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女子高生が『車部中』になっていく話  作者: メダリスト爺
冬支度とまさかのヘビー級整備編
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季節の変わり目と新兵器

 セフィーロの登録が終わって、念願の4WDの部車が我が部にもやって来たんだ。

 部内はセフィーロの話題で熱くなっているところだけど、この機会なので、次の日からはシルビアの基本整備をもう1度念入りにやったんだ。

 やっぱり季節に1回はオイルを換えてあげたいし、冬本番に突入する前に、念入りに整備してあげた方が良いよね。


 それも完了した火曜日、私と七海ちゃんは、教師水野から呼び出しを受けて昼休みになると同時に職員室へとやって来た。


 「今日来て貰ったのは他でもない。部車のスタッドレスタイヤへの交換の手配が済み、今日物がガレージに到着したので、交換して欲しい。ちなみにリストはこれだ」


 また、勝手に決めたのか……と思って、私はイライラして思わず言った。


 「前にも言いましたけど、事前に言ってください! セフィーロの登録の時も、みんなが来るなんて聞いてませんでした!」

 「登録の件は申し訳なかった。しかし、このタイヤの件は、事前に3年生が決定していたものに沿って用意しただけだ」


 と言うので、私は何も言えなくなってしまった。

 私の様子を見ていた教師水野は


 「それと、これからの季節に必要な高圧洗浄機も用意したので、早速ガレージに運んである。存分に活用してくれたまえ」


 と言うと、打ち合わせは終わった。


 放課後になって、ガレージにやって来た私たちの目に、ガレージの隣に建てられた妙なテント状のものが飛び込んできたので見てみると、その中には冷蔵庫を横倒しにしたような感じの鉄の箱に、ホースがついたものがあった。


 「これって、コイン洗車場とかにある洗浄機じゃないですか?」


 沙綾ちゃんがこそっと耳打ちした。

 どうも、見てみると脇にスイッチが付けられているけど、このパネルのボタンの所に明らかに料金が書いてあった痕跡があって、沙綾ちゃんの言う通り、コイン洗車場にあった物だと思われるよ。

 それにしても結構大きくて立派な機械だね。でもって、今までのホースリールで洗車するのでも用は足りないかな?


 「これがあると、下回り洗浄に効果バッチリっスよ!」


 私の考えを見透かしているかのように、七海ちゃんが言った。

 それによると、これからの時期、道路に撒かれる融雪剤に含まれる塩化カルシウムが付着するので、それをマメに洗い流していかないと、あっという間に床やタイヤハウスが錆びついてしまうのだそうだ。

 確かに、文化祭前はスカイラインGTEの床一面がサビだらけになっていて、その除去作業をやってたけど、あそこまで広がっちゃうと結構厄介だと思いながら


 「そうだね。あのGTEのサビは凄いものがあったからね」


 と言うと、七菜葉ちゃんが


 「あれでも、そこまで深刻な状態じゃなかったですよ」


 と言いながら、私にスマホの画像を見せてくれた。

 そこには、虫食いのように穴が開いたり、虫歯のように溶けてしまったかのような痕跡のある、恐らく軽トラックのものと思われるシャーシが写っていた。


 「これが隣のおじいさんの軽トラの画像です。タイヤ交換手伝った時に撮ったんですけど、あまりに酷すぎて唖然としちゃいました……」


 なるほどね、放っておくとこういう風になっちゃうんだね。

 見た目と言い、まるで虫歯みたいだね。


 「でも、洗浄の頻度はどうしたら良いんだろうね?」

 「毎回で良いと思いますよ」


 私の質問にみんなが一斉に答えた。


 「そうなの? でも、毎回はやりすぎじゃないの?」

 「やりすぎくらいがちょうど良いんですよ」


 ちょっとだけ水道代の事などを心配して言った私の疑問に、陽菜ちゃんが答えた。


 「でも、校内のこの辺は、塩カル撒かれてないと思うんだよ」

 「燈梨ぃ、よく洗えって言うのは、塩カルに関してだけじゃないんだよ」


 私が思わず必死になってした反論に、背後から舞華ちゃんの声がして我に返った。

 舞華ちゃんはニヤニヤしながら続けて言った。


 「タイヤが巻き上げた氷や泥なんかが、フェンダーの折り返しの中に溜まって、そこから錆を発生させちゃうんだよ。だから、冬場は家に帰ったら毎日車の下回りを洗浄するくらいじゃないとダメなんだよ」


