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女子高生が『車部中』になっていく話  作者: メダリスト爺
書無し車登録にチャレンジ編
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マイ・フェアレディ

 イアンモールを出て街中を走っていると、この車の魅力の1つが存分に発揮されているのに気付いたんだ。


 街乗りが凄くしやすいんだ。

 低速からパワーが溢れているため、発進時に無理に回転数を高める必要もなく、凄く自然体で乗ることが出来るんだ。


 前にコンさんから、フェアレディZは、アメリカで売れに売れて世界のスポーツカーの歴史を塗り替えるほどの偉大な実績を残したという話を聞いた事があるけど、その際に成功した最大の要因は3つで、価格の安さとスポーツカーとして充分な高性能を持ち合わせていた事、更に扱いやすくてシンプルなエンジンによる実用性の高さとメンテナンスのしやすさという日本車らしい理由なんだそうだ。


 その話を思い出して、私はなるほどこれこそがフェアレディZの持ち味であり魅力なんだと素直に感心したんだ。

 確かに見た目には凄い車だし、実際に凄いメカをたくさん搭載している高性能な車なんだけど、それを気負わず自然体で乗れる事こそがこの車が世界のスポーツカーの歴史を変えるに至った大きな要因であり、スポーツカーの魅力をたくさんの人に伝える事に寄与したんだとすんなりとお腹に落ちたんだ。


 そして、学校のある山道に入って走らせていくと、この車の2つ目の魅力が伝わってきたんだ。

 この車、凄くフットワークが良くて、その見た目の大きさとスペック表の上での重量からは想像の出来ない程の軽快な身のこなしで走ってくれるんだ。

 その重さから、私はサファリの様にワンテンポ早めの操作で先を読んで動くドライブが必要かと思っていたんだけど、そんな必要はなくて、私のシルビアと同じか、それよりも俊敏な操作を要求されることもあってビックリしちゃったんだ。

 更に言えば、舞華ちゃんの言っていた通りパワーも申し分なくて、この上り坂を全くものともせず、結構な速さで軽々と上っていってしまうその走りに、私は思わずこの車がノンターボである事なんてすっかりと忘れていたし、これ以上が必要だとも思えなかったんだ。


 うん、この車は速いよ!

 私はあまりの出来の良さに、思わず嫉妬すら覚えてしまいそうになったんだ。


 「どう? このZ。正直NAだから速さは期待できないと思うけど……」


 と不意に莉緒ちゃんが言ってきたので


 「そんな事無いよ。それとも、莉緒ちゃんはこれ以上の速さが必要だっていうの?」


 と思わず聞き返してしまったんだ。

 すると、莉緒ちゃんはたじろいでしまって


 「い……いや、そういう訳じゃないんだけど、正直、あんまり他の車に乗った事が無いから、この車が速いのか遅いのか自信が無くてさ……」


 と言って下を向いてしまったんだ。


 まぁ、私もそうだったんだけど、免許取り立ての頃って自分の身近にある車が世界の全てで、そして、そのレパートリーは極端に少ないケースが多いから、その車が速いのか遅いのかが全く判断できないっていうのはあるのかもね。

 そのために部車がたくさんあるんだけど、莉緒ちゃんは部内ポジションの割りには部員としての経歴は浅いのでほとんど教習車くらいしか乗った事が無いんだ。

 だから、今目の前にあるフェアレディZの実力がどのくらいのものなのかが判断できないんだろうね。


 私は、ちょっと気になる事があったので莉緒ちゃんに訊いてみた。


 「莉緒ちゃんは、この車に乗る事っていつから決めてたの?」

 「え? 幼稚園の頃くらいには決まってたかな?」


 莉緒ちゃんはちょっと考える仕草をしながら言ったんだ。

 どうやら、莉緒ちゃんは子供の頃から活発な娘で、既に球技で実力を発揮し始めていたそうだ。

 それと同時に好きだったのが車で、伯父さんが趣味で持っていたフェアレディZがお気に入りだったそうだ。


 その後、伯父さんは次の型のフェアレディZを買う際も下取りには出さずにこのフェアレディZを取っておいてくれたそうだ。


 「伯父さんはスポーツカー好きなんだよ。Z33の後もRX-8、Z34、そしてGRスープラと乗り継いで、先月新型Zが納車されたんだ」


 莉緒ちゃんの伯父さんが初めて中古で買った車が、黄色い2代目のフェアレディZだったそうで、以降伯父さんの中で黄色のフェアレディZは特別な存在だったそうで、今回も新型の黄色いフェアレディZを買ったのだそうだ。


 「だから私も、このZに乗りたかったんだ。伯父さんがいつも大事にしていたこのZは、私の憧れだからね」


 莉緒ちゃんは凄く嬉しそうに言ったんだ。

 うん、良いんじゃないかな。子供の頃から憧れていた車に乗れるなんて言う事ないじゃん。それに、フェアレディZなんてそうそう乗れる車じゃないし、それがJKでとなると更にその分母は小さくなるよね。


 「それでさ、色々な車に乗ってきたあかりんのぶっちゃけた意見が聞きたいんだよ……ほら、私って教習所の車くらいしか乗ってないからさ」


 莉緒ちゃんは珍しくモジモジしながら訊いてきた。

 私はなんでそんな事を訊いてくるんだろうと不思議に思ったんだ。

 別に憧れの車なんだから、他人の評価なんてたとえ悪かろうが、その想いが明確であるならば関係ないし、その想いも揺らぐことはないと思うんだよね。


 でも、恐らく莉緒ちゃんには車に対する経験値が無いから、他人の評価を跳ね返すだけの自信がないんだろうね。

 そして、恐らく昔の雑誌とかの情報で見てる可能性もあるよね。

 この型のフェアレディZが出た年って、スカイラインGT-Rが復活した年でもあるから、フェアレディZとGT-Rを比較して……っていう記事なんかが多かったみたいなんだ。

 だから、その辺を事前にエゴサーチしていたとするんだったら、ちょっと自信が揺らいでいるんだろうね。


 「私は良い車だと思うし、充分だと思うよ」


 私はニコッとして言ったんだ。

 その瞬間、莉緒ちゃんから緊張の表情はすっかり消えたんだ。



 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『自分の車に対する他人の評価って気になるものなの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

 

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