そして王国の軍事刑務所へ
やぁ! みんな!
え? お前は誰だって?
そうか、そう言えば僕はまだ一回も今作に登場してないね。
僕はミドル、ハリガネの友人さ。
そう、弁護人を通じてハリガネに差し入れをしたのは僕のことさ。
前作では一話の早い段階で登場してたんだけどね~。
まぁ、主人公が刑務所に入ってる上に面会が出来ないみたいだし、しばらく出番はないのかもしれないね~。
このまま、前作読んでくれた読者が僕の存在忘れちゃいそうで怖いや~。
~道具屋“オードリー”の従業員、ハリガネの友人ミドル=ヘップバーン~
ハリガネが壁を通り抜けると先程までの薄暗くて狭い留置場とは打って変わり、明るく広い空間がハリガネの視界の前に現れた。
(ここが王国の軍事刑務所か...)。
ハリガネはそう思いながら辺りを見回した。
(広い空間だけど真っ白な壁に魔法陣が光っている以外は、特に何もなくて殺風景だな~。まぁ、留置場もそうだったけどさ~)。
そして、ハリガネの目の前には鎧と兜をフル装備した八人の兵士が立っていたが、その集団の真ん中にいた兵士だけが他の兵士とは異なり頭に兜を着用していなかった。
「は~い、三七五六四番の被告人移管完了~! 貴方がハリガネ=ポップさんね~? 」。
また、しゃくれ顔に長身で細身である事が特徴的なその兵士は、しゃがれたハスキーボイスでハリガネにそう問いかけた。
「はい、そうです」。
ハリガネが即座にそう答えると、その兵士は片手に持っていた一枚の紙を読み上げた。
「え~、被告人ハリガネ=ポップッ!! 起訴された罪状は国家反逆罪ッ!! 」。
「...」。
うつむいて自身の罪状を聞くハリガネ。
「はいッ!! 死刑ッ!! 」。
「えぇぇぇぇええええええええええええええ...っっ!? 」。
「アハッハッハッハ~!! 」。
その兵士は目を丸くして驚愕するハリガネの反応を見ると、自身の両手を叩いて爆笑しだした。
「冗談っ! 冗談やてっ!! さすがにそれは早いわ~!! ハ~ハッハッハッハ!! 」。
「...」。
ハリガネは憮然とした表情でその兵士を睨みつけた。
「分かった! 分かった! ゴメン! ゴメンって~!! 俺達もしばらくは一緒になるわけだし仲良くしようや~! 自分、怖いってぇ~!! 」。
「え? じゃあ貴方が僕の担当さん? 」。
「せや、俺は担当のボックス=シニアや。まぁ、ここが軍事刑務所っちゅうても刑務作業とかないからな~。基本は単独室にしばらくいてもらうで~。じゃあ、細かい話は身体検査と写真撮影してからするから移動しましょか~」。
「はい...」。
「まぁ、そんなつまらなそうな顔すんなやって! 楽しくやろうや~! のう!! 」。
「は、はぁ...」。
「執行日まで」。
「...」。
「アハッハッハッハ~!! 」。
「...」。
ハリガネは憮然とした表情のまま、ボックスや他の兵士達と共に通路を歩いていった。