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ライトとワイパーと……

 翌日、若菜ちゃんの家に行って当該のサニトラを借り出した私たちは、沙織さんのパオと2台で試乗に出かけたんだ。


 顔周りだけが中期型仕様になっているため、愛嬌のある丸形のヘッドライトと、オーバーライダー付きのバンパーが相まって、なんか可愛らしい犬の表情を彷彿とさせるそれだったんだ。


 パオの運転を桃華さんに任せて、私と沙織さんが乗ってサニトラはスタートしたんだ。

 走らせてみて分かったのは、この車には何もついていないのと、設計年次の時代背景が相まってボディが軽く、その軽さが文字通りの軽快感を生み出していたんだ。

 

 私は、バイクに乗った事はないんだけど、みんなから聞くバイクの軽快さと楽しさっていうのがこんな感じなのかな……と勝手に解釈してこの感覚をバイク感覚と呼ぶことにしたんだ。

 この辺りの勾配では決してパワーに余裕は無く、ぶっちゃけ言ってパワー不足を感じなくもないけど、前に校務部の軽トラックでここを走った時に比べると雲泥の差で、そこはさすが1200ccだと思うんだ。


 でも、反面で軽快感のせいなのか、設計年次の古さのせいなのか、走りのしっかり感っていうのかな? 走る、曲がる、止まるの操作に対する手応えのようなものが今一つ薄い感じがするのも事実なんだ。


 「どう燈梨、運転した感じは?」


 沙織さんが訊いてきたので、素直に感じたままの事を伝えると


 「そうね、設計の古さとタイヤのせいかしらね……」


 という回答が返ってきた。

 さっき見た感じ、ホイールは純正の鉄ホイールで、タイヤは若菜ちゃん曰くネット通販で買った激安外国製タイヤらしい。


 「でも、これは後期だからフロントディスクブレーキになっていて、『止まる』に関しては、他のバージョンよりも強みなのよ」


 沙織さんの言葉に私は驚いたんだけど、中期までのサニトラはフロントもドラムブレーキだったというのだ。


 「昔の軽や小型車なんかは、フロントもツーリーディングのドラム式なのよ」


 沙織さんの言った言葉が、私には、にわかには信じられなかったんだけど、後で色々と見せてくれた画像でようやくそういうシステムが存在したことを知ったんだ。


 走らせていての印象はこんなもんなんだけど、それ以上に私を戸惑わせたのは各スイッチ類だったんだ。

 トンネルに入ってライトをつけようとした際、それまでウインカーを出していたレバーの先端をまさぐったんだけど、ライトのらしきロータリースイッチは存在しておらずに、焦っている間にトンネルを抜けていってしまったんだ。

 その事を沙織さんに言うと、沙織さんは苦笑いを浮かべながら


 「昔の車のライトスイッチは、ウインカーと共用になってないわよ」


 と言ったんだ。

 それじゃぁどこに……と問うと、沙織さんはインパネの右端の方を指差して


 「それよ」


 と言って実際にライトをつけてみせたんだ。

 そこを手で探ってみると、なんか丸い形をしたレバーのようなものがあるので色々いじってみると、どうやら引き出して点灯して、押しこむと消灯するタイプのスイッチだったんだ。

 更には上の方には同じようなスイッチがあったので、試しに引っ張ってみるとワイパーが動いたんだ……。

 なんか、私が習った車の操作方法の常識と外れているんだけど、これって?

 そう思っていると沙織さんが


 「昔の車ってそうやってライトやワイパーを動かしていたのよ」


 と説明してくれたんだ。

 この車に関しては、一番車が目まぐるしく変わっていった時代に24年間もモデルチェンジ無しで販売されていたため、大きな機構の変更は行えなかったんだろうね。


 ただ、一応それでもアップデートは都度行われていたようで、この後期型に関しては間欠ワイパーシステムやパッシング機構なんかが搭載されて、かなり便利な仕様になっていたみたいなんだ。


 でも、スポークが漢字の一みたいな形をしたダサいハンドルは、可能な限りこの大きさを維持したままで社外品に替えたいかな……と思うほどだったし、3つメーターが入る穴があるのに、一番左側には化粧パネル状のもので穴を塞いだ状態になっているんだ。


 うん、ここってタコメーターをスッキリとビルトインさせるにはちょうどいい場所だよね。

 私は何故か、この車が部に入ってから真っ先にどこから手をつけていくかについて考えていたんだ。

 この味のあるAMラジオもこのままで良いのか、それとも現代的なオーディオあたりをビルトインさせるのかを考えてみたりすると、大抵結論の出ないまま朝を迎える事になるので、妄想は適当なところでやめておく事にしたんだ。


 それにしても、比較的新しいながらも充分に昭和レトロを感じさせる内外装に、軽よりも軽くて走りっぷりも良いエンジンを組み合わせたこのサニトラは、まさに部にうってつけのような良い素材だと思うんだ。


 Uターン路ともなる道の駅に入った途端に、沙織さんが誘導を買って出てくれたため、それについて行くと、奥の方に白いサニトラが見え、そのサニトラの横に止めるように言われたので、そのサニトラの左隣に止めると、同時に向こうのサニトラのドアが開いて誰かが出てきたんだ。



 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『もう1台のサニトラからは誰が降りてきたの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

  

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