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ハリボテ=ポップとノンスタンス


みんなは俺の事覚えてっかな?


ジーパン姿で取調べしてた若い刑事ってのは俺の事よ!


俺はもともと武術家出身の兵士として王国軍の歩兵隊に配属されてたんだけど、すぐに都市ユズポンの憲兵に配置転換されちゃったんだよね!


俺は魔法とかそういう面倒くさいやつは使わねぇ!


拳と蹴りだけで十分よっ!


そういう事だから、俺は憲兵が使う剣や銃も一切使わねぇ!


自分が極めた武術だけで十分よっ!


あと、これは後の物語で使われるか分からない設定なんだけど、俺はマッスルジャスティス道場の門下生なんだ!


つまり、師範ヤマナカ=マッスル先生は俺の師匠なんだよね~!



~ユズポン警察署捜査第一課捜査第一係、ジーンズ憲兵上等兵~






「...」。


机の上に肘を置きつつ頬杖をつき、神妙な面持ちで話を聞くハリガネにジューンも真剣な表情で話を続けた。


「取調べで話を聞いてるから知ってると思うけど...。君がノンスタンスの侵略区域に向かう前、リーダーのデイが幹部達を引き連れて最前線で警戒していた王国軍に対等な交渉要求と演説を行っていたんだ。俺達がパブから目撃したあの時計塔でね。何故にデイは時計塔から公に姿を現したかというと、恐らく王国軍の陣形や現地状況を確認していたためと推測されているみたいだね~」。


「それにしても、幹部共々公然と姿を晒してたのは大胆だったな~」。


ハリガネがそう述べると、ジューンは小さく頷いた。


「確かにね~。その後はデイは再び身を隠し、ノンスタンスはあの塔と周囲の区域を陣取った。そして王国軍の本部に対して、映像を通してノンスタンス側の主張をしばらく訴え続けていた。まぁ、彼の演説では王を中心とした君主国家の廃止や民主制の必要性とか長々と話していたが、その中で君に関わる話もあったわけさ」。


ジューンは掌を突き出すと、その掌の上に浮かぶ正方形の黄色い光を放つ薄板のディスプレイがハリガネの目の前に現れた。


そして、その光の中にはデイが映し出されていた。


「これは、その時の...? 」。


ハリガネは怪訝な表情を浮かべながら映像を見つめた。


「これは王国の国防情報局から提供された当時の映像だ。デイは魔術を操るメンバー達に指示を出し、情報局や王国軍本部にあるスクリーン式の魔法陣をハイジャックさせていたのさ」。


「...最初から計画的だったんだな」。


ハリガネがボソッと呟いた時、映像からデイの音声が聞こえてきた。


『王国軍ッ!! 貴様達は万死に値するッ!! 偉大なる父ハリボテ=ポップはッ!! 我々ノンスタンスにとって救世主であるッ!! 偉大なる父は身分が低く親に見捨てられッ!! 社会的弱者であった我々ノンスタンスに食料や生活必需品を提供されッ!! 生活的援助を惜しむ事もなくッ!! 我々に救いの手を差し伸べられたッ!! 』。


映像上のデイは声を張り上げ、ジェスチャーを用いながら力強く視聴者に向かって訴えかけていた。


『そしてッ!! 我々と共に活動している有志達はッ!! 社会的差別により国の教育を受けられずにいたッ!! そんな境遇に遭っていた有志達にもッ!! 我が父はポンズ王国の教材や学習書籍を授けたッ!! 我々に生きるという事に関して教えを説かれたッ!! さらにッ!! 父は差別を廃した平等な社会の重要性とッ!! 個々が力強く勇ましく生き続ける事の必要性を我々に説かれたッ!! 』。


デイは話の途中で少し間を置き、両手を真横に大きく広げて演説を再開した。


『我々ノンスタンスにとってハリボテ=ポップは偉大な父でありッ!! 我々の太陽であるッ!! ノンスタンスは偉大なる父によってッ!! 今日まで生きることができたのだッ!! 』。


「フンッ! アイツ、俺が隊の最前線で生きるか死ぬかの目に遭っていた時に、知らないところで家庭を築き上げてたんかい」。


鼻を鳴らして不快感を露わにするハリガネを見てジューンは思わず苦笑していた。


そんなハリガネやジューンを余所に、映像内にいるデイの演説はまだまだ続いた。


『実子であるハリガネ=ポップは戦士の身分でありながらッ!! この王国を変えようとした偉大な父の意志を受け継がなかった事はッ!! 非常に残念でならないッ!! 』。


「...! 」。


映像内のデイに名指しされたハリガネは片眉を上げて反応した。


『我々ノンスタンスは偉大なる父ッ!! ハリボテ=ポップと共に強くッ!! 勇ましくッ!! 国内で自由に生活ができる権利ッ!! 自由に教育や学習を受ける権利ッ!! そして保障を受ける権利を強くこの場で訴えるッ!! ポンズ王国に今一度言うッ!! 貴様達は万死に値するッ!! ハリボテ=ポップを王国から追放しッ!! 英雄を反逆者扱いどころか存在を無に...』。


