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女子高生が『車部中』になっていく話  作者: メダリスト爺
冬支度とまさかのヘビー級整備編
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順序と正解

 私がそのまま固まってしまっているところに柚月ちゃんが背後から


 「アライメントってのは~、足回りのバランスみたいなものの事だよ~。でも、今は関わってこないから~そのまま作業進めても問題ないよ~」


 と言った。

 柚月ちゃん曰く、ミッションの載せ替え自体はアライメントとは関わらないので、作業を進めてしまって、組み終わった段階で別個にアライメント調整に入ればいいとの事だった。


 「それじゃぁ、今日からはじめられる所は、はじめましょうよー」


 1、2年生の温度感の高さがひしひしと伝わってきたものの、まだ部品が揃い切っていない状況に私は返答しかねていると、舞華ちゃんが


 「それで良いと思うよ、燈梨。だって、初心者が今日で出来る事なんて、たかが知れてるし、今日でミッションが抜ければ良いところじゃないかな?」


 と言った。

 今揃っていない部品は、クラッチとエンジンマウントだ。

 これらは消耗品で、ドナーについていた古い物を使う訳にはいかないので、教師水野に手配して貰っていた。


 確かにそれらは、この作業の後半戦で必要になってくるもので、前半戦のミッションを取り外す段階では全く関わりの無いものだった。

 それに、3年生を除いて、私たちにはミッションを取り外した経験が無いので、取り外しにかかる時間は途方もないものになるのではないかという推測が成り立つのだ。


 私は、考えた末に


 「そうだね、じゃぁみんな、ミッションの取り外しまでを目標にやってみようか?」


 と言うと


 「ハイッ!」


 とみんなの元気の良い返事が返ってきた。

 今回は、ドライブシャフトも交換するけど、作業の効率的にはミッションから切り離した方が良いと思われたため、最初にドライブシャフトを抜くことにした。


 まずは、邪魔になる部分をすべて外すためにブレーキキャリパーとローターを外した。

 正直キャリパーは外さなくてもいけたんだろうけど、せっかくなのでこの機会にキャリパーのオーバーホールも覚えたばかりなので感覚を忘れないためにやってみようという事になり、やる事にして外してみたんだ。

 これも後で教師水野に手配を頼んでこよう……と思ったら


 「私、行ってきます!」


 と沙綾ちゃんが車体番号をスマホで撮影して、職員室へと消えていった。

 なんか、今日はみんなすごく張り切ってるね。


 「そりゃぁ、作業の主体が自分達になって初めてのヘビー級作業だよ。嬉しいに決まってるじゃん!」


 と、舞華ちゃんが言った。

 更に続けて

 

 「今までは、いくらセフィーロやシルビアの作業をしても、発案者が自分達じゃないからぶっちゃけやらされてる感があったんだけど、今回のは1から10まで自分達の企画なんだよ! やりがいも違ってくるってもんだよ」


 と言った。

 私はそれを聞いて衝撃が走るのを覚えた。

 私は、作業をみんなとできること自体がとても楽しかったのだけど、初期メンバーである七海ちゃんや沙綾ちゃん達は、もう既にその段階を越えていて、自分達で考えた作業を自分達の主体でやりたいのだ。


 もう、3年生は引退しているのに、教師水野のたくらみで3年生の手助けを受けた作業をやっていて、自分達の実力を認めて貰えない事に対する苛立ちのようなものも含まれているのかもしれない。


 となると、今回の作業は彼女たちにとっては初めての自分達が主役の作業となって、3年生に安心して一線を退いてもらう初の舞台になるのだ。

 偶然とはいえ、車がムーヴになったのも、暗にその表れなのかもしれない。部車の中で3年生が最も関わっていないのがこのムーヴなのだ。


 部の設立当初からあったものの、欲しくて導入した訳でもなく、使い道も見いだせずに邪魔者扱いされていたこの車を復活させてこそ、3年生にでき得なかった事を成し遂げて、私たちの時代がきた事を示す事ができるのだ。


 さて、作業に戻ると、ブレーキが外れたところで、ハブを留めている大きなナットを取り外すんだけど、結構大きなナットな上に、かなり硬く締まっているから、ガッチリと力を入れて緩めないといけないらしい。


 「やぁっ!」


 七海ちゃんがあっさりと回してしまったよ。

 ウチの部はこういうところは助かるよね。普通はかなり苦労するところも、あっさりと片付いてしまうところがね。


 次にショックアブソーバーとロアアームをボルトナット2本を外して切り離してから、ハブを抜いてしまう。

 そして、左右のタイヤの切れ角を繋いでいるタイロッドも切り離して、遂にドライブシャフトを抜くんだけど、理論上は抜けるはずのドライブシャフトが、なかなか抜ける気配がなくて、みんなが難儀していたけど、七菜葉ちゃんがバールでこじりながら力一杯蹴ったところ、あれだけ頑固だったドライブシャフトが遂に抜けた。


 同じ要領で逆側もやったんだけど、何故か拍子抜けするほど助手席側に比べてあっさりと抜けたのは、決して私たちが助手席側で作業になれただけという事ではないと思うんだ。


 次は、助手席側のエンジンマウントを緩めてエンジンを傾けながらミッションを抜く作業だ。

 その前に、並行してATのシフトを入れた際にミッションに実際に指令を与えているコントロールロッドというものを外しておく。

 結構手が入り辛い場所ではあるけど、なんとか外す事に成功して、ミッションとシフトレバーとの接続は切れたよ。

 それにしても、ATのシフトレバーって、あんな細い金属の板で動かしてたんだね。驚いちゃったよ。


 次に遂にエンジンマウントに入ったんだけど、エンジンマウントに至るまでにバッテリーやヒューズボックスがあるので、その辺も撤去しておく必要があるんだよね。

 エッセの時も思ったんだけど、やっぱり軽自動車のエンジンルームって、ターボなしでもギッチギチだよね。

 その下にある真っ黒な塊みたいな物こそ、目当てのエンジンマウントなんだ。事前にネットで調べたところ、この型のムーヴのエンジンマウントは切れてる場合が多いみたいだから、これを機会に替えておくべきみたいだね。


 エンジンマウントはその名の通り、エンジンをボディに載せているもので、エンジンとボディを唯一繋ぐところとなるんだ。

 このエンジンマウントの中には防振ゴムが入っていて、エンジンの揺れや音が室内に入り込まないようになってるんだけど、長年の走行による経年劣化や、エンジンからの熱などによって風化して切れている場合もあって、そうなると音や振動が大きくなっていき、更にはエンジンの揺れをダイレクトのボディに伝える事によって、ボディがきしんだり緩んだりするという弊害もあるんだよ。


 なので、今回のミッション交換と共に交換してリフレッシュしてみるんだ。

 七海ちゃん曰く、これでゴミ捨ても楽しく行けるんだってさ。


 交換は、ミッション交換後、元に戻す際にやるので、今回はまずは緩めてエンジンを傾けていく。

 緩めて、下から若菜ちゃんと志帆ちゃんが引っ張って、上からは陽菜ちゃんが乗って足で押したりしながら揺らしてみたりしたところ、遂に“ゴクッ”という音と共に、ミッションが傾きながら落ちてきた。


 「やったぁ!」


 七菜葉ちゃんが言うと、周囲にいたみんなが大喜びしながら、嬉しさを体現していたよ。

 なんか、みんなと一体になった気がした瞬間だよ。

  

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『バラし始めちゃうと、元には戻れないんじゃないの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

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