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着地点

 走り出してすぐに気がついたのは、その軽やかさだった。

 今まで乗っていた若菜ちゃんの家のサニトラも軽快だったんだけど、こっちのサニトラには、独特のエンジンフィールによる軽やかな走り味がプラスされていたのだ。


 若菜ちゃんの家のサニトラがモーターのようなエンジンフィールで、スイスイとミズスマシのように走っていくのに対して、こっちのサニトラのそれは、チューンドエンジンらしくメカメカしい感じはあるものの、エンジン自体は一気に突き抜けるように回っていって、同じエンジンとは思えないほどの強烈な爽快感を与えてくれるものだった。


 しかも、その回転数の上がり方は、私のレビンのそれを超越するもので、私にとっては少なからずショックだったんだ。

 あのレビンのエンジンの回り方は、小排気量ツインカムの醍醐味を味わわせてくれるものという感じの、淀みなく一気に回っていくような感じだったんだけど、このサニトラのエンジンはツインカムどころか、カムも使っていないOHVのエンジンなのにもかかわらず、引っかかりなく一気に回転数を上げていくのだ。


 「ええっ!?」


 私は思わず声を上げて驚いていると、沙織さんはそれをニヤニヤしながら見て


 「燈梨も、スペックを見てこの車を判断したでしょ? サニトラなんてハチロクには敵わない……とか」


 と私の心の中をズバリと見透かしたように言ったんだ。


 確かに、色々とこの車を調べていくと、大抵はそのエンジンが名機で、チューンすると1万回転まで回るといった話が大半を占めているのだ。


 だけど私はそれを額面通りには受け取っていなかったんだ。

 確かにこの車のエンジンは名機なんだろうけど、でもそれは1200ccのOHVエンジンとしては……という但し書きがついての事だと思っていたんだ。

 それは若菜ちゃんの家のサニトラに乗っても変わらず、確かに軽快に回るとは思うけど、やはり私の期待を裏切らない範囲での軽快さで、レビンのそれにはまだまだ達していないというのが私の偽らざる評価であった。


 しかし、このエンジンはそれをはるかに超えるもので、私の安心をあっという間に破壊してくれたのだった。


 更に走らせていて感じたのは、曲がりの鋭さだったんだ。

 今まで乗っていた若菜ちゃんの家のサニトラは今の車ほどのしっとり感やしっかり感はないけれど、コーナーではじっとりと地面を掴んで、そして適度にシャープに、そして適度にマイルドな感じで曲がっていったんだけど、こっちのサニトラはスパッという感じで、文字通りの動きをしたんだ。


 足回りの硬さとか言う感じではないんだ。

 何故なら、ノーマルであるはずの若菜ちゃんの家のサニトラも相当に乗り心地や足回りは硬くて、恐らくチューニングされている紘一郎さんのサニトラのそれと硬さは変わらないか、むしろノーマルの方が硬いくらいに感じるんだ。


 あと、曲がりを構成していく要素で、この車とあっちの車で決定的に違うもの……と私が考えて導き出したのは、この2台のボディとホイールベースの長さなんだ。

 さっきの見た目でいくなら、確実に私の乗る方のサニトラのそれは短く、この違いこそがさっきの曲がりのシャープさに繋がっているようだ。

 正直、これに関してはどちらが正解って訳じゃなくて、好みの問題だと思うんだ。標準ボディのスパッとした動きがクイックすぎて気になる人もいるだろうから、マイルドなロングボディを選ぶ人がいるのだって頷けるから、正直、どちらが良いかに関しては私を含めてみんなで慣らしていくしかないよね。


 結論としては、トラックとは思えない楽しさがあって、それでいて実用性も高いサニトラが、代用品からスタートしたとしても、車好きの人達から長らく愛されている理由は充分に分かったんだ。


 「ただ……」


 私は思わず口にしてしまい


 「『ただ』、なによ?」


 と沙織さんに訊かれてしまった。


 「ただ、ここまでストイックじゃなくても良いかなぁ……って」


 と私は答えた。

 確かにこのサニトラは私が考えていたよりもずっと速くて楽しい世に言う『マシン』なんだろうけど、私はもう少し日常的な自動車……それも商用車としての使い勝手も重視したトラックとしての性能も求めているんだ。

 何と言うか、紘一郎さんが持ってきてくれたサニトラはとても素晴らしい出来なんだけど、これでは荷台に積んだものが壊れてしまうというほどの硬い足回りを与えているようにも見えてしまったんだ。


 その懸念を沙織さんは見透かしたように


 「燈梨、こういうのは自分でどこに線を引いていくのかが重要なのよ」


 と言ったので、私はこの車のどの魅力を引き出していけば良いのかに悩んでしまったんだ。


 楽しいながらも、後半は少し悩んでしまった紘一郎さんのサニトラで学校近くの展望台まで差し掛かった時、窓の外を見ていた沙織さんが


 「ホラ、もう1人のゲストの登場よ」


 と言うと同時に、私たちのサニトラの横をかすめていった1台の車がいたんだ。

 私は、その姿を見て沙織さんの言葉の意味が理解できたんだ。



 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『もう1人のゲストって誰?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

  

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