 その話を聞いたみんなはうんうんと頷いていた。

 そして、舞華ちゃんはスマホをかざして、私に見せようとしてくれたが、私が寄った瞬間


 「よ~し、今日も頬をスリスリしちゃお~!」


 と言って、いつものように頬ずりをしてきた。

 それを見た七海ちゃんが止めに入ろうとしたが、その七海ちゃんは柚月ちゃんによって羽交い絞めにされていた。


 「くぅ~! マイ先輩、卑怯っス!」

 「何とでも言え、ななみん。勝者は私で、ななみんは敗者なんだよ」


 悔しがる七海ちゃんを見て満足した舞華ちゃんは、私に画像を見せてくれた。そこには、恐らく車のタイヤハウスだろうと思われる、アーチ状になっている箇所に無数のこぶ状のものがたくさん発生しているものだった。

 

 「これが成長したサビなんだよ。これが、毎日乗ってる車で2週にいっぺんだけ床洗浄して10年乗った状態なんだ」


 そして、次の画像を見せてくれたが、さっきと同じと思われる車を引いた状態で撮った側面の全体画像だった。

 そこには、後ろのタイヤハウスが瘤だらけな上に、更にその周辺は真っ茶色になって明らかに錆びており、所々、穴まで開いてしまっている惨状の画像だった。


 「億劫がっていると、こうなっちゃうんだけど、同じ条件の車でも、毎回洗っているとこうだからね」


 と言って、次の画像を見ると、同じ車種で、ボディは埃で薄汚れているが、タイヤハウスは健康そのものな車のものだった。

 聞くと、持ち主はボディは、さほどマメに洗車する方ではないが、床下だけは毎回しっかりと洗浄するため、ボディよりも床下の方が程度が良いと言っても過言では無いそうだ。


 なるほど、だから導入した高圧洗浄機なんだね。

 私たちはその機械をまじまじと見た。

 これが家庭用ではなく、業務用なのはさっきの金額の書かれていた操作パネルで分かっていたけど、みんなは、これがどこからやって来た機械かというところに興味があるらしい。


 「出張所脇のピカピカランドじゃないかな?」

 「いや、この模様はイアンの向こうにあるウォッシャブルタウンのに似てるっス!」

 「違うよ。観光ホテルの所にあるレインボーアイランドだよ」

 「でも、あの辺で最近、機械が盗まれたなんて聞いてないよね?」


 あぁ、なんでみんな教師水野が、この辺のコイン洗車場から機械を盗んできたものだと思い込んでるんだろうね。

 これって、どこかで廃業した洗車場の機械が中古機械のお店とかに回ってきて、そこで教師水野が見つけて買ってきたんだと思うんだよね。

 舞華ちゃんを見ると、どう見ても私と同じ考えなんだけど、みんながあまりにもそっちの話題で盛り上がりすぎているので、言うに言えずに、面白いからいいや……的に放置しちゃってるよ!


 私はみんなを止めようとして一歩前に出たところ、背後から誰かに羽交い絞めにされてしまった。

 後ろを見ると、柚月ちゃんだった。


 「さぁ~、燈梨は私らと一緒に、部車のチェックでもしようかぁ~!」


 舞華ちゃんは言うと、柚月ちゃんと一緒に、手近にあったGTEの中に私を連れ込むと身を隠した。

 柚月ちゃんに押さえられながらなんとか外を見ていると、あの洗浄機は盗まれたものだと信じて疑わないみんなの会話がとんでもない方に進んでいっているのが聞こえてきた。


 「伯父さんが警察に勤めてるので、この辺で盗まれた洗浄機が無いか調べて貰います」

 「そうだね、もし、それが分かったらすぐ通報しないとさ、後でバレたら廃部になっちゃうけど、先に見つけて通報すれば、廃部は免れるよね」


 もう、なんで教師水野はこんなにも信用がないんだろう……。




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