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懸念懸案と制作内容

 翌日、沙綾ちゃんが1人になるところを待って私は昨日の話をした。

 沙綾ちゃんは、私の話をすべて聞いた後で頷くと


 「燈梨さんは、ナミが問題だと思ってるんですね。……その通りです!」


 と力強く答えた。

 やっぱりそうだったんだ。


 私が、この話を聞いた時から気が重かったのは、七海ちゃんが隠し事が上手そうでないという事なのだ。

 今までの七海ちゃんは、何かしら態度や表情に出ている事が多く、僅か1ヶ月弱しか付き合いのない私でさえもそこが分かってしまうのだ。


 私が昨日舞華ちゃん達の様子を見た限りは、少なくとも3年生側は上手く隠しおおせているし、昨日の帰り際、舞華ちゃんが

 

 「私ら、今月いっぱい所用で部には出られないから、何かあったら連絡してね~」


 なんて言っていたから、向こうのプロジェクトも走り始めているようだ。

 だから、こっちもバレる訳にはいかないんだよね。


 なんとなく、七海ちゃんのソワソワした姿を見せていると、柚月ちゃんあたりに勘づかれて、あの2人の関係なら吐かされそうな気がするんだよ……。

 そこで、幼馴染である沙綾ちゃんに相談したんだ。


 「燈梨さん、冴えてますね。私にお任せですよ。ところでナミの件ですが、寸前まで伝えないのが一番良いと思いますよ」

 「ええっ!?」


 沙綾ちゃんは鋭い目つきで凄いことを言ったので、私は思わず聞き返してしまった。


 「ナミは、教えると顔に出るんですよ。前もズッキー先輩の空手留学おめでとうパーティをサプライズでやろうとしたのに、ナミのせいで2週間前にズッキー先輩にバレちゃたんです」

 

 沙綾ちゃんは、遠くを見るような目で言うと、陽菜ちゃんが突然机の下から顔を出してきて沙綾ちゃんに同調した。


 「そうですよ燈梨さん。絶対七海には教えない方が良いです。七海は不自然な行動とかしてズッキー先輩に睨まれて、くすぐりの刑とかで吐かされるに決まってます」

 「でも、七海ちゃんは副部長だよ。立場上、知らないってのはおかしくない?」


 私が反論すると


 「だったら、その期間だけヒナちんか、七菜葉ちゃんに副部長代行やって貰いましょうよ」


 と沙綾ちゃんが言った。

 まぁ、付き合いの長い彼女たちが言っている事なので間違いないんだろうね。

 そして、私が部活初日に舞華ちゃん達に再会した時、やっぱり舞華ちゃんにはサプライズにしていたみたいなんだけど、柚月ちゃんは顔や態度に出るらしく、前日の夜まで教えなかったと優子ちゃんが言っていたのを思い出した。

