2日目
文化祭2日目が始まった。
昨日は、事前から改善点に気がついて動き始めていたために、終了後に手直しする点は最小限で済んだが、チラシに飴をホチキス留めする作業に時間がかかったのと、舞華ちゃんが七海ちゃんの作ったチェイサーに影響されてスカイラインまでナスカー風にすると言い出した事から、結局、学校から帰還命令の出る午後8時まで手直しする事になってしまった。
私たちは、ブースの作り直し案に基づいて色々な手直しと共に、私と七海ちゃんでサファリを校内に入構させなければならないために結構神経をすり減らしたのだった。
文化祭は終了しているとは言え、やっぱり初日の結果を見て手直しをしているところが殆どであるために、色々な人や物資が通路を行きかっている中なので、いつ何が起こるか分からない状態でゆっくりと走らねばならない上に、ボディサイズの大きなサファリでその中を走る事は、非常に困難な事と言わざるを得ない行為であった。
結局、校門を入った段階で補助なしでの入構は無理だと悟った七海ちゃんが、電話で1、2年生を招集すると、ブースまでの区間を交代で人の壁を作って交通を遮断しながらサファリを移動させたのだった。
そして、話し合った通りにウインチを使った救援風景に展示をする事になって、どの車を引っ張ろうかという事で意見が割れた。
私は、負担なくいけるグラウンド散水車のムーヴで良いのではないかと言ったのだが、七海ちゃんと沙綾ちゃんは
「軽を引っ張ってもインパクトが無いので、大きな車を引きましょう」
と主張するのと、せっかくだから第二練習場で使う車を予行演習的に引っ張ってみた方が面白いのではないか? という話も出たため、その中からチョイスすることになったのだが、スカイラインは3年生が中心になってナスカー仕様にするために作業中のためパス、更には、七海ちゃんが折角頑張って作って、人だかりができるなど注目を集めているチェイサーのナスカー仕様は、下手に動かさない方が良いと思ったため、消去法でアルテッツァに決定した。
2台を向かい合わせて展示した上で、実際にウインチでアルテッツァを引っ張ってみた。
安全に引っ張れるから明日のデモンストレーションも問題なさそうだ。1時間に1回のデモンストレーションの予定にして、沙綾ちゃんに予定表を作って貰ったよ。
そして、2日目の朝に、優子ちゃんの家のお店で使って余った風船を持って来てくれたので、急遽風船を膨らませる作業なんかも入ってきてしまい、開始直前までてんてこ舞いだった……。
しかし、その甲斐もあって2日目は非常に盛況になった。
校門前のブースでは、沙綾ちゃんの編集した動画が大画面で流れる事によって通行人の注目を集め、人が集まってきた中を飴付きのチラシと子供連れには風船配ったりして、しっかりと自動車部を認知してもらった上で第二ブースへと誘導していくんだ。
第二ブースは、スカイラインとシルビアだから、否応なしに皆の注目が集まるんだけど、そこに部室から持ってきたテレビとレコーダーを使って、沙綾ちゃんが編集してくれたオリジナルの動画が流れる事によって、更に人が流れてくるんだよ。
ちなみにこっちのブースで流してる動画は、校門前のとは違うものだから、最初は同じかと思ってスルーしかかった人も、おおっ……ていう感じで足を止めて見て行っちゃうんだよね。
そこでお腹いっぱいになっちゃった人達が出店のエリアに行く手前で第三ブースに行き当たると、そこには今までと毛色の違ったクロスカントリーのサファリがあって、そこで自動車部への認識がちょっと変わるっていう寸法なんだよ。
そして、子供にはサファリが一番人気なんだよね。
1台だけジャンルが違うから目立つのか、子供はこういうゴツイものに魅かれるのか、子供が駆け寄ってきたりするんだよね。
そして、ウインチを使ったデモンストレーションは凄く盛況で、その時間の周辺になるとどこからともなく人が集まってきて、あっという間に黒山の人だかりになってしまうんだ。
「意外なんですよね、これが人気あるなんて……」
11時のデモが終わった直後に陽菜ちゃんが言った。
「でも、やっぱり人って大きなものに憧れがあるっていう一面もあるし、それに、展示の方向性が固まっているところに、違うものがあるとそれだけでも目を惹くしね」
私が言うと、陽菜ちゃんは妙に納得していた様子だった。
そうなのだ。
傍目から見ていて、自動車部が敬遠される理由の1つは汗臭さとスポーツ一辺倒のイメージなのだ。
舞華ちゃんがずっと頭を痛めていたのは、初期メンバーが格闘技連合からの移籍組という一般生徒から見ると近寄りがたいイメージを持たれている事で、最近でこそ陸上や女子サッカー、バスケなどの部からの移籍組が増えてきているものの、やっぱり運動部からの移籍が多くて、上下関係に厳しく汗臭い部というイメージの払拭には至っていないのだ。
それに輪をかけているのが、部車がスポーツカー一辺倒な事で、実際の活動の指針である『ゆるゆる~っとしながらも強い部』というイメージが伝わってこないのだ。
そこにちょっと毛色の違う車を加えてみる事によって、敷居を下げたいというのが私がこのサファリの展示をしてみたいと思った狙いなのだ。
「とすると、女子力をアピールする展示なんかもアリだと思います」
陽菜ちゃんがボソッと言ったので、私は凄く興味が湧いてきて深く訊いてみた。
すると、具体的なものをこれっていう感じには提示できないが、文科系の部からの移籍や新入部員がすんなりと入ってくるために、今の部に欠けているところがあるとするならば、そういうところではないかと思ったと言うのだ。
それを聞いて、私は一つ疑問が出てきた。
車における女子力ってなんだろう? という事だ。
私自身の女子力は決して低くはないと思っているんだけど、こと、これをどう車に反映させていくのかが分からないのだ。
ティッシュのカバーとか、シートカバーって事かなぁ?
でもって、市販のああいう物って、言っちゃ悪いけどセンス無いよね。なんか男性向けだと妙に真っ黒なのばっかりで、女子向けだと妙にブリブリな感じのピンクとかのキャラものとかばっかりで、私に言わせればどっちもつけたくないかなぁ……って気がしてきちゃうんだよね。
自作っていう手もあるのかなぁ? ……などと考え込んでいてふと気付くと、陽菜ちゃんが私に顔を近づけて覗き込んでいた。
「燈梨さん、何考え込んでるんですか?」
「あぁ……車の女子力について考えてたんだ」
そう答えると、陽菜ちゃんは苦笑いを浮かべながら
「あんまり深く考え込まないでくださいね。思いつきなんで……」
と言ったところに舞華ちゃん達3年生がやって来た。
「燈梨、どうだった? デモンストレーションは」
「うん、おかげさまで2回ともかなり盛況だった。子供の人気は分かってたけど、女子の人気が結構あるのは意外だったね!」
舞華ちゃんの質問に力強く答えた。
舞華ちゃんは、私の返答を聞くと満足したように頷いて、柚月ちゃんと悠梨ちゃんと共に校門前のブースに行ってくると言い残して行ってしまった。
1人になった私は、車と女子力というさっきのテーマについて、ついつい考え込んでしまっていた。




