ぽんツカミ約束
第一章前編の最終話です。ガチのラスボスであるオオカミとの最終決戦、バルチンとの戦いに勝利したたぬきは戦争終結へと動きます。勝ったから戦争はおしまいという訳ではなく、終わらせ方もまた大変…という雰囲気を感じて下さい。
バルチン全滅の報は世を駆け巡ります。たぬきの里は諸手を上げて喚起し、オオカミの女王は玉座に座ったまま失神しています。クマの里ではまさかの報に外相が終戦の仲介の準備を急いで始めます。誰が予想したでしょうか、たぬきの里の勝利でオオカミの里と終戦の講和会議が開かれます。
仲介役のクマ外相はオオカミ外相を負け犬の席に座らせたとニヤニヤしています。たぬき外相は冷汗をかいて座っています。たぬきはバルチンを全滅させ、オオカミをきつねの里の遥か遠くまで追い返したのですから、完全勝利です。しかし正直なところはこれ以上の継戦能力がありません。たぬきの里の財政は戦費の拡大で火の車、破産寸前です。
オオカミ外相も冷汗ダラダラです。オオカミは当然負けていたのですが、たぬきごときに負けたことを認めたくないので、なるべく被害を出したくありません。オオカミの里では連戦連敗に嫌気が差し、嫌戦気分が充満していたので、これ以上戦争が続けば革命でも起きかねません。故に負けてやった風にしたいのです。両者の思いは嚙み合ったのか噛み合っていないのか、講和会議はもめることなく続きます。両者とも席を立って決裂させられなかったからです。たぬきは
・きつねの里の保護権
・とらの鼻先の地の借地権
・とらの頭の地にあるトロッコ輸送の経営権
・オオカミとたぬきの地のあいだにある海の漁業権
を獲得します。賠償金はなしです。
きつねの里の保護権は、とうとうたぬきもきつねの土地の安寧をきつねに任せておけないと堪忍袋の緒が切れた訳です。その見張りのためにとらの鼻先の地を借り受け、とらの鼻先へとつながるトロッコ輸送の経営権を譲り受けます。このトロッコ輸送は陸運の重要拠点であり、海運へとつながっていきます。経営は莫大な利益をもたらすため、賠償金は我慢です。最後にオオカミとたぬきの地の間の海の魚はたぬきの物としました。たぬきはなんでも食べます。
これでたぬきの里は最大の危機を跳ね返し、たぬきの里の安全を勝ち取ったのです。たぬき維新以来のたぬきの願いは成就したのです。
「わーい、カニだー、ウニだー、イクラだー。」
美味しいけど、そこじゃない‼
後のとらの里の高官は記していました。
『とらの里はとらの頭の地からオオカミ勢力を駆逐するために、いかなる種類の行動も全く取ろうとしなかった。もしたぬきがオオカミと戦い、これらを打ち破らなかったならば、とらの鼻先の地のみならず、とらの頭の地の全ても、そしてその名前までも、今日オオカミの里の一部となっていた事は全く疑う余地のない事実である』。
たぬき維新以来のたぬきの願いは大成し、最大の危機を乗り越えたたぬきの里は諸手を上げて勝利を祝います。御柱様の御殿の御簾の奥からは不気味な笑い声が聞こえていたという話もあり、軍部のたぬきと造船部のたぬきが肩を組んでリンゴ酒とみかん酒をちゃんぽんにして飲んでいたという話もあります。外交部は戦争の後片付けに追われていましたが、笑顔で走り回っていました。そう、まさに里を上げて大勝利を祝いました。
第一章 前編 完
たぬきおめでとう!いやー良かったね!めでたし!めでたし!ハッピーエンド!…で終わっておきたいのです。でも第一章後編はたぬき没落の話。それでも書かなければいけない理由がありました。