演説の途中でジューンが映像を流していたディスプレイを消した。


「...とまぁ、デイはその演説上で君の父親であるハリボテ=ポップ氏をしきりに賛美していた。ノンスタンスから“我が偉大なる父”なんて呼ばれていたところを考えると、君のお父さんは彼等に相当慕われていたみたいだね~」。


「結構、結構~。実子の俺なんかよりも、ずっと良い孝行息子な事で~。お互い、犯罪者同士でお似合いなんじゃないっすか? 」。


ハリガネが素っ気なくそう答えると、ジューンは再び苦笑した。


「いや~、君もそうなりそうな立場じゃないかぁ~」。


ジューンにそう突っ込まれると、ハリガネはばつが悪い表情を浮かべてそっぽを向いてしまった。


「チッ...!! それより、その映像を俺に見せて何を聞きたいのさ? 」。


「うん、それで話を戻すんだけど...。何でノンスタンスは君の事を知ってるのか気になってね~。さっきの映像でもノンスタンスは君の父親ハリボテ=ポップを“父”と崇めており、手放しで賛美する程彼等から強く支持されていた事が分かった。そして、ハリボテ=ポップは反逆集団であるノンスタンスと関りがあるどころか、集団の支援をしていた事も明るみになったわけだ。つまり、国外追放されたとはいえ、軍人であり王国を支えてきた伝説的兵士が反社会的組織と接触していた事が公の場で発覚されてしまったんだ。この映像を見た王国軍側は大変困惑したらしいよ~」。


「...だろうな」。


ハリガネは両腕を組んでジューンの話に相槌を打った。


「さらに、デイの口からは息子である君の名前も発せられた。王国軍の考えとしては、君の父さんを王国から追放した後もノンスタンスと君が王国の知らぬ水面下で関係を築いていたと捉えて、君をノンスタンスの支援者であると立証し、王国が潔癖であると民衆に公表して自身達の正当化を示す意向なんだろうね。つまりだ、王国や軍はあの映像を決め手として関連人物者である君を逮捕し、有る事無い事を君に全部押し付けて王国内の混乱の沈静化に務めようとしているって感じなんだろうね~」。


ジューンがそう言うとハリガネは疲れ切った表情を浮かべ、天井を見上げながら溜息をついた。


「随分と国民に献身的な王国ですなぁ~! ...てか、その件については軍の方からも聞いてるよ。現に、俺は元王国兵士であったわけだから、反社のデイやノンスタンスに関する情報を軍から得ていたわけだからな。でもさ、ノンスタンスは十年以上も前から国内外で反乱を起こしていたわけじゃんか? 」。


「そうだね、過激派の反逆組織だからね~」。


ジューンは頷きながらハリガネにそう答えた。


「俺自身がもともと軍人の人間だったわけだし、除隊後は傭兵としても撃退するために奴等とは何度も剣を交えてきたんだ。俺なんかは戦地でずっと奴等の仲間を殺し続けてきたし、何度も鉢合わせしてるから嫌でも顔は覚えるだろうよ。まぁ、それはお互い様なんだがな。俺達の方も仲間達が奴等に殺されたわけだし」。


「それで、デイが君の名前を知ってる事に関しては、戦闘中に君自身がノンスタンスに対して名乗ったのかい? やぁやぁ~、我こそは~...的な? 」。


「何処の国の自己紹介だよ、それ」。


ハリガネは首を横に振ってジューンに呆れた様子を見せつつも話を続けた。


「奴等に名乗り上げたことは一度も無いよ。ただ、数多くある奴等との戦の中で、後方に配置されていた連絡施設である基地が何度か侵入された事があったんだ。俺は最前線にいたから後々に軍から聞いた話だったんだが...。そこに保管されていた兵士のデータを奴等に見られて俺の情報が割れたんじゃないかなって考えてるんだけどね」。


「う~ん、それは不幸な事だったね~」。


「それか、ノンスタンスと接触していたクソ親父がベラベラ喋り倒したか。紛争地帯でデイが俺の名前を認知していたと発覚した時は、正直面倒臭くなるなって正直思ったよ。まさか、こんな事になるとも思わなかったしな~」。


