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破離刃離☆勇者ハリガネⅡ~王国に仕える兵士として生きてきた戦士の俺、何故か王国の反逆者に...~  作者: 田宮 謙二


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門扉の向こうへ


カッカッカ~!!


わしはゴダイっちゅうもんじゃあ~!


前作では“勇者”とノンスタンス討伐に参加しとったわい~!


わしは元兵士じゃが、もう軍から除隊して今はしがない飲食店の配達員をしちょる。


しかし、世の中っちゅうのは不思議なもんじゃのぅ~!


昔は魔法使いのババアやジジイがスピードの全然出ない箒に乗ってたくらいじゃったのにのぅ~!


今となっては飛行する絨毯やら移動できる魔法陣やら魔法が進歩しとるのぅ~!


まぁ~、そんな軟弱なもんより何と言っても魔獣が一番じゃあ~!




~料理店“マーキュリー”配達員、ゴダイ~





「...」。


ハリガネは閉ざされている頑丈そうで巨大な門扉をじっと見つめていた。


(まずは日が暮れないうちに急がないとな...。本部と聖堂で結構時間食っちまったし、寝床の確保とか色々あるからな~。それに国外に出た先に広がる荒野の状況も気になるし...。う〜ん、パルメザンチーズ山脈手前のチェダーチーズ山まで今日辿り着けるかな~? )。


「お〜い! ハリボテ=ポップ氏~? 」。


ハリガネの視界にカノーがいきなり現れた。


「うお…っっ!? 」。


唐突の出来事に、ハリガネは驚きたじろいだ。


「おいおい~! そんな素っ頓狂な声を上げてどうしたのさ~? 」。


「あ、いや...。ちょっとびっくりしてしまって...」。


「...? 何だ一体...? まぁ、いいが...」。


カノーは咳払いをし、ハリガネに話を切り出した。


「さて、ハリボテ=ポップ氏~。だいたい察しがつくと思うが、ここがバルサミコス市の検問所さ~」。


「ほう、随分と静かで簡素な所ですな~」。


ハリガネは辺りを見渡しながらそう答えた。


バルサミコス検問所の周囲は寂れた木製の建物や何者かに破壊された石造の建物が建ち並んでおり、まるでゴーストタウンの様であった。


そして、閉ざされている門扉の近くには石造で円柱形状の小さな検問所が傍に設置されていた。


「まぁ、ここの検問所は王国周辺が危険地帯という理由で厳戒態勢が常時敷かれており原則閉門している。ここを通れるのは限られた関係者だけだ。それに、ここら辺は住民も少なくて普段から閑散としているのさ~」。


「そうなんですか~」。


ハリガネはカノーにそう相槌を打ちながら、再び辺りを見渡していた。


「そういう事でハリボテ=ポップ氏~。そろそろお別れの時が来たね~」。


「あ、わざわざ送っていただきありがとうございます」。


ハリガネは一礼すると、カノーは満足そうに高笑いをした。


「ハッハッハッハ~!! ノープロブレムさ~! たとえ、貴族と平民立場が違えど王国兵士としてお互い戦ってきた同志の国外追...旅立ちだからね~! このくらいは大した事ないさ~! アッハッハッハッハ~!! 」。


(コイツ、今ゼッテー国外追放って言いかけたな...? 最後の最後までムカつく奴だな...)。


ハリガネは目を細めて高笑いし続けるカノーに冷たい視線を送った。


「...と、まぁ冗談はこのくらいにしといて...」。


カノーは咳払いをしながら神妙な表情浮かべ、ハリガネに話を切り出した。


「君が知り合いに要請していた物資についてだが、既に国外を出た塀の辺りに置いてある。そして、武具も全て荷車に積んでシートにかけてある。()()()標的の“アルマンダイト”を討伐したら、その荷車に乗せて運びたまえ~」。


(コイツ...。()()()をあからさまに強調して言いやがって...。本ッッ当にムカつく...)。


ハリガネは不快そうに片眉を吊り上げてカノーを睨んだ。


「さて...」。


カノーは先程笑みを浮かべていた時とは打って変わり、真剣な眼差しでハリガネを見つめた。


「...ここからは重要な事だ。心して聞きたまえよ? 」。


「...! 」。


ハリガネは神妙な面持ちでカノーの話に耳を傾けた。


「先程も言ったが、このバルサミコスの検問所は原則閉門しているが、君を出国させるためにその門扉が今開かれようとしている。しかし、我々としては王国内に魔獣や山賊の侵入を許すわけにはいかない。特に、ノンスタンスの件もあったからね...」。


