13 オハヨウ、オハヨウ、オハヨウ・・・
いつもは「ピピッ、ピピッ」と鳴る目覚まし時計が、今日は違う音をたてた。
「オハヨウ、オハヨウ」。
女の子の声を模した、合成音。
「……っ!」
マサトは、布団から腕を伸ばして、四回目の「オハ……」で止めた。
豚のキャラクターの目覚まし時計。色はピンク。鼻がボタンとなっている。
懐かしい。たしか、小学五年の時、祖母に買ってもらった。で、高校生まで使って、そのあと壊れて、捨てたのだ――。
「……ゲッ! 本当にタイムリープしやがった!」
第一声。
ガバッと跳ね起きる。朝、六時。
いつもの、一人暮らしのアパートではない。かつての実家であった。戸建て。
(ひでえ散らかりようだなー)
床は、服や教科書、紙で、ごちゃごちゃだ。
「そうだ……」
とりあえず、紙を一枚拾い上げ、学習机に近づいて、二つの番号をメモする。
暗記した、宝くじの番号であった。すぐ書いておかないと、忘れてしまう。
(これ、何の紙だ?)
質の良くない、茶色い紙。わらばん紙という名前だったか。
おもてには、「五月の献立表」。中学の給食の物であった。
「プッ」
マサトは吹き出す。なんて平和なんだ。材料まで、日ごとに詳細に載っている。カレーライスには、いつも最後に書き添えられていた、はちみつ――。
頭を上げる。壁には鏡。そこに映る、あどけない顔の自分。
(うおお! 僕、若い!)
思わず口をあける。
(おお! 奥歯に、歯医者の治療の跡もないぜ!)
この頃には、まだ虫歯がなかったのだ。
「さて……」
後頭部の寝癖を、片手で押さえつつ、
(ええっと。まずは、一階で朝めしを食うんだっけ?)
中学時代の生活習慣の、記憶をたどる。昨夜、「復習」して、少し思い出しておいてよかった。
たしか、父親は既に朝早く出勤し、母親はもうすぐ夜勤から帰宅する、というのが、平日の基本スタイルだったはずだ。
「――」
タイムリープという、とんでもない現象が起きたにもかかわらず、自分でも驚くほど、マサトは落ち着いていた。
昨夜、散々、心の準備をしておいたためか。
(まとまった貯金のある、中年の、正社員の僕は、もう、いないのだ。たった今、僕は中学生に戻ったんだ。頭、切り替えろっ!)
【続く】
この、豚の目覚まし時計、商品名も覚えてるので、後でググってみよう(笑)。
当時、結構売れたんじゃないかなあ。1990年頃です。クラスメイトで、もう一人、家にあるよって人がいたくらいだから。豚なのに鉄アレイ持ってるの(笑)。
というわけで、無事に(?)、タイムリープしました。
今回の話を書き始めてから、自分の中学時代のことをどんどん思い出すようになりました。これも、創作の楽しさなのかもしれませんね。




