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突然の訪問者

 車が出来上がって問題が無くなったところで、次に考えないといけないのは登録に関しての事だった。

 このセフィーロを外部移動用の車にする事こそが、私たちに課せられたミッションなんだけど、前から言うように問題はオートマからマニュアルへの変更を車検と同時に申請しなければいけないという事だ。


 3年生に同乗して貰って、みんながセフィーロを試乗している間、私は七海ちゃんや沙綾ちゃんと一緒にこの車の状況を把握するべく、車検証入れの中にあった書類を見てみた。

 登録日は1991年8月となっている。販売したのは〇▲日産なので、ブルーバード販売会社だね。


 「恐らく、ブルーバードからの乗り換えっスよ」


 七海ちゃんが言った。

 曰く、この辺の年配ユーザーの場合はディーラーを変えるって事をなかなかしないから、ずっと乗り継いでいる場合が多いんだって。

 そう考えると、前に乗っていた車はブルーバードだって想像できるそうだ。恐らく、ブルーバードより上級の車種が2車出たので悩んだけど、マキシマには4WDが無くて3000ccだったから、4WDで2000ccのセフィーロにしたんだろうって七海ちゃんの読みらしいよ。


 「ウチの近所にも多かったって、爺ちゃんが言ってたっス」


 との事だった。

 

 住所も残っていて、私たちが住む街よりも更に麓に降りて行った街の住所になっていた。

 それを見て沙綾ちゃんが言った。


 「あの辺だと広い農家が多いから、普段から車庫に入っていたんだと思います」


 前にも誰かが言ってたけど、恐らく軽トラックを持っていて、普段はそっちに乗っているような家だったんだろうっていう読みだった。

 それを裏付けるように、車検証入れの隅に領収書が引っかかっていて、それを取り出してみると、スズキのディーラーでオイル交換をしたものだった。


 「量的に、軽だね」

 「うん、そうだね」


 沙綾ちゃんと七海ちゃんが言って納得し合っていた。

 となると、やっぱり軽トラに乗っていたから乗る機会も少なくて、痛みが少ない説は正しいって事なんだね。


 「この辺では、普段乗りは軽トラで、フォーマルは乗用車って使い方が徹底してるっス」

 「まぁ、ナミが言うのは『ある年齢層まで』って但し書きがつきますけど、概ねあってます」


 七海ちゃんと沙綾ちゃんが言った。


 使い方を踏まえて整備記録を見ていくと、走行距離や使用頻度は少ない割に、点検整備は6ヶ月ごとにディーラーにしっかり任せているみたいなので、オイル交換やフィルター交換も定期的に行われていたようだ。


 「しっかりやってますよね」


 沙綾ちゃんが感心したように言った。

 確かに、領収書なんかも入っていたので、どのタイミングで、どういう事をやっていたのかは見ると全て分かった。

 パワーウインドーの修理や、カセットデッキの修理なんかもしていたようで、そういった履歴も分かると、この車がどういった扱われ方をしていたのかが手に取るように分かる気がした。


 「恐らく、このセフィーロが初めてのオートマみたいっス」


 説明書を読んでいた七海ちゃんがそう言ってあるページを開いて見せた。

 それは『オートマチック車の取り扱い方』と書かれたページで、チェンジレバーの使い方と、各レンジの役割についての説明が書かれているのだけど、このページにやたらとマーカーでアンダーラインが引かれており、必死に覚えようとした跡が見て取れた。


 特に車検整備で問題になるような箇所は無さそうだし、さっき乗った感じも不調など全く感じさせないものだった。


 あとは、舞華ちゃんのお兄さんから伝授されると言われている登録に関する書類の書き方だ。

 こればっかりは現物を見てみないと分からないので、他の書類を書くところから始めるしかなかったし、教師水野がやっている学校側の印鑑証明の取得も目途がたってからでないと動きが取れないのだ。