「まぁ、国家間での争いの経緯もあったりして、ノンスタンス側が君の事を一方的に知っていたという事だね? ...仲間達を殺されたて恨まれた事も含めて」。


「...」。


ジューンはそう問うと、ハリガネは険しい表情を浮かべて黙ったまま頷いた。


「なるほどね...。あと、これも知っているかもしれないが、デイと側近ホワイトはユズポン通りで目撃されたのを最後に姿をくらました。まだ何処かに潜伏しているという事も考えられたが、国外へ逃亡した事が明確になったんだ。その逃亡の件に関しては、さっき発覚したばかりなのだが...」。


「国外へ脱出したという事は...そうか。やはり、奴等は魔法陣を通って侵入したのか」。


ハリガネが神妙な面持ちでそう呟くと、ジューンは小さく頷いた。


「うん、ユズポン通りを隈なく調べていたらしいが魔法陣式の通路は見つからなかった。しかし、ユズポンから離れたクロズ市内の数か所に魔法陣式の通路が発見されたらしいんだよね~」。


「でも、どうやって侵入できたんだ? 王国を囲んでいる塀は魔術師の防壁を利用して建てたものだし、防犯対策を施してあるはずだ。奴等が直接的に魔力を使って魔法陣を書き込む事なんて不可能なはずだ」。


ハリガネが怪訝そうに首を傾げると、ジューンは掌の上に一枚の画像を映し出した。


ジューンの掌に浮遊する画像には一枚の石板が映し出されていた。


「ここに一枚の石板がある。その石板には魔法陣が魔力で描かれているんだ。つまり、ノンスタンスのメンバーはこの魔法陣から通り、クロズの人目につかない場所に魔法陣をいくつか設置していたと考えられている」。


「クロズの街は死角が多いし都合が良いかもな」。


ハリガネは画像を眺めながらそう呟いた。


「そして、ユズポン市内でも侵入したノンスタンスのメンバーが内乱を起こす前、ユズポン通り付近に魔法陣を描いて脱出するルートを押さえていたかもしれないな。ただ、ユズポン市内には魔法陣が確認されなかった。恐らく、デイ達が国から脱出した後に転送先から魔法陣を消去した可能性がある。しかし、クロズに消し忘れの魔法陣や残されていた魔法陣付きの石板が発見されたから、それで発覚したって話だな」。


「石板を処分しておかなかったのか。随分と間抜けだなぁ~。...いや、その石板を国内へ入れる事に俺が加担したという証拠のために残しておいた可能性もあるな」。


ハリガネがそう言うと、ジューンはその画像を消しながら頷いた。


「まぁ、この件は裁判で突っつかれるかもしれないね~。ただ、その魔法陣を調べたところソイ=ソース国の書体だったらしく、ポンズ王国公式の陣形ではなかったんだよ。そんな魔法陣が街の壁や至る所に貼られている事自体どう考えても怪しいよね~。そうなると、巡回している憲兵や魔術師がそれを見落としている事に関しての落ち度があるのは否めないけどね~。それとも、ただの落書きだと思ったのかな~? 」。


「いずれにせよ、石板自体は何者かの手によって出入国検問所を通して運ばれてきたという事か...。一体誰が...? 」。


ハリガネがそう言って考え込むと、ジューンは室内奥の地面に敷かれている魔法陣に視線を移した。


「おっとっ! そろそろ戻ってくるみたいだねっ! じゃあ、また隙を見てお邪魔するよ~。おやすみ~! 」。


ジューンはそう言うと、壁にある魔法陣へ飛び込み姿を消した。


そして、黄色く光る魔法陣もしばらくすると姿を消していった。


それと同時に、地面に敷かれた魔法陣からフォートナイトが姿を現した。


「いやぁ~!! 参ったっ!! 参ったっ!! 」。


フォートナイトが疲れ切った表情で足取り重く、ハリガネの方に戻ってきた。


「あ、おかえりなさ~い」。


「ふぃ~!! あ~!! 疲れた!! 何もなければここも楽なんやけどなぁ~。そう言うわけにもいかんなぁ~」。


「はははっ」。


ハリガネはフォートナイトと会話を交わした後、不意にジューンが通っていった壁に視線を送った。


(今回の内乱はノンスタンスだけの犯行ではないという事か...。一体、誰が...? デイの口振りだと、行方知らずとなっているクソ親父がバックについてノンスタンスを操っているとは言い難い。ノンスタンスに賛同するポンズ王国側の人間...一体何者なんだ? そして、ノンスタンスとクソ親父の関係性も気になるところだな...。もしかしたら、クソ親父はノンスタンスを従えて王国を乗っ取るつもりだった...? )。


ハリガネは険しい表情でその壁をしばらく見つめながら、自身の頭の中で様々な考えを巡らせていた。





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