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奇策と優位置

 「でも、ブースを車だらけにして机なくしたら、勧誘の物資が置けなくなっちゃいますよぉ」


 沙綾ちゃんが心配と不満をごちゃ混ぜにしたような表情で言った。

 確かに、勧誘ブースには前回の文化祭の時と同様に大型モニターを置いて紹介映像を流すのと同時に、机の上には紹介のパンフや、筆記用具なんかを置くから、そういう意味では困ると言いたいんだろうね。

 確かに、勧誘のブースで足を止めた新入生に対して、アンケートなんかでアプローチをして紹介していくからこそ、入部希望者に繋がる訳で、それが無ければ敷居が高くて部室を訪ねてくる足も遠のいちゃうよね。


 でも、当然私だってそこのところは考えてるんだよ。

 

 「車にはトランクっていうものがあるじゃん。物資の予備はそこに入れておけば良いんだよ」

 「でも、それでも肝心の机がなくちゃ、新入生にアプローチできないよ。画板持つなんて案は却下だよ!」


 私の指摘を沙綾ちゃんは違う切り口からバッサリと斬った。

 でも、私はそこに対しても案があるんだよ。


 「車を使ってテーブルにするんだよ」

 「ええっ!? どうやって?」


 私の案に対して、沙綾ちゃんが思いっきり驚いて突っ込んでいた。

 でも、莉緒ちゃんや陽菜ちゃんはなんとなくひらめいていそうだね。

 

 そのために、私は準備していたものがあるRX-7のガラスハッチを開けて、更に車の下に隠しておいたベニヤ板を取り出すとトランクの開口部に敷いた。


 「どう? これでテーブルになるよ」


 それを見たみんなが、おおっという表情になった。


 「こうすればテーブルにもなるし、車も1台多く展示できるよ。それになにより、この方が自動車部らしいし、新入生の注目度もグーンと上がるよ! どう?」


 それを見た私がちょっとドヤ顔で言うと


 「これは良いっス! これならブースに寄ってくれる新入生が増えるのは間違いないっス!」

 「おおーっ! こういう方法は思いつかなかったなぁ……」

 「これで、新入生の獲得数の上位に食い込めるね!」


 とみんなが喜んでくれたんだ。

 

 「それじゃぁ、車はやっぱりFCっスか?」


 七海ちゃんが、前のめりになって訊いてくるので


 「それは決めてないよ。たまたま第二体育館に落ちてたこの板の寸法に合ったのがRX-7だったってだけだから、車に関してはみんなで決めようよ」


 と私は答えた。

 私はこの案を思いついたのは、なにかブースの設営に使えるものが無いかと第二体育館の倉庫を覗いた時にこの板を見つけたからなんだ。

 だから、別に板の寸法に関しては足らなければ新たに買えば良いと思っているんだ。


 そこからはみんなが、どの車が最もインパクトがあって、テーブルとしての機能も優れているかの話を始めた。


 「CR-Xなんてどう?」

 「ダメだよ沙綾っち、それじゃFCの方が机としても広いし」

 「シルビアのコンバーチブルは?」

 「でも、結構大きな板が必要じゃね?」

 「サファリはどうかな?」

 

 など、みんながそれぞれの案を持ち寄ってディスカッションしている姿は、部活動の醍醐味を感じさせてくれたんだ。

 

 私は、事前に手に入れていたブースの場所の見取り図を広げてみせた。


 「おおっ! これをどこで?」

 「教頭先生から、貰って来たんだよ!」

 「さっすがだよ! 普通は貰えないんだよ!」


 七海ちゃんに訊かれたので答えると、莉緒ちゃんに言われた。

 どうやら、この見取り図は門外秘で、恐らく生徒で持っているのは私だけのようだ。

 なるほど、この部はよっぽど教頭先生から信頼されてるんだね。

 私は、その見取り図を広げると


 「この縞々になっているところが、自動車部の候補地なんだって。どこにすれば良いのかをみんなに聞きたいんだ」


 と言うと、3つの候補地を指差した。

 その理由は、私自身はこのイベントを体験していないために、どこが優位地なのか分からないのだ。

 私の入学式は、ただの通過儀礼で部活をする事も許されていなかったために、こういうイベントがあったか否かすら覚えていないのだ。なので、どこにブースを置いたら効果的なのかが分からないのだ。


