プロローグ
38年前。この世界に生を享けた。
平凡な村に生まれ、平凡な両親のものに産まれた。極々普通の少年だった。
人生の転機は六歳の時。友達と一緒に森を走り回っていたときであった。当時、なにも考えずに走り回っていた俺は崖から落っこちてしまった。普通に落ちれば即死不可避であろう高さ。しかし、俺は生きているどころか、何故か怪我ひとつ無かった。そして、俺の倒れている傍らには、「魔剣」が転がっていた。
魔剣。突如として主人のもとに現れる特殊な剣。現れる人物に規則性はなく、ホームレスのおじさんに現れることもあれば、今回のように、物心付く前の子供に現れることもある。魔剣には『覚醒』と呼ばれる技能がある。これは、ある程度魔剣を使いこなすことが出来れば発現する力であり、その力は千人力。ましてや、一人で騎士団並の戦力があると言われている。実際、世界で名を馳せている大国は必ず魔剣持ちを抱えている。
そんな魔剣持ちを国が無視するかと聞かれれば、そんなことはあり得ないだろう。魔剣が俺に顕現してから一ヶ月後。王家の使いと名乗る人物たちが押し掛けて来た。そして俺はなし崩しに、王家の後ろ楯を貰い魔剣の稽古に励まされた。
ここから、俺の人生の歯車が狂い始める。
王家の指導のもと魔剣の稽古を始めてから五年が経った頃である。本来の魔剣使いであれば頭角を表し始めるであろう頃。俺には魔剣を使いこなす前兆は見えなかった。
これに国王は腹を立てたりはしなかったが、ここら辺から段々とその視線は俺への興味を失って行くことが肌で感じ取れた。
王家の指導のもとで魔剣の稽古を受け始めてから14年。20歳の誕生日のことである。その時から既に、悪い前兆はあった。メイドや執事たちからは魔剣の才能がないのではないかと陰口を言われ、稽古をしてくれる騎士団の人たちからは鍛練と言う名の雑用を任され、俺の地位が段々と下がり始めているのは自覚していた。そのタイミングで、国王から呼び出された。そこで言われたのは案の定と言えばいいのか、予想していた言葉であった。
「今日を以て、騎士見習いを解任する」
それに対しての返事は驚くくらいすんなりと口から出てきた。俺も、多少の負い目は感じていたからだろうか。
王城を出てすぐ、俺は故郷であるルービスト村への馬車を探した。ルービスト村のような、町から離れた小さな村には商人が物資を届けるために定期的に馬車が通っている。俺はそれを探した。
しかし、探しても探しても、ルービスト村行きの馬車を見つけることは出来なかった。不審に思い、色々と調べた結果、ルービスト村は四年前に魔物の大軍により滅ぼされていた。
それから、俺は冒険者登録を行い食い扶持を繋げていった。正直、俺にはもう生きる意味がないと思える。だが、自殺をするというのも目覚めが悪い。
そんな言い訳を自分に言い聞かせてきて、もう18年が経った。俺の歳はもう38である。
これが、俺--エスカイルという人物の軌跡である。正直、クソみたいな人生を送っていると我ながら思う。だが、俺は生きる意味があると思っている。何故だかは分からない。だが、死んでは行けないような、そんな気がするのだ。
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