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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第一章 タイムリープ YES or NO【マサト45歳・西暦202X年】
11/67

11 悪意は出さない。勇気も出さない。

 マサトは布団に寝転ぶ。

(――そうだ、クラスメイトの未来をネット検索して、覚えておくか? アドバイスしたり、弱味を握ったり出来るかも)

 だが、ネットで調べたところで、実名でヒットする人は少ないはずだ。

 大人になってからの、その後のネット検索によって、二人ほど、市議会議員と、大学の准教授になった者を知ってはいるけれど。


 また、中学時代、マサトは特にイジメなどにもわなかった。男子同士の、小競り合い程度ならあったけれど。

 つまり、過去へ戻っても、差し当たって、誰か復讐したい相手がいるわけでもないのだ。弱味を握っても、使い道がない。


(クラスや学年の美少女の弱味を握れば、あんなことや、こんなことも……)

 マサトも男として、そんな発想も、心のどこかには、ないではない。

 だが、

(くだらないな)

 と、自分の下衆げすな思いを打ち消す。

 性的な暴力の鬼畜さを横に置いても、そういう行為をすることに、何のメリットも感じない。


 マサトの四十数年間の人生、地味で味気なかったが、犯罪歴はない。

 悪事がバレるのではないかとおびえることもなく、恐らくだが他人からうらまれることもなく、普通に社会人として平和に生きてこられた。

 これが、どれほど有り難いことか。学生時代にはなかなか気づけないことだが、大人になった今なら、身にしみて分かる。


(性的な暴力は言語道断だけど、たとえ合法だろうと、刺激的な行動は、どっちみち、やめよう。未来の情報を悪用できそうな局面があっても、なるべく知らん顔しよう。冒険はしない。好きでタイムリープするわけじゃないのだし。逆に、変な使命感や正義感を発揮するのもやめよう)


 例えば、社会に衝撃を与えた凶悪犯罪者。

 マサトの中学卒業後にも、何人か、報道で顔も名前も覚えてしまった者もいる。そいつらと、街で出会うことだって、あり得るのだ。


(万が一、そうなろうとも、見て見ぬ振りをするしかないよな? 何もしてないうちから通報するわけにも、殴るわけにもいかんし、どうしようもないもんな。僕、おかしくないよね? これ、普通の考え方だよな?)

【続く】


今回は哲学的なお話でした。


自分が見て見ぬ振りをした問題に、周囲の人が積極的に関わって助けてるのを目の当たりにして、「ああ、俺って、大して善良な人間でもなかったんだな」と思い知ったことが、私には何度かあったりします。

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