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女子高生が『車部中』になっていく話  作者: メダリスト爺
冬支度とまさかのヘビー級整備編
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サイドブレーキ

 翌日、解体屋さんで調達できる部品を受け取ってくると、サファリで学校へと戻った。

 現地での取り外し作業があると思って準備していったのだが、昨日中に解体してしまいたかったというおじさんの意向により、既に部品だけにされていた。


 樹脂製のバケットに入れられたショートパーツの他にミッション本体、それとリビルトのドライブシャフトにマフラーを積み込んだけど、思ったよりも軽くて驚いてしまった。

 確か以前にスカイラインのミッションを持った時、ミッション単体でも結構な重さがあったので、それなりに身構えていた私には拍子抜けだったけど、おじさん曰く、軽で前輪駆動だったらそんなものだとの話だった。

 なるほど、これなら初心者の私たちが作業しても、さほど負担にはならないかな……と思いながらおじさんにお礼を言いに行ったところ


 「内装やペダルも入れておいたから、これで問題なしだよぉ」


 と言っていた。

 どうやらおじさんは、以前からネットを使ってマニュアルの載せ替えキットというのを商品化して、通販していたそうだ。

 なので、載せ替えにあたってどんな部品が必要になってくるのかを熟知しており、今回もすぐに準備したそうだ。


 「そうだそうだ。今回の作業はなるべく画像を多めに撮って貰えると助かるなぁ」


 とおじさんは続けた。

 どうやら、これも今後キット化する予定でいて、その説明書を作るために画像が欲しいそうだ。

 なるほど、その条件として今回のも安く卸したんじゃないかな? ここでのお金のやり取りは以前から教師水野が話をつけていて、いくらかは分からないけど、きっとそういう事なんだろうと思う。


 ガレージに戻ると、待ち構えていたみんなが、奪い合うように部品を降ろして、内容を確認していた。

 そして


 「早速、ミッションを交換しましょうよ!」


 と前のめりになっている塔子ちゃんを制して


 「まずは、どうやって作業を進めていくかを打ち合わせて、きちんと担当を分けるよ! FR用より軽いとは言え、落としたりしたら危ないからね」


 と言うと、七海ちゃん達と打ち合わせた通りに最初は持ってきた部品の確認を行った。

 ミッション本体とシフトレバーの他に、クラッチやブレーキのペダルに加えて、何故かサイドブレーキレバーが鎮座しているのを見て、私は気付いた事があった。

 確か、あのムーヴのサイドブレーキは、足踏み式のパーキングブレーキだったハズだ。


 となると、サイドブレーキのシステムをまるっと変更しなければならなくなるのだ。

 そうなると、床に穴を開けたりする大改造が必要となってくるのだ。


 「みんな、このムーヴの載せ替えには、サイドブレーキの入れ替えとかが入ってくるから、大作業になるよ。大丈夫?」


 私は思わず口走っていたが、みんなは素っ頓狂な表情になった後で笑い出して


 「そのくらい、知ってますよぉ~」

 「だから、前席のシートが入ってたんですよね」


 と、口々に言った。

 私は、解体屋さんで前席のシートを用意されていてビックリしたのだが、それはシートがヘタっているから、おじさんがおまけでつけてくれているのかと思っていたのだ。

 正直、自分の観察力の足りなさにちょっと嫌悪感が湧いてきていた。

 すると、背後から


 「燈梨ぃ、気にする必要ないよ。私らだって、セフィーロのATとMTでサイドブレーキの方式が違うなんて、作業してから初めて気づいたんだからさぁ」


 と舞華ちゃんの声がしたので、私は思わず


 「えっ!?」


 と口にしていた。

 舞華ちゃんの話によると、セフィーロのオートマ車はペダルで制動して、シフトレバー後ろにあるノブで解除する仕組みのために、コンソールボックスを専用品にしたり、それぞれのワイヤーを撤去したりまとめたりする作業が必要になって、結構手間がかかったそうだ。


