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サンドイッチブロック

 水温計に続いて油圧計と油温計の取り付けに入った。

 昨日調べてみたところによると、センサーの取り出し自体は同じ箇所から取っているので、あとはセンサーの違いだけで、ワンアクションで2つとも取り付ける事ができるみたいなんだ。


 始める前に、七海ちゃん達と調べたページを見てみると


 「取り出し自体は同じで、あとはセンサーが違うだけっスね!」

 「これなら、2つつけた方が良いって理由も分かるね。同じ作業するわけだから」


 と七海ちゃんと沙綾ちゃんともに納得した様子だった。

 まずは、オイルフィルターを外さなきゃならないんだけど、オイルフィルターを外しちゃうんだったら、オイルと、フィルターも一緒に交換しちゃった方が良いよね……と思ったので


 「作業の工程上、フィルターとオイルも交換しなくちゃね」


 と言うと、七海ちゃんが


 「顧問の水野から指示があったので、既にオイルも抜いて、フィルターも外してるっス」


 と言うので、私と沙綾ちゃんが驚いて


 「ええー-!?」


 と思わず言ってしまった。

 既に活動の細かい点まで分かっているのなら、先もって打ち合わせなり、申し送りなりして欲しいのが本音なのだ。


 もし、知らないでエンジンをかけてしまったら大惨事になってしまうところではないか……と思ったら、バッテリーが外されていて無くなっていた。

 そして、バッテリーを探すとトランクの中にあり、バッテリーの脇には

 『只今オイル欠乏中。オイル交換終わるまでエンジンはかけない事』

 という貼り紙がされていた。


 「こんな回りくどいことするくらいだったら、直接言えば良いじゃん……」


 思わず口走ったところ


 「そうですよね」

 「本当っス!」


 と沙綾ちゃんと七海ちゃんも同調して言った。

 ……舞華ちゃんが苦労するわけだと、今更ながら分かってきた。本当に教師水野との意思疎通の仕方を考えなければならないなぁ……と思った。


 作業を再開するべく、私達は床下のスペースへと降りて、エッセのエンジンルームを下から覗き込んだ。

 オイルを貯めておくオイルパンと、その脇にオイルフィルターがあった。

 オイルフィルターの位置は、車種やエンジンによってまちまちのようで、エッセの場合は車底部に近い地面に向かって下向きについていた。


 「この車は、下にフィルターがついてるんだ」


 私が言うと、七海ちゃんが言った。


 「燈梨さんの車は、違うんですか?」

 「うん、シルビアは運転席側のエンジン脇あたりだね」


 と言うと


 「そうなんですね、車によって色々違うんっスね」


 と納得していた。

 このフィルターを外して、その基部にセンサーブロックをつけるとおさらいしていたので、まずは現状確認のためフィルターを外してみるが、予想通り、外した途端フィルター部に溜まっていたオイルが垂れてきたので、後ろで構えていた七海ちゃんの持つバケットで受け止める。


 「しかし、何のためにあるんですかね? フィルターなんて」


 七海ちゃんが忌々しそうに言ったので


 「オイルは、エンジンの中を循環して、カスとか、鉄粉なんかも吸着してるんだよ。それらをエンジン内に再循環させないように、フィルターでしてるんだよ」


 と説明した。


 「ナミ、そんな事も分からないでバイク乗ってるの?」

 「交換しなきゃいけない事は知ってるけど、なにするものかなんて知らないもん」


 と、沙綾ちゃんと七海ちゃんが言い合っていた。

 確か、七海ちゃんはスポーツタイプの原付に乗って来ていたので、興味がありそうには見えてたけど、メカの知識には疎いみたいだね。


 私たちが取り付け位置を確認している間に、上にいるみんながセンサーの取り付けをやってくれていた。

 ブロックに開いている穴にそれぞれセンサーをねじ込むんだけど、水温センサー同様、ネジ部にはシールテープを巻いて、更に使わないセンサー穴を埋めるボルトのネジ部にもシールテープを巻いて、漏れを防ぐんだそうだ。


