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致命傷

 「ま……まずは……」


 なんか歯切れの悪い若菜ちゃんをちょっと険しい目で見ると、ビクッとしてから


 「パワステが……ありません」


 なーんだ、そんな事か。

 一瞬そう思ったんだけど、次の瞬間、それに対して『そんな事』と言えるようになってしまった私自身の感覚を恨めしく思わされたんだ……。


 「『まずは』って事は、次があるんだよね?」


 私が確認するようにじっとりと言うと、若菜ちゃんは目線を逸らそうとしたんだ。

 でも、私が


 「若菜ちゃん!」


 と言うと、若菜ちゃんは意を決したように言ったんだ。


 「クーラーが調子悪くなっています……」


 え? クーラー?

 ……って事は?


 「エアコンが効かないってこと?」


 私の疑問を先に七菜葉ちゃんが訊いてくれたんだ。

 すると、七海ちゃんと掴み合っていた沙綾ちゃんが、七海ちゃんを蹴りで倒すと


 「サニトラはエアコンは無くて、オプションでクーラーがついてるんだよ」


 と言ったんだ。

 昔は、カーエアコンという概念の物が無く、主に暑さは車の前席側にある三角窓という小さな窓を開けて涼を取っていたのだそうだ。

 そして、贅沢品としてお金持ちがオプションで付けたのが、このクーラーなのだそうだ。


 しかし、後付けな故に、車本体の空調システムにビルトインされていないために、吹出口不足は否めなかったんだ。

 更に調子が悪いんだから、これからの季節は最悪だって事だね。

 うん、それについては、もうそろそろそれがないと辛い時期が始まっちゃうから、早急に考えないといけないって事か……って、だから、いつの間にその若菜ちゃんの家のサニトラを部で引き取るっていう話になってるんだって!


 「そうなると、マイレージマラソンの時に、トラックをレンタルしてくることになりますね」


 と真由ちゃんがボソッと言ったんだ。

 もうっ! 自分は関係ないと思って他人事みたいに言って。

 でも、部のキャリアカーに載らない以上は、そうするしかないんだよね。


 「すると、運転するのに免許を持っている人が必要ですね」


 志帆ちゃんが言った。

 そうだった!

 私たちの場合は、世に言う2トントラックは運転できないからレンタカーでトラック借りる場合は小さめのにするか、誰か先生に頼むしかないんだよね。


 コンさんなんかは、昔に取った免許だから、普通免許なのに今の中型免許までカバーされてるらしく


 「俺は総重量8tまで運転できるぞ……戦場じゃもっとデカいの運転してたけどな」


 なんて言ってたっけ……。


 なるほどね、マイレージマラソンみたいな競技に行く時に、私たちだけでも運べるようにするためのサニトラってわけか……。


 仕方ないなぁ……ここまで外堀が埋まっているなら、これは入れる事にするしかないね。

 私はそう思ったんだけど、こうも簡単に認めちゃうと、変な前例を作っちゃうことになるから、敢えて渋面を作りながら


 「とにかく、こういう場合はレンタカーを借りるよりも、トラックがあった方がお得だっていう概算見積もりを出すのが普通だと思うんだよ」


 と言ってみせた。

 すると、2年生が必死に色々と調べ始めて何やら書き始めたんだ。

 そして1枚の手書きの表を見せてくれたんだ。

 そこには今年、マイレージマラソンで予選突破し、全国大会に行ったという前提でレンタカーで1tトラックを借りた場合の料金と平均燃費から算出した軽油代という前提条件で書いたものらしい。


 そして、対比として1200ccのサニトラを1年所有して、同じく全国大会に行った際の維持費等を算出して貰うと、驚くことに2回トラックを借りていくよりも遥かにお得感が強い事が分かったんだ。


 レンタカーの値段を調べてみると、結構トラックって借りるの高いんだね。

 そんな事をボソッと口にすると


 「田舎だからね。この辺はみんな軽トラ持ってるから、あんまりトラックなんて置いてないんだよ」


 と莉緒ちゃんが言った。

 確かに、この辺は一家に一台は軽トラがあるから、それで事足りちゃってるんだろうね。

 それに、この辺って観光地の名残が強く残っているからか、レンタカーって観光客が借りていく乗用車が中心になっちゃってるんだよね。

 ビックリしたのは、以前に沙織さんが借りようとして営業所に一緒に行ったんだけど『オープンカーあります』とか『BMW、ベンツ置いてます』なんてポスターがベタベタ貼ってあったんだよね。


 なのでというべきなのか、この近くの営業所でトラックを借りようとすると、事前に他の営業所から借りて回送してくるそうで、返却予定時刻には凄くうるさいなど、結構デメリットも多いらしい。


 「水野がキャリアカーを導入したのもその辺に理由があるみたいだよー」


 莉緒ちゃんが言った。

 どうも、以前に文化祭の搬入にトラックを借りた際に、時間が押して返却時刻がズレてしまった際に、物凄く文句を言われたので嫌になってしまったらしいんだ。

 なるほどね。なんか対人スキルがあまり高くない教師水野らしいエピソードだね。


 しかし、気がつけばなし崩し的にサニトラは部にやって来る事になったんだ。



 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『サニトラはきちんと走るの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

  

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