 「まるでドリ車の載せ替えみたいで、カッコ良いです!」


 美桜ちゃんが目を爛々とさせながら言った。

 若菜ちゃんの話によると、美桜ちゃんはドリフトに興味津々で、暇さえあればドリフト車の制作に関する動画なんかを見ているそうだ。


 それによると、美桜ちゃんは免許を取ったらマークIIかローレルの通常グレードを安く買って来てから、解体屋さんでエンジンやミッションを載せ替えて乗る事を夢見てるそうなのだ。


 妙にやる気のみんなを見ていて、私は理由は分からないけどこの作業は成功するような妙な自信が湧いてきた。

 そして、この作業をみんなで成功させることによって、きっとこれからの部員の団結力が凄く上がるようなそんな自信が湧いてきたのだ。

 よしっ、はじめよう!


 まず私たちは準備に取り掛かった。しばらくは自走できなくなる事を想定して、予めムーヴは半地下の無い方の一番奥のスペースに移動していたが、1年生に指示を出してジャッキアップして、4輪にウマをかけた。


 「ミッションだったら、地下の方が作業しやすくないっスか?」


 七海ちゃんがその様子を見て怪訝な表情で言ったが、私は


 「でも七海ちゃん。その前にドライブシャフトも抜くんだよ。そうすると、前輪が八の字になって傾くと思うよ」


 と言うと、七海ちゃんはハッとした表情になって黙ってしまった。


 「このっ、バカナミが! 車の構造頭に浮かべてから話しなさいよっ!」


 沙綾ちゃんが、何故か怒りを七海ちゃんにぶつけていた。

 以前の沙綾ちゃんって、冷静に物事を分析して、ボソッとアドバイスをくれる、孤高の観測者ってタイプだったんだけど、こと、七海ちゃんが副部長になってからは妙に七海ちゃんの失言や行動に厳しい態度で臨むようになった気がするんだ。


 そんな様子で2人を見ている私を、柚月ちゃんと陽菜ちゃんがニヤニヤしながら眺めていた。

 どうやら、何かあるらしい。

 すると、七菜葉ちゃんが、私に耳打ちした。


 「あの2人は、昔からああだったんですよ。七海っちがアホな事言って、沙綾っちに怒られてるから、七海っちのバランスが保たれてるんです」


 話によると、七海ちゃんは決して頭が悪い訳ではないが、おっちょこちょいなところがあるのと、妙な茶目っ気があるので、凄く悪目立ちしてしまう時があるそうだ。

 それを暗に引き締めているのが沙綾ちゃんで、沙綾ちゃんのおかげで、七海ちゃんのカリスマ性が引き立っているのだそうだ。


 妙に成り立っているみんなのバランスに納得しながら、タイヤを外されたムーヴの状態を見た。

 やっぱりブレーキローターもガタガタなので、この機会に何とかした方が良いね。


 「軽用だから、安いんじゃないですか?」


 七菜葉ちゃんが言った。

 確かに、予算との兼ね合いになるんだろうけど、命を預けるブレーキにあまり妥協はしたくないなと思って、私はメモを取ると後で教師水野へと進言する事にした。


 そして、外したタイヤを見て私はビックリしてしまった。

 そのタイヤは何故か内側だけ溝がツルツルになっていたのだ。

 すると、それを見た舞華ちゃんが言った。


 「あちゃ~……ごめんよ燈梨。私らが点検をサボってたせいで、こんな事になっちゃってさ」

 「いや、3年生のせいじゃないよ。点検は、私達だってしなくちゃいけないんだし」


 私は思わず言っていた。

 しかし、なんでこんな減り方をするのかが、私には疑問だった。

 教習所で習ったのは、タイヤの空気圧が異常だと、タイヤの減り方がおかしなことになるというものだったので、もしかするとそうなのかもしれないと思って言おうとしたが、沙綾ちゃんが


 「アライメントが異常だったのかもしれないですね」


 と言った。

 あらいめんとってなに? 私の頭の中は真っ白になってしまった。




 

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『アライメントって、どういう事?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。


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