 そして、こちらはセンサーを付け終わったブロックを、フィルターの基部にねじ込む。

 専用のボルトで締め込むんだけど、かなり大きなサイズのネジなので、教師水野が、専用のソケットを用意してくれていた。

 それを使って、しっかりと締め込むと、そこに新しいオイルフィルターを取り付けて、エンジンルームの作業はほぼ終了となった。


 「ちなみに、センサー基部のブロックは、サンドイッチブロックとも呼ばれてるんだって」


 スマホを見ながら調べている七菜葉ちゃんが教えてくれた。

 なるほどね、挟み込んでつけてるから、サンドイッチブロックかぁ……言い得て妙だなぁと、感心しちゃったよ。


 私たちは、地上へと戻ると、今度はセンサーから出ている配線を室内に引き込んで、メーターと接続する作業に入った。

 エンジンルームから、室内にどうやって配線を引き込むのかと思って調べてみると、他の配線などが通っている穴があるので、そこのゴムキャップに切れ込みを入れて室内へと配線を通すんだって。


 すると、七海ちゃんがその配線を通す前に


 「こういう時は、交換していらなくなったワイパーゴムの芯に入ってる細い棒が便利だって、マイ先輩から直々に教わったんだぞ~!」

 

 と言って、配線の先端と細い金属の棒をテープでぐるぐる巻きにしていた。

 そこに沙耶ちゃんが来て


 「その時、配線を留めるテープは先端を尖らせてテーパー状にすると、細い場所を通りやすくなるんだからねっ!」


 と言って、テープの先を尖らせて巻くと、1年生から歓声が上がっていた。

 私は、2人の人気ぶりと共に、舞華ちゃんの存在の大きさを感じていた。

 やはり、彼女の存在抜きには、この部の存在は語れないものになっているし、部員達もみんな、舞華ちゃんの事を尊敬している事は、今の反応でよく分かる。

 私も舞華ちゃんみたいになりたいな……素直にそう思った。


 七海ちゃんがエンジンルームから配線を挿し入れて、私と沙綾ちゃんが室内で受け取る……のだが、なかなか室内から見える位置に配線が出てこないので、受け取るのに凄く苦労した。

 ダッシュボードの奥のかなり上の方に出てくる上に、そのあたりは陽がささないので真っ暗な事が、尚、見え辛くして、配線を捕まえられないのだ。

 

 「ナミ! もっと奥まで入れてよ」

 「これ以上は、何かにつっかえて入らないんだって!」


 沙綾ちゃんがイライラして七海ちゃんに怒鳴り、七海ちゃんが反論していたけど、当事者としてはそうなのだ。

 エンジンルーム側からやっている方は、精一杯奥まで挿しこんでいるし、受け取る方も、手がしびれるほど力一杯手を伸ばしているが、見えないし届かないので、互いに相手に対する不信感が芽生えてきてしまう……。

 例えとして正しいのか否かは分からないけど、感覚的には二人羽織と言うのがピッタリのような気がする。


 しばらく沙綾ちゃんと2人で暗中模索していた私の指の先に、何か動くものが触れたので、なんとか捕まえてグッと引っ張ってみると


 「引っ張られたっス!」


 と言う七海ちゃんの声が聞こえたので、私は思い切って、それを思いきり引っ張ってダッシュボードの下まで持って来てみた。

 すると、さっき作った先端に配線がテープが巻かれた金属棒だった。


 「やったぁ!」


 私が思わず叫ぶと、みんなから歓声と拍手があがった。

 なんか、今までに感じた事の無い、こそばゆくて嬉しく、そしてちょっぴり誇らしい気持ちが芽生えてきた。

 あぁ、やっぱり部活動はじめて良かった! 私が心からそう思った瞬間だった。

 

 私の配線を引っ張る手は、心なしかいつもより力強い気がした。

 



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