 すると


 「おおっ!? しかも、予定候補地まで分かってるっスね?」


 と七海ちゃんが驚いた後で考え込んでから


 「ここっスかねぇ……?」


 と指差したのは、体育館の出口からすぐの位置だった。

 あとの2ヶ所は、校庭の真ん中くらいの所と、校門のすぐ近くで代わりに広めの場所だった。


 「真ん中は前半の部の猛攻で疲れちゃってるから、あんまり勧誘してる部が頭に入ってこないし、校門前は3割くらいがバックレちゃってるから捕まらないし、完全に飽きちゃってるから、流動層が捕まえられないよ」


 と陽菜ちゃんが言った。

 どうやら体育館近くは、強豪の運動部の指定席で、新入生をがっちりホールドしてくるそうだ。

 そこで興味のあるなしに関わらず、紹介活動が入れかわり立ちかわり行われ、次の区画でも同じように怒涛の紹介と勧誘が行われるため、校庭の中盤に来る頃には、どこの勧誘があったかも覚えていないくらい頭の中がパンパンになってしまうそうだ。

 そして、その疲労から逃れたくなってトイレに逃げ込む新入生も多く、更にそこを乗り切った後も熱量の高い部活にまとわりつかれるため、裏門近くになると、既に勧誘自体に辟易してしまうのだそうだ。


 「なるほど、そうなると手前を取った方が良いんだね!」

 

 私が言うと


 「でも、この見取り図もさることながら、候補を知ったり、更に希望の場所を取れるなんて事もあり得ないんだけどねー」


 と莉緒ちゃんが驚いた表情を隠さずに言った。

 どうやら、普通は既に場所の割り当ての決定稿を知らされるだけなので、先もって候補地を知る事も出来ないそうだ。

 

 「やっぱり、教頭を押さえてるのは伊達じゃないよね」


 沙綾ちゃんがしみじみ言った。

 まぁ、言い方は悪いけど、教頭先生が副顧問なのはこういう時に物を言うよね。正直、七海ちゃんたちは教頭先生は天敵だ……みたいに言うけど、きちんと活動している姿を見せていれば、教頭先生は活動に理解を示してくれるよ。


 私は、乏しい経験の中から新入生の部活勧誘の会場を思い浮かべてみた。

 見取り図から他の部がどの場所を取っているのかは分からないけど、体育館から出ると、恐らく野球部、サッカー部、ラグビー部なんかが出口をがっちり固めていて、出てきた瞬間からもみくちゃにされて、抜け出した瞬間、部員に捕まって紹介が始まるのだ。

 その波をぬけて、ちょっとヘトヘトになりかかった先にあるのが自動車部のブースなんだね。


 今の段階で大型モニターでの紹介と、3台の車、更にはテーブルになっている車……という布陣で盛り上げているんだけど、もしかすると、疲れかかっちゃってる新入生には、もしかすると目につかない可能性があるかもね。


 だったら、なにかインパクトのあるアイキャッチが欲しいね。

 できたら文化祭の時にやったサファリのウインチ実演がやりたいけど、恐らく場所が狭いから許可が出ないね。


 私は、必死に何か疲れた新入生が足を運んでくれるようなインパクトを考えていた。

 すると


 「さん?……燈梨さん?」


 と、沙綾ちゃんに肩を揺すられていた。

 思わず必死なって考えていたら、意識が向こうに飛んでいたよ。

 私は、さっきの話をみんなに投げてみたところ


 「確かに、アイキャッチは必要かもしれないね」

 「それじゃぁ、CR-Xのサイドのグラフィックをやり直してみるね!」


 と、沙綾ちゃんと陽菜ちゃんが次々に賛成して、案を出してくれた。

 私は、陽菜ちゃんにCR-Xの件をお願いすると同時に、もう1つ何かないかを必死に考えていたところ、突然、あるものがピンと思いついたんだ。


 私は、思わず笑みがこぼれたんだけど、それを見たみんなから気持ち悪がられたのは心外だった。

 


 

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『燈梨は何をひらめいたの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

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