(...そんな緊急事態の最中、お前は団員引き連れてコメズ市内のレストランで油売ってたみたいだけどな)。


ハリガネは平静を装いながら、心の中でそうツッコんだ。


「あの門が開いた後に引き返そうとするのは当然の事、君は後方を振り向かずに門が閉まるまでその場を動いてはいけない。これは受刑者の攻撃や抵抗を防止するためだ。もし振り向いてしまった場合、その場で君を殺さなければいけない。王が君に国外追放処分を下したとしても国境を越えてしまえば君は国民ではなくなり、王の発令が無い限り永久に反逆者扱いとなる。つまり、国境を越えれば君は我々と敵対関係になるわけだ」。


(...開門した時に魔獣や賊人が襲撃してこないだろうな? )。


ハリガネの脳裏に微かな不安がよぎった。


「そして閉門が完了次第、国内からラッパの演奏音が聞こえてくる。そしたら動いてくれ。これも決まっている事なんだが、翌日以降は王国から五キロメートル以内近づいてはいけない事になっている。範囲内にいつまでも留まっていると、国外で警備をしている兵士に殺されると思うから早めに立ち去ってくれたまえ」。


「分かりました」。


「さて、僕の方からは以上だ。何か質問はあるかね? 」。


「いえ、無いです」。


ハリガネがそう即答すると、カノーは小さく頷いた。


「...分かった」。


カノーはそう言いながら閉ざされている門扉に視線を移した。


「門を出たら最後だ...。何か言い残す事はあるかね? 」。


カノーに問われたハリガネはゆっくりと口を開いた。


「たしか、今日って国民に外出禁止令が出てるんですよね? 」。


「...? ああ、そうだが...? 」。


ハリガネの問いかけにカノーは怪訝そうな表情を浮かべて答えた。


「それじゃあ、ブリッジさんをショッピングやドライブなんかに誘えませんよね? ()()記事にされちゃいますよ? 」。


「...っっ!! 」。


ハリガネがそう言って含み笑いをすると、カノーと団員達は動揺した様子で周囲を見回し始めた。


「...」。


現地の兵士達は気まずそうにカノー達から顔を背けた。


その兵士達の反応を見て悟ったカノー達の表情が、見る見るうちに暗くなっていた。


「わ、分かった...。言い残す事も無い...みたいだな...うん...」。


カノーは冷や汗をかきながら咳払いをしその場を取り繕った。


「あと、その場でできる事は限られているが、何かしたい事はあるかね? 」。


「何かしたい事?? 」。


「開門する前のささやかな配慮として、喫煙や飲水する時間くらいはあげてもいいよ~」。


カノーがそう言うとハリガネは、険しい表情を浮かべてその場で考え込んだ。


「あ~、煙草は吸わないし...。そうだ、飴玉ありますか? 」。


「飴玉...? 」。


カノーは困惑した表情でそう言いながら周囲の兵士達に視線を向けた。


「これでいいか? 」。


兵士の一人が白い紙に包まれた一個の飴玉をハリガネに差し出した。


「...」。


ハリガネは神妙な表情を浮かべながら、その兵士から差し出された飴玉に自身の鼻を近づけた。


「お...おいおい。毒なんか盛ってないぞ? 」。


苦笑する兵士に真顔のハリガネは首を横に振った。


「いや...。ミルク味か...と思って...」。


ハリガネはそう言うと、手渡された飴玉を物悲しそうな表情で眺めていた。


「他にもイチゴミルクとかメロンミルクとか...。あ、ブルーハワイミルク味もあるぞ? 」


兵士は両手に載せられた溢れんばかりの飴玉をハリガネに差し出した。


「いやいやっ!! そんなにいらないしっ!! しかも全部ミルクの混ざった味しかないじゃんっ!! 」。


「何だよ~、ミルク味嫌いなのか~? 」。


ハリガネが両手を突き出して飴玉を拒むと、兵士は露骨に不満そうな表情を浮かべた。


「いや、嫌いじゃないけど...。ミント味とか無いの? 」。


ハリガネがそう問うと、兵士は即座に首を横に振った。


「無い。ミント味嫌いだから」。


「そう...。じゃあ、これだけでいいわ」。


ハリガネはそう答えて一個の飴玉を口の中に放り込んだ。


「それじゃあ準備はいいかね~? ハリガネ=ポップ氏~! 」。


「はい、あと飴玉舐めながら出国してもいいですか~? 」。


ハリガネは口内で飴を転がしながらカノーにそう問いかけた。


「本来ならば高貴な僕に対する非礼になるわけなのだが...。まぁ、今回に限ってはいいだろう」。


「ありがとうございま~す」。


緊張感無さそうに感謝の言葉を述べるハリガネの様子を見て、カノーは何度か頷きながら門扉を一瞥した。


「よしッ!! 皆の衆ッ!! 」。


ザァ...ッ!!


