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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
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16 ナプキン現物を見たことはないけれど。

 アイリに背を向けたまま、マサトは静かな声で、事務的に尋ねる。

「じゃあ、まずは――生理の時に使う、生理用ナプキンは持ってる?」

「えっと、う、ううん、ないかな……」

 か細い声が答える。

「そっか、じゃあ、お母さんのを借りる、というか、もらおうか。――あっ、だけどさ、もしかして、学校の授業で、女子だけ配られてたりしない?」

 途中で、マサトは思いついた。

 すると、アイリも、

「あっ、そうだそうだ、林間学校の時にもらったかも! あれって、そうだったのかな?」

「すぐ、出る?」

「待って!」

 アイリの声も、はずんでいる。元気が出てきた証拠だ。


 ガサガサと、引き出しを探す音がしたあと、

「あったよ! ナプキン、生……理用って書いてある」

「よかった! じゃあ、えーと……」

 マサトも、さすがに、現物を扱った経験はない。タイムリープ前に、インターネットやビジネス誌で見た程度の知識だけだ。

 何とか、それらを思い出しつつ、

「まず、袋の封を切って。そうしたら、多分、小分けにされて、同じものが何個か入ってると思うんだ」


 ピリリッ、ガサガサと、プラスチックの封を切る音が聞こえてくる。

「――あけたよ。……うん、確かに分かれてる」

 とりあえず順調に進んでおり、マサトは安堵あんどしながら、

「その一個一個が、一回分のはず。一つ、あけてごらん」

「うん。――何か、くるくる巻いてあるんだけど」

「広げてごらん、そっとね。で、真ん中にテープが貼ってあると思うんだけど」

 マサトは、以前、イラストや写真で見たことがあるだけだ。慎重に思い出しながら説明していく。

 後ろから、アイリの声。

「うん、あるよ」

「はがすと、ベタベタしない?」

「する」

「それを、貼り付けるんだけどね」

「お尻に?」

「いや、逆。下着の方です」

 緊張と気遣いのためか、マサトは敬語になっていた。


 補足する。特に言いづらい部分なので、さらにソフトな口調で。

「ええと……血みたいなのが付いた場所があるでしょ。そこに、あてがう感じ。要は、ナプキンで出血を受け止めて、血を吸収させればいいわけ」

「なるほど。血が付いたところの、上に貼ればいいのか」

 とアイリ。

(ああ、そう取るのか!)

 マサトは焦って、

「ち、違う。もっ、もし下着を汚しちゃってたら、それは洗濯に出すの。新しい下着に取り替えてから、ナプキンを使います」

「あー! そうゆうこと? ま、まあ、ん、そりゃそうか……ハハッ」

 アイリが少し笑った。

 多分、恥ずかしさと緊張で引きつった笑顔ではあっただろう。が、今日初めて聞けた、アイリの笑い声だ。

「そう。済まん。僕の説明の仕方が悪かった」

 と、後ろ向きのまま、マサトもフォローする。


 ひと呼吸を挟んでから、マサトが続ける。そろそろまとめだ。

「じゃあ、以上のことを、トイレでやってください。僕は今から、一階で飯食ってくるから、どうぞごゆっくり」

「ああ、やっぱ、トイレでやるんだ?」

「もちろん。学校でもだよ」

「えっ、学校って?」

「予備のナプキンを持っていって、休み時間に取り替えるんだよ。三時間おきぐらい」

「ゲー、めんどくさいな! 朝、一回やればいいんだと思った」

「清潔に保つには、それがいいみたい。女子は大変だよね。で、捨てる時は、多分、女子トイレには、専用の三角形のボックスがあったと思う」

「ああ、それは知ってるかも」

「ん。じゃあ、まあ、そういうことで……」

 幾ら、「中身」は人生経験豊富な大人だとはいえ、「少女時代の妹に、生理の解説をする」というミッションは、さすがにハードルが高かった。

 少々ぐったりしたマサトは、

「それじゃ、お邪魔しました」

 何とか、短いあいさつをして、振り返ることなく、アイリの部屋をそそくさと出たのだった。

【続く】


作者が小5の頃、林間学校の説明会の終わりに、女子だけが別室へ呼ばれて、何か包みを1個ずつ持って出てきたんですよね。あれが、生理用品だったのじゃないかなと。


ところが、軽くネット検索した限りでは、そのような教育施策も体験談も出てこなくて。

遠い昔ですので、もしかしたら、何らかの別件と記憶違いをしてるのかもしれません。


今回のお話では「正解」としましたが、(特に御年配の女性が)「聞いたことないよ!」ということでしたらごめんなさい。

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