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クーラーとタコメーター

 私たちの右から現れたのは、辛子色のサニトラだった。

 私は、それを見た時に沙織さんの言う『もう1人のゲスト』が誰なのかが分かったんだ。

 沙織さんもそれを知ってか、ニヤニヤしながら外を眺めていた。


 そのまま走り続けて峠道を下った後、2台のサニトラとパオを連れてイアンモールの駐車場に入った。


 辛子色のサニトラから降りてきたのはやはり杏優だった。

 今までの2台と違って彫りの浅い黒いグリルやバンパーに、四角いライトが鎮座している顔周りは、近代的で無個性と言えばそう言えなくはないけど、それでも愛らしさを感じさせてくれる顔つきで、私は少なくとも前期型の顔よりは好感が持てる顔つきだったんだ。


 なんか、妙にドアだけが艶々して見えるのが気になっていたんだけど、桃華さんが


 「この車のドアには市の名前と市章が入ってたから、それを消したんだよ」


 と耳元で囁いたので、それについてはすっかり解決したんだ。

 

 「な、なんかあまりジロジロ見られるのは良い気分じゃないわね……」


 杏優は、私が色々と見ているのが恥ずかしいのか、本当に嫌なのかは分からないんだけど、そう言って視線を逸らしたところ、沙織さんが


 「杏優! そういう事言ってんじゃないわよ! せっかく燈梨があんたの車を参考にしたいって言ってるんだからさ」


 とたしなめると、途端に静かになったんだ。


 杏優のサニトラには、荷台にロールバーがついていて、それが見た目のアクセントになって、ちょっとお洒落な感じとワイルドな感じを両立させていたんだ。

 そのロールバーの上には2つの丸いランプが取り付けられており、この車がFRなのは分かっているんだけど、なんとなくオフロード走行もこなしてくれそうな頼もしさを感じさせてくれたんだ。


 室内を見ると、やはりというべきかハンドルがガッシリとした革巻きの物に交換されており、それだけでも室内の印象が大きく変わっていたんだ。

 そして、グローブボックス下には、何か箱のようなものがぶら下がっていたんだ。


 「それは、クーラーよ」


 杏優が説明してくれた。

 やっぱりエアコンのシステムが無いため、この車は新車時からオプションで付けたこのクーラーを使用していたそうだ。


 「これが付いてなければ、個人的には他の車のシステムを流用するわね」


 杏優曰く、このクーラーの効きは悪くは無いものの、所詮は助手席側にしかついていないため、風がシフトレバーやセンターコンソールに遮られてこちら側まで来ないそうだ。

 なので、真夏は冷気から遠い右半身が結構汗ばむのだそうだ。

 昔の車なので、窓の前3分の1についてる三角窓を開ければ風は入って来るのだけど、渋滞などで停止してしまえば、それも入ってこなくなるので、街乗り中心に使っている杏優にとってはこれは相当過酷な状態なのだそうで、今、適当なコンプレッサーを流用してエアコン化を狙っているそうだ。


 「あゆちんは、RX-7は遠乗り用で、このトラックで普段乗りは済ませてるんだよ」


 桃華さんが嬉しそうに言った。

 どうやら、桃華さんは杏優に連れられてこの車で出かけたりもしたそうだ。


 しかも、驚くことにラジオが鎮座していた位置には、インダッシュ式のナビがビルトインされていたのだ。

 私は、最近中古のカーナビをつけたんだけど、あれって、DINスペースが2つ分ないとつかないものだと思っていたんだ。でも、今目の前にある杏優のサニトラには、明らかに純正ラジオが消えた位置からナビのモニターが出ていたんだ。


 「最近はまた、1DINのナビなんかも出てきたのよ」


 杏優は、私に訊かれそうなことは先に言っておく的な感じで答えたんだ。

 今は、車内でもスマホのアプリなんかを使うケースが多くて、それらの情報を表示するための装置としてのナビが増えてるんだって。

 

 他にも、シートに自分で縫ったシートカバーが被せてあったり、シフトノブがアルミ削り出しのものに替えられたりして、結構好きものが乗ってるって感じがするよね。

 ただ、空調の吹出口らしきものは例の後付けクーラー以外には全く無いので、カップスタンドがシフトレバーの奥にある小物入れの所につけられていたのが唯一のネックかな……。


 私は、1つの発見をしたんだ。

 このサニトラにはタコメーターがついているんだ。

 さっきのサニトラでは時計、若菜ちゃんの家のでは蓋になっているところに違和感なく収まっているのだ。


 「このタコメーターって、なんでこんなにきれいに収まるの?」


 と思わず訊くと、杏優は照れたように視線を逸らしていたけど、沙織さんにキッと睨まれて


 「純正品だからよ……」


 と下を向きながら言ったんだ。


 「サニトラ用にタコメーターなんてあったの?」


 私が驚いて訊くと、沙織さんが


 「サニトラ用じゃなくて、サニー用ね。さすがにこの大きさの商用車にタコメーターはつけないわよ」


 と笑いながら言った。

 話を聞くと、当時は日産に限らず、シリーズ分けがしっかりしていたため、サニーでタコメーターが付くのはスポーティなGX系に限られていたようなんだ。


 「中期以降からなら、メーターパネルもクーペと共通だから、純正をビルトインさせることもできるわよ」


 杏優の言葉に私は嬉しくて、すぐにでも手を加えたくなってきたんだよ。


 「せっかくなんだから、杏優のにも乗っていったら良いんじゃない?」


 そんな事を考えていた私は、沙織さんの言葉でふと我に返ったんだ。



  

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『杏優のサニトラってそんなに違うの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

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