 今日の部活動をお開きにして、教師水野へと報告をしたところ、印鑑証明については週内に取れるとの事だったので、早速車庫証明にかかるように言われた。

 職員室から駐車場に向かうところで舞華ちゃん達3年生に出会ったので、さっきの話をしたところ、舞華ちゃんが


 「それじゃぁ、明日にも警察署に行ってきた方が良いね。例の件は、あのクソ兄貴に急がせるからさ、安心してよ」


 と言って、直後に優子ちゃんが


 「マイ、偉大なお兄さんをクソ呼ばわりすると、私が許さないからね」


 と言った。

 すると、舞華ちゃんが不機嫌そうな表情になって


 「うるさいやい! なにが『偉大な』だよ。どこかの国の将軍様じゃあるまいし、ウチの兄貴の偉大なんて字が異常の異なんだよ。異常者なんだよ!」


 と言って優子ちゃんと睨み合っていた。

 そして、駐車場で3年生と別れ、私はスーパーに買い物に寄った後でアパートに戻った。

 駐車場から出て、エントランスに向かっていたところ、急に目の前が真っ暗になると同時に背後から


 「だーれだ?」


 と言われたが、この声には明らかに聞き覚えがあった。


 「朋美さん」

 「ぶぶー、は・ず・れ。燈梨ぃ、姉さんを忘れるなんて、ふてぇ奴だ。お仕置きだぞぉ!」


 私の答えに対して、さっきとは違う声がしたと同時に、私の脇腹がくすぐられた。

 私は振り返ると、そこには唯花さんと朋美さんがいた。


 「ちょっと、朋美さんいるじゃん!」

 「トモは『だーれだ』してないもん。つまりハズレじゃん!」

 「言ったのは朋美さんでしょー」

 「間違えたのは燈梨だろぉ、姉さんに口答えしようだなんて1000年早いよ」


 と言って、また私をくすぐってきた。

 買い物の荷物が落ちそうなので、なんとかしないと……と思ったところで朋美さんが


 「唯花、そろそろやめときなよ」


 と言って唯花さんの肩をポンと叩いたところ、唯花さんはストップした。

 そして朋美さんはおもむろにビニール袋を前に出すと、唯花さんと一緒に


 「今日はすき焼きにしようよ!」


 と言った。


 突然の2人の来訪で、急遽すき焼きとなった今晩のメニューを3人で囲んだ。


 「沙織さんは?」

 「オリオリは、こっちに来てないよ。今日、平日じゃん」


 私の質問に唯花さんが答えた。

 確かにそうだ。舞韻さんのお店はカレンダー通りの営業なのだ。

 すると、唯花さんは不服そうな表情になって言った。


 「それとも、オリオリがいないと私らは来ちゃいけないって、燈梨は言うのかな?」

 「そんな事ないよ。ただ、突然だったからビックリしてるだけ」


 私が答えると、朋美さんが


 「そうだよ唯花。急に来たら燈梨ちゃんだって、えっちな本とか隠さないといけないでしょ」


 と、とんでもない冗談を言い出してきたので、唯花さんが


 「おおっ!? どこだ? どこにえっちな本隠してるんだ? ベッドの下か?」


 と言って、ゴキブリのように床を這い出し始めたので


 「ありません! 学校のバスの運転手さんじゃあるまいし!」


 と言ったところ、2人は


 「なにその話~?」


 と興味津々に訊いてきたので、私は昨日のガレージの片付けの話をした。

 すると、その話を聞いた2人は笑い出して


 「あっはははは、スクールバスの運転手が、ガレージにえっちな本を多量に捨てて行ったって? マジウケる~!」

 「でも、燈梨ちゃん達がその片付けをさせられるハメになるって、ちょっと酷くない?」


 と口々に言っていたが、どちらかと言うと、同情よりも笑い要素の方が大きいんだろうなぁ……と分かった。

 

 ひとしきり笑って、笑いが収まったところで


 「ところで、今はどんな作業をしてるの?」


 と朋美さんが訊いてきたので、今やっているセフィーロの作業に関してを1から説明して、これから登録という難関にチャレンジするという話もすると、2人は顔を見合わせた。



 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『唯花と朋美には何か秘策があるの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【応援、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。


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