 確か、柚月ちゃんと七海ちゃんは空手の師匠と弟子の関係だったので、師匠も弟子も揃いも揃って隠し事が下手という点は似ているみたいだ。


 すると、陽菜ちゃんが小声で訊いてきた。


 「ところで燈梨さん。そのサプライズで来る新しい部車ってのはなんなんですか? 4駆なのは分かりましたが」

 「あ、そうそう。それがね……」


 と私が言ったところで、沙綾ちゃんが肩をさり気なく叩いた。

 ふと見ると七海ちゃんが教室に戻ってきたところなので、私は話を止めて他の話題へと切り替えた。


 次の休み時間にこの事を教師水野に伝えに行くと、彼女は少し考え込んだ直後に


 「了解した。では、七海君に昼休みに私のところを訪ねるように伝えてくれたまえ。今日の部活同時に、鷹宮君には皆への説明を頼んだよ」


 と少し微笑みながら言ったような気がした。

 しかし、ポーカーフェイスの彼女が感情を顔に出すはずがないか……と直後に思い直した。


 「いやぁ~、参ったよぉ。今日の放課後、水野のお遣いで四高まで行かなきゃならなくなっちゃったよぉ~」


 お昼休みに部室でお昼にしていると、七海ちゃんがやって来て言った。

 教師水野の計らいだね。

 今日は七海ちゃんを部から遠ざけておくから、その間に他の1、2年生で打ち合わせておけって事だね。


 「そうなの? 特に今日は大きな予定も無いし、今日は七海ちゃんはそのまま帰りで良いよ」

 「ゴメンなさい、燈梨さん。それじゃぁ今日は行ってくるね」


 私が言うと、七海ちゃんが拝むようなポーズになって言った。


◇◆◇◆◇


 その日の部活は、七海ちゃんを除く1、2年生全員を部室に集合させて打ち合わせを開始した。

 教師水野はレジュメを用意してくれたのだけど、七海ちゃんに見つかるとまずいから、置いていかないで持ち帰るように厳守して貰ったんだ。


 「今回、3年生が制作してくれる新しい部車について説明するね」


 私は、レジュメの最初のページをめくると、その車の画像と諸元が書かれていた。

 車はセフィーロ・アテーサクルージングという車らしい。

 私の調べたところ、初代のセフィーロは2代目以降とは違ってローレルやスカイラインなどと同じFRで、1度目のマイナーチェンジで、スカイラインなどに採用されたトルク配分型の4WDのアテーサを採用したグレードが追加されたというものらしい。

 すると、1年生の塔子ちゃんが手を挙げた。


 「スカイラインGT-Rとは違うんですか?」

 「ええっと、メカニズムは一緒なんだけど、エンジンが2000ccのターボになるんだよ」


 私が答えると、同じく1年生の志帆ちゃんが挙手した。


 「それじゃぁ、ズッキー先輩のGTS-4と同じですか?」

 「基本は同じだけど、スカイライン用は10馬力高いんだよ。セフィーロ用は205馬力だね」


 と言ったところ、今度は若菜ちゃんが手を挙げて言った。


 「でも燈梨先輩。セフィーロのアテーサクルージングはオートマしかないはずですよね?」

 「うん、レジュメの2ページを見て欲しいんだけど、そのセフィーロはATが壊れて解体屋さんに入ってきたから、3年生がHNR32用のマニュアルに載せ替えてくれるんだ」


 HNR32とは、スカイラインのGTS-4の事らしい。

 確かに、スカイラインとセフィーロは同じシャーシなので、エンジンと駆動系が一緒ならば、ミッションをマニュアルにする事は可能なはずだよね。

 あとは、3年生の作業の進捗いかんで、私たちの準備の日程も変わってくるんだよね。


 私は、敢えてそこのところをオブラートに包んだままで、今回の狙いを話した。


 「今回の部車の事もあるけど、3年生への日頃の感謝と耐久レース、それに文化祭のお疲れ様会を兼ねてサプライズでパーティを開きたいと思うんだ」


 すると、会場には一斉に拍手が鳴り響いた。


 「良いと思います!」

 「3年の先輩たちには、感謝しかないんです!」

 「いっぱい貰ってるのに、更に卒業制作まで貰って、私たちもお返ししたいです」


 みんなが口々に言った。

 やっぱりみんなも3年生に感謝の気持ちでいっぱいだったんだね。

 そこで、みんなからパーティについての希望を聞いたんだよ。

 すると、みんなから第一に上がったのはケーキだった。確かに、これはお祝いの定番だもんね。

 そして次に上がったものがバラバラで収拾がつかなかった。


 「ピザが良いです」

 「いや、フライドチキンが良いと思います!」

 「そんな事ないよ。お寿司ですよ!」

 「エビチリが良いですよ!」


 あまりのバラバラっぷりに、私がどう収集をつけようかで困っているところに沙綾ちゃんが出てきてパンと手を打つと


 「ハイ静かに! 部長を困らせるんじゃないの! 今から3人で1グループに分かれて案出して。それを紙に書いて回収して、多いものから3種に決めるから」


 とサバサバと言って次々に進めていった。


 「ええ~~」

 「なに、文句あるの?」


 不服を言った声に即座に反応した沙綾ちゃんの声はちょっと怖かった。

 沙綾ちゃんは大人しくて、外観も可愛らしい娘だからすっかり忘れてたけど、さすがキックボクシングのチャンピオンだけあって、ざわついていたみんながあっという間にしんとなったのにはさすが……と思わされた。

 


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