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エア抜き

 配線をダッシュボードの上に引き込むと、ダッシュボードの上に固定した3つのメーターにそれぞれ配線を接続した。

 それぞれの配線にナンバリングしておいたので繋ぎ間違えなかったが、それぞれのカプラーの形が違っていたのでなくても間違えなかった事に気付いたのは、接続した後だった。


 「ナンバリングしなくても分かったね」


 私が言うと


 「結果はそうですけど、その行動は間違ってないですよ!」


 沙綾ちゃんが、ちょっと真剣になって言った。

 

 「そうだよ、沙綾ちゃんの言う通りだよ」


 と背後からした声に振り返ると、舞華ちゃんがニコニコしながらやって来た。

 舞華ちゃんは続けて言った。


 「燈梨ぃ、その習慣は捨てるべきじゃないよ! 柚月とは大違いだよ!」

 「私が~、ガサツみたいに言うなよ~!」


 それを聞いた柚月ちゃんが、舞華ちゃんに掴みかかりながら言った。


 「なんだよー、柚月はパンツ履き忘れたり、掃除しない汚部屋に住んでるだろー!」

 「ウソつくなよ~! パンツ脱がせるのはマイだろ~、それに汚部屋に住んでるのはユイだろ~!」


 その後も舞華ちゃんと柚月ちゃんの応酬が続いていたが、そこに結衣ちゃんがやって来て


 「柚月ー! ちょっと向こうで話そうか、マイもこっちに来る!」


 と言うと2人を部室へと連れて行った。

 そして、優子ちゃんが


 「燈梨ちゃんの習慣は、凄く良い事だよ。だから、みんなも真似しようね」


 とニコッとして言うと


 「ハイッ!!」


 とみんなが元気よく返事をした。


 3年生がまた打ち合わせに戻って行った後、作業を再開した。

 その最中、沙綾ちゃんが言った。


 「優子先輩が言うと、妙に締まるんですよね」

 「えっ!?」


 私が驚いていると


 「分かる~、マイ先輩の言葉はスッと腹に落ちるのに対して、優子先輩の言葉は、結構重みがあって忘れられない感じなんだよね」


 と陽菜ちゃんも言っていた。


 それを聞いて、私は、3年生のそれぞれ役割がある事を改めて実感した。

 同じ話でも、彼女たちのそれぞれのキャラクターでアプローチすることで、みんなにそれぞれ響いているのだ。


 私たちもそれぞれのキャラクターに合わせてこうなれるのかな……と思った。


 メーターの接続が終わると、早速チェックをしなくちゃいけないんだけど、その前にやらなければならない事が2つあった。


 「オイル補充しないとエンジンかけられないっス!」

 「その前にクーラントもだよ」


 七海ちゃんと沙綾ちゃんが言って、どちらをするべきかで揉め始めたため、私は言った。


 「2班に分けて、同時進行でやろうよ!」


 すると、2人は私の方を見てきょとんとしていたが、すぐにニコッとして


 「さっすが燈梨さんっス!」

 「よしっ! そうとなったら早速始めましょう!」


 と言うと、七海ちゃんはオイル、沙綾ちゃんがクーラントの作業に取り掛かった。

 まずは、七海ちゃんとオイルのデータを調べた。

 オイルの量自体は2.6リットルだけど、フィルター交換時は2.8リットルらしい。

 つまりは、オイルフィルター自体に0.2リットルの容量があるって事だね。


 フィルターは、さっきオイルブロックを付けた時、新しいのに付け替えたから、念のため緩みが無いかをチェックしてからオイルを入れよう。

 エンジンのてっぺんにあるフィラーキャップを外して、そこから注入するんだよ。


 「任せてくださいっス!」


 オイル缶を開けた七海ちゃんが、直接缶からエンジンにオイルを入れようとしたので、私は言った。


 「ちょーっと待ったぁー!」

 「えっ!?」


 七海ちゃんは、驚いたような表情で言った。


