわな。さすがに料亭とかに行ったことはなかったけど、寿司、ステーキ、フランス料理のコース、和洋中。大抵のぜいたく料理は、何回か食べたからなあ)
この分だと、学校給食も、もはや、おいしいとは感じないかもしれない。あの頃は、どのメニューもおいしかったけれど。
二階の自室へ戻り、着替える。
そこまでの間に、アイリとも二、三度すれ違った。
今さっきの件が気まずいのだろう、アイリは目を合わせてこなかった。しかし、落ち着いた態度。ナプキンをあてる作業は、うまくいったようだ。
アイリも、てきぱきと食事や身支度を済ませていた。
マサトは、部屋で着替えをする。中学の制服だ。
(おお、この頃には、ブリーフじゃなくて、既にトランクスだったんだな)
ズボンを履き替えた時に、そう気付く。
(ありゃ? ネクタイがないぞ。――あっ、違う。学ランなんだから、ネクタイは締めないのか)
つい、サラリーマンの習慣が顔を出す。何せ、十年以上、平日は背広だったのだ。
詰め襟をカチッと締めると、妙にきつい。
(いや、これは外したままでいいんだったよな)
首のホックを外す。
「おや……」
羽織った学ランの、左わき辺りの裏地に、銀色のバッジが付いていた。
(ああ、思い出した!)
自作した物である。誕生日ケーキに刺さっていた銀色のリボンが、ギラッと光ってカッコよかったので、安全ピンをくっつけたのだ。
こんな、オリジナルバッジで粋がってたのか。しかも、校則違反で指導されるのが怖くて、上着の裏にこっそり付けるという中途半端っぷり。
(ヘタレが……。まあ、分からなくもねえけどよ)
ワルぶりたい、しかし、内申書など、将来のことも心配。十五歳なりに悩んだ上での、地味な妥協点。
(まあ、大人になってからも、似たようなこと、やってたかなあ。背広の胸ポケットに、派手な高級ペンを挿して自慢したり……)
フッと笑い、当時の自分がかわいく思え、そのまま付けて行くことにした。
【続く】
たまにコンビニ等で「懐かし学校給食の揚げパンを再現!」とかあったりしますけど、ああいうのって、当時より良い素材と、あか抜けた調理法で作られてる気がするんですよね(笑)。技術も進歩してるわけだし……。
あるいは、わざとマズ目に作ってあったり。「幾ら何でも、ここまでは脂っこくなかっただろ」みたいな(笑)。