「...? 」。


カノーが号令をかけると兵士達は、ハリガネと門扉の間に花道を作った。


「こ、これは...? 」。


ハリガネは兵士達の行動に困惑し、カノーに視線を向けた。


「ハリボテ=ポップ氏、君の犯した罪は一人の兵士としても一人の民としても決して赦されるものではない。ただ、最前線の歩兵部隊の兵士として、そして王国のために戦い続けてきた戦士に対して払える我々なりの敬意さ。いくら罪人とはいえ、君は傭兵として最後まで戦士の活動を全うしたわけだからね」。


「...」。


ハリガネはカノーの言葉を聞くと、神妙な面持ちで兵士達の方に向き直った。


(この気持ちは久しぶりだな...。出征の時も国旗を振って声援を上げる国民や防衛部隊に見送られたもんさ...)。


ハリガネが兵士達を懐かしそうに眺めていると、カノーがハリガネの両手を掴んだ。


「さて、手錠を外すよ~」。


カノーはそう言いながらハリガネの両手首を固定している光輪を魔法で消去した。


「...よしっ! 」。


ハリガネは自由になった両手の手首を回して感覚を軽く確かめた。


「特に問題はなさそうだな~」。


ハリガネは両手で自身の頬を軽く叩いて気合を入れ、晴れ晴れとした表情を浮かべた。


(一丁、テンション上げるか...)。


ザァ...ッ!!


ハリガネは直立不動で兵士達に敬礼した。


「元ポンズ王国軍歩兵第一部隊“ガレージ”下ポップ小隊長ハリガネ=ポップッッ!! 王の御下命により“アルマンダイト”討伐のためパルメザンチーズ山脈へ出陣しますッッ!! 」。


ハリガネの張り上げた声に兵士達は顔を強張らせた。


「私ッッ!! ハリガネ=ポップッッ!! 大義を成し遂げるためッッ!! 必ずや討伐した“アルマンダイト”共に本国へ生還致しますッッ!! テンポ=ジャイアン国王陛下ッッ!! 万歳ッッ!! 我らが誇る王国ッッ!! ポンズ王国ッッ!! 万歳ッッ!! 」。


ザァ...ッ!!


ハリガネが言い終えると、兵士達も敬礼でそれに応えた。


カノーは苦笑しながら敬礼するハリガネを見つめた。


「手土産にしては大き過ぎないか...? 」。


「...その時が来たら運ぶの手伝っていただけませんかね? さすがにアレを一人で運ぶのは無理なので」。


ハリガネは敬礼しながら後方にいるカノーに一瞥してそう答えた。


「分かった、手配しよう...。重ねて言うが門が開いた後、後方は振り向くなよ? 旅立つ前に死ぬ事となるからね」。


「はい」。


「それでは、ハリガネ=ポップ氏...。アディオスッ! 」。


「サクラダ卿もお元気で」。


「うむ...」。


カノーはハリガネと握手を交わして手を挙げた。


「開門ッッッ!!! 出入口の安全確保クリアッッッ!!! 」。


キィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッ...!!


カノーが大声で号令をかけると、鉄の門扉がけたたましい軋み音を出しながらゆっくりと横に開いた。


扉の隙間から茶色い土で覆われた地面と、枯れ木が目立つ荒れ果てた野原が視界に現れた。


門扉が開かれると、花道に立っていない兵士達は出入口付近の安全確保に動いていた。


「クリアッッ!! 」。


国外を警戒していた兵士達は、そう叫んで王国内に戻ってきた。


(さて、行くか...)。


ハリガネは敬礼の姿勢を保ったまま、同じく不動で敬礼する兵士達の花道を歩いた。


「...」。


顔は動かさずに自身の両目をしきりに動かし、敵が襲ってこないか警戒していた。


(あばよ...ポンズ王国)。


敬礼する兵士達を平然と横切りながら、ハリガネは遂に王国の門を通り抜けた。


「執行完了ッッッ!!! 閉門ッッッ!!! 元受刑者はそのまま静止せよッッッ!!! 」。


キィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッ...!!


カノーの号令がかかると、再び軋み音が辺りに鳴り響いた。


ガゴォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン...ッッ!!


そして、敬礼を保ったままのハリガネはカノーや兵士達に背を向けたまま、再び閉ざされた門扉の向こうへと消えていった。





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