表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぽんぽこの道 ~歴史に自信をなくした者へ~  作者: ぷみわに
ぽんぽこの道 ~歴史に自信をなくした者へ~
24/93

バルチン

ぽんカミ戦争の雌雄はこの一戦で決します。たぬき艦隊vsオオカミ最強の第一艦隊。名前は通称バルチンです。本作で最も盛り上がる場面ではないでしょうか!まだ半分も終わっていないのに!

 オオカミの第一艦隊、通称バルチンがたぬきの里に向けて出撃したとの情報を得たたぬきの里は、このバルチンとの戦いが最終決戦だと考えます。この重要な決戦の指揮を任されたたぬきはトーゴー艦隊長。彼はたぬき艦隊の総力を結集して迎え撃ちます。


「この戦いに勝たなければ今までの外交部や造船部、陸軍の努力は全て無駄になる。そしてこの戦いのためにあらゆる訓練、努力を重ねてきた。たぬきの里の命運はこの戦いにかかっている‼」

「おおぉぉぉー‼」


たぬき艦隊の海兵は一致団結して出撃しました。

 

  さて、たぬき艦隊とバルチンは向かい合います。バルチンから射程も長く、石も大きいオオカミの投石攻撃が始まります。


「オラオラァ!たぬきの船などすぐに沈めてやるわぁ!」


と力任せに剛速球を投げつけます。しかし船上のたぬきはあまりにも小さくて当たりませ ん。たぬきの船の周りにはたくさんの水柱が上がっています。


「あ…あいつら…マジでヤバい…。」


船の縁から目だけを出して戦況を観察していたたぬきは、オオカミの桁外れの攻撃力にブルブル震え、船の中で縮こまっています。オオカミもたぬきに当たらないならば船を破壊しようと船に石をぶつけます。たぬきの船の船体にはしなりの良い柳のリースが多数取り付けられています。敵の投石攻撃に対してクッションとなり、仮に沈没すれば浮き輪となるように、重いものを積んでも浮力の助けとなるように。そう、造船部の研究開発の成果です。船に石が当たっても、この柳のリースが被害を最小限にしてくれます。投げるオオカミは当たってもほとんど効果のない投石にイライラします。


「こうなったら直接船に乗り込んで肉弾戦か!逃げ場のない船上でたぬきに負けるはずがない!」


オオカミは大きな勘違いをしていました。たぬきから投石攻撃がないのは、たぬきが非力すぎて射程外だからだと。オオカミは肉弾戦への移行に活路を見出そうと、そのまま一列に直進します。じっと目を閉じて動かなかったたぬき艦隊長、トーゴーが目を見開き、立ち上がって命令します。


「今だ!作戦開始!90度回頭‼」


一列に直進してくるバルチンに対して横一列の艦隊列を組みます。一糸乱れぬ鮮やかな動きにオオカミ一同、唖然とします。


「何だ?逃げる気か?一度も投石せずにか?」


予想外の展開に、オオカミ達は動揺します。勝ったと喜ぶ者、状況を飲み込めずに動きを止める者、艦隊の動きに見とれる者…。いずれにしても混乱していました。そして、たぬき艦隊の隊列が完成するや一斉にたぬき艦隊からの投石攻撃が始まりました。しかし、石は小さく山なりで飛んでくるので当たっても大して痛くありません。オオカミは笑いながら、


「なんだ、たぬきはこの程度か!」


と勝ちを確信します。その時です。バルチンの先頭の船がズブズブと沈んでいきます。


「えぇ⁉」


オオカミ達は何が起きたのか理解できません。そう、たぬきの狙いはオオカミやその船に石を当てることではなく、オオカミの船に石を積むことでした。たぬき艦隊の全艦でバルチンの先頭を集中砲火する。もともと重いオオカミを乗せた船に石を積み、過積載にして沈めていきます。


そのことに気付いたオオカミは石を掻き出そうにも石が小さく、数も多いので効率良く出来ませんし、しゃがんでうつむいて石を拾っていると後頭部に石が当たってイライラしてきます。そして、沈めばオオカミは後続の船に泳ぎ着いて乗り込むので船はどんどん重くなっていきます。一列に直進するバルチンは、たぬき艦隊に沈められに行くようなものです。


たぬき艦隊長トーゴーは叫びます。


「正確に投石しろ―!当てるんじゃない、載せるんだ‼」


鬼の形相でトーゴーも両手に石を持って投げます。相手に投げつけたいのを我慢して、フワリとオオカミの船に置くように、優しく投げます。バルチンはドミノ倒しの様に先頭から順番に沈んでいきます。最後の一隻が沈んだ後、たぬき達はオオカミ達に救命艇を出します。この船にオオカミ達が乗り込んだところで、この戦いは終結しました。たぬき艦隊の完全勝利でした。

最も盛り上がる場面を最も意外な戦法で書いてみました。でもたぬきっぽくてその情景を思い浮かべるだけで楽しくなります。どんな顔してどんなポーズでたぬきは石を投げているのでしょうね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