 「それじゃ、こぼしちゃう可能性大だし、それに直接入れちゃうと何リットル入ってるかも分からないじゃん。これを使うんだよ」


 私は言うと、オイルジョッキを出して七海ちゃんに渡した。

 七海ちゃんは、ジョッキの脇にある目盛りに従ってオイルを入れると、ジョッキの先端をフィラーに挿しこんで、オイルを注入した。


 「入ったよ!」


 七海ちゃんが、思わず素になって言った。 

 取り敢えず、オイルは冷却水が入った後で量のチェックをして終了だね。


 次は冷却水を入れていこうね。

 入れた後で、エア抜きという作業が必要になるから、注入した後でもうひと作業あるね。

 

 「エア抜きって、どうやるの?」


 沙綾ちゃんが訊いてきたので、私は以前に調べた事を思い出しながら言った。


 「ラジエーターキャップを開けたところに、2リットルのペットボトルの底を切ったものを逆さにつけて、エンジンをかけて、リザーバタンクから減った分だけ冷却水を足していくんだよ。減らなくなったら終了だよ」

 「分かりました!」

 「ペットボトルをカットします」


 1年生のみんなが、ペットボトルの準備をしている間、私たちはバッテリーを持って来て接続した。


 「バッテリーを繋ぐ時はプラス、マイナスの順で、外す時は逆だよ。間違えないようにね」


 私が言うと


 「ハイッ!」

 「分かりましたっ!」


 とみんなが言って、準備ができたところで、七海ちゃんは1年生を数人を連れて下に潜り、オイル漏れがないかをチェックして、他はエア抜きと水温計のセンサー部からの漏れがないかをチェックする担当へと別れた。


 “ヒュルルルル……フィィィィィィィィー”


 エンジンがかかってしばらくすると、ペットボトルの中で

 “ボコッ……ボコボコボコッ”

 と、冷却水が跳ね始めた。どうやら、これがエアみたいだけど、予想以上の勢いだ。思わず爆発しちゃうんじゃないかと不安になるくらいだけど、これが必要な作業なんだ。

 そして、見ているとリザーバタンク内の冷却水が減っているので、陽菜ちゃんに補給して貰った。

 ガレージには、緑色のクーラント液しかないので、今回からは緑色を入れることにしたんだ。色だけの違いだったら、特にどちらを入れても変わらないみたいだし、良いでしょ。でも、なんで色がついてるんだろ?


 「クーラントに色がついてるのは、漏れた時にエアコンの水や、マフラーから落ちる水蒸気の水と見分けるためらしいよ」


 沙綾ちゃんが、独り言のようにボソッと言って、そして、私を含めてみんなから驚かれて一人で顔を真っ赤にしていた。


 すっかりエア抜きも終わり、七海ちゃん達からの報告でオイルの漏れもなく、そして、私が目視して確認したんだけど、水温計のセンサー部からの漏れも無かった。

  

 あとは、取り付けた3つのメーターが正常に作動するかだけど、再びエンジンをかけてメーターの動きを見てみると、見事に3つとも動いて、正常な値を指し示していた。

 みんながメーターを覗き込んで見て、一斉に歓声を上げて喜んだ。

 自分達の作業がしっかりと形になって現れるところに、物凄くやりがいを感じたんだ。


 「燈梨さん、やったっス!」

 「良かったね、燈梨さん」


 七海ちゃんと、沙綾ちゃんがやって来て、私の手を握ると喜びながら言った。私も、嬉しくなって思わずその手を強く握って喜びあっちゃった。


 遂に私たちも製作に関わったレースカーが完成した。

 このエッセで出場する耐久レースが、とても楽しみで、また、待ち遠しくなってきた。


 よしっ、これで終わりだね……と思った私が、正面に回ると、まだ骸骨顔のエッセと目が合ってしまった。

 すっかり忘れてた……あとはバンパーを取り付けて、元通りの表情に戻してあげなきゃ。



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