ハリガネ=ポップ被告人
フフフ...。
遂に、俺の出番ってわけか...。
...とは言っても、前作同様に今の時点では俺に関して話すことがあんまりないんだよね~ん。
あ!!
ち、ちょちょちょ...っ!!
待ってよっ!!
待ってっ!!
分かったから!!
分かったって!!
ん~、そうだな~。
じゃあ、君達にとっておきの情報を教えてあげるよ~。
ポンズ王国では修道女が男性に人気な職業一位にランクインされてるんだよね~。
ん~、俳優さんや女優さんといった著名人が修道院出身っていうのも影響が大きいかもね~。
でも、個人的には国賊の女の子がいいね!
ほらぁ~、何か健康的でさぁ~!
そういう子を力づくで...ゲヘヘ!!
え? そんなことを聞いてるんじゃないって?
えぇ~??
そんな、またまたぁ~!!
好きなクセに...え?
結局、一体お前は何者なのかって?
それは物語が進むまでのお楽し...あっ!!
待ってっ!!
やめて...っ!!
終わらないでぇ~!!
~謎の男、ジューン~
「いやぁ~、早かったなぁ~。こんな早くに刑が確定するなんてなぁ~」。
「...本当に早かったですね。逮捕されて三日後に...か」。
魔力で作られた光輪で両手を拘束されているハリガネは、憮然とした表情でフォートナイトや他の憲兵と共に白い壁の前に立っていた。
「まぁ、軍法会議はスムーズに物事が運ばれるわなぁ~。ホント極端やなぁ~」。
(...軍でも署でも取調べっぽい事は特にしてなかったし、そのまま起訴されるのは時間の問題だったのかもな...。あ~あ、これで反逆者確定か...。てか、そもそも防衛目的で傭兵として出動したのに何で反逆者のレッテルを貼られなくちゃいけないんだっ!! クッソォ~! こうなったら、徹底抗戦してやるっ!! )。
ハリガネは深い溜息をついてうんざりした表情を浮かべると、その様子を横目で見ていたフォートナイトは苦笑いしてハリガネの肩を叩いた。
「まだこれからやってっ! これからやろ~! 頑張れ頑張れっ! 」。
フォートナイトはハリガネの背中を叩きながらそう激励した。
「はぁ...。まぁ、頑張ります...」。
疲れ切った表情のハリガネはフォートナイトに気の抜けた返事をしながら目の前の壁を見つめていた。
「そうそう、移送される場所は王国軍の軍事刑務所や。判決まではそこにしばらくいてもらうで~。まぁ、細かい話はその刑務所の職員に聞いてくれや~」。
「...分かりました」。
腑に落ちない表情を浮かべるハリガネは自信なさげにそう返事をした。
「おっ? あっちの準備も出来たみたいやな~」。
目の前の壁から青白く光る魔法陣が現れた時、フォートナイトがそう言いながらその魔法陣を指差した。
「さて、俺はここでお別れや。あとは自分次第やな。まぁ、精一杯頑張りや~! 」。
「あ、フォートナイトさん、短い間ですがお世話になりました~」。
「おう! 元気でな~! 」。
フォートナイトに背中を押されたハリガネはそのまま魔法陣の中へと消えていった。
ハリガネがこの場から消えた後、しばらくして魔法陣も姿を消していった。
「...よし、終わりや。それじゃあ、俺はここでまだやる事があるから戻ってええよ~」。
「了解ですッ!! 」。
フォートナイトがそう促すと、立ち会っていた憲兵達はそう返事してこの場から去っていた。
「...」。
フォートナイトは神妙な表情を浮かべ、ハリガネが通り抜けていった壁を見つめたまま腕組みをした。
「...」。
そして、黙り込んだフォートナイトはその場から動こうとしない。
「...」。
「あれぇ~?? もしかしてバレてた~?? 」。
しばらくして、部屋の隅からジューンが姿を現した。
「“サイレンス”で気配を消してたからどの位置に隠れていたかまでは分からんけど、俺等が彼を送る前からこの部屋に隠れてるって事は容易に予想できたわ」。
「ウワァ~オッ!! 敵わないねぇ~!! 」。
ジューンは悪戯っぽく舌を出して頭を掻きながら驚いた様子を見せた。
そんなジューンの反応を見て肩をすくめて呆れるフォートナイト。
「ホントにふざけ散らした男やな...。あと、俺が席外してた時、彼の居室内に潜ってたの分かってたわ。てか、潜ったとしても色々元通りにしとけや。監視魔法も消したまんまやったし、自分が魔法陣で通っていった壁の防壁魔術も消されてて侵入者が入った事がバレバレな状態やったわ。ホンマ、やりっぱなしは困るって~。後始末するこっちの身にもなれやぁ~、ホンマ」。
「へへへ~! 」。
「何や!! その笑い方っ!! 気持ち悪いわっ!! ...まぁええけど、彼の潜入調査なんて王様も何を考えてるのかね~? 」。
「ん~、王様は物好きだからねぇ~」。
「わざわざお前を使ってかぁ~? てか、国家反逆罪にかけられた王国下兵士は父親のハリボテ以来か...。まぁ、息子の方は除隊したみたいやけど。つーか、俺も今となっては都市の憲兵で収まってはいるが、もともと俺も戦時中は王国軍本隊の兵士やったしな。ハリボテさんとは部隊は違えど多少の面識はあって、ハチャメチャな男やったのは確かだったな~。その分、ハリボテさんには酒場でお世話になってな~。いやぁ~、あの時は楽しかったな~」。
「ははは、そうだったの~? 」。
「何を他人事みたいにしらばっくれてんねん。過去には俺達も争った仲やないか~」。
「...」。
ジューンは笑みを浮かべたまま何も言わない。
そんなジューンの反応を察したフォートナイトも笑みを返した。
「安心せいや、ここも監視魔法は消しておいてあるし...。もし、監視魔法の件で軍に何か突っつかれたら適当に上手くやってくれ。それと、“あっちの方”も頼むな~」。
フォートナイトはそう言って、ズボンのポケットから硬貨を取り出した。
それに対し、ジューンは笑顔で親指を立ててフォートナイトに応じた。
「お前もあんまり長居すんなや、色々と面倒臭い事になるから。まぁ、彼の事に関しては先輩の方に引き継いでおいたから、後はそっちの方で上手くやっといてくれや~。さて、俺は戻るからな~」。
フォートナイトはそう言うと、魔法陣を通って室内から姿を消していった。
「...」。
ジューンは先程のフォートナイトと同様、ハリガネが通り抜けていった壁を神妙な面持ちでずっと見つめていた。