教団の存在
フフフ...。
最近、出番がなくて寂しかったんだ~。
さて、今回は何を話そうかな~?
え??
『度々話に出ている“魔族”って何なの?』、だって??
まぁ、俺も以前オリーブオイル国の事を話したと思うんだけど、魔族は人間と魔獣の混血族の事であるとポンズ王国では認識されているね~。
国によっては魔人とか魔民族とか異なる呼び方をしているらしいよ~。
魔族は人間と異なって翼や角が生えていたり、独特の魔法が使いこなせたりするらしいよ~。
~軍の関係者? 自称、遊び人ジューン~
「話はちょっと遡るが、ハリガネ=ポップ氏が反逆罪で軍法会議にかけられる時に死刑制度に反対していたポンズ教団が王国軍に対して抗議を行った。国家反逆罪は国王に背く重罪で、万死に値するという観点から死刑はまず逃れられない。実例もほとんどが死刑判決だ。そんな憂き目に遭っていた彼の死刑や拘束に対して教団は猛反発し、ハリガネ=ポップ氏の無実と死刑廃止運動を教会各地で展開した。ユズポン大聖堂もその運動に参加してたんだよね...? 」。
カノーはそう言って主任に視線を移した。
「え、ええ...。私達は死刑制度の廃止を求める立場ですし...」。
主任は申し訳なさそうに、うつむきながらそう答えた。
「私は立場的に王国配下に置かれた軍の人間だが、君達の思想やポンズ神の教えを侵害するつもりは全く無いよ。それに騎士団は教団との関りが深いから、君達の声を疎かにするわけにもいかないからね~」。
「王国と教団の橋渡しですか~。それは大変ですなぁ~。近年は色々と揉めてよく問題になってますしね~」。
ボックスがそう相槌を打つと、カノーは肩をすくめて苦笑した。
「本当に中間管理職みたいな立場で、高貴な騎士も大変なのさ~。それで、今回も軍の独断により、国防に参加した傭兵の立場であるハリガネ=ポップ氏に全ての責任を押し付けようとしていると教団は王国軍を痛烈に批判していた。不当な軍法会議だとか軍の横暴だとね。もう教団へのフォローが大変だったよ、本当に...」。
カノーは少し間を置き、おどけた表情を浮かべて首を横に振りながら話を続けた。
「それで、教団側に何とか納得させるため老朽化と地下の漏水が問題になっていたこの施設の改善と、王国への抗議の意という名目でハリガネ=ポップ氏の墓地の建立を提案したんだ。墓地の提案に関してはその場しのぎの口実に過ぎなかったんだが...。その提案を教団側は承諾しただけではなく、この地下の工事費やその他に必要な諸費用まで負担する旨を申し出てきたんだ」。
「負担? 彼の墓地の費用もですか? 」。
ボックスがそう問いかけると、カノーは神妙な表情を浮かべたままゆっくりと頷いた。
「我々にとっても、その申し出は予想外でね。教団側にどういう意図があったのかは分からないが、これで王国と教団は一瞬即発にならずに済んだという事になったんだ」。
「そんなに国家と教団って関係が悪かったんですか? 」。
ハリガネが問いかけると、カノーは手で自身の頬を撫でながら考え込んだ。
「まぁ、あんまり関係は良くないかな~。近年は熱心なポンズ教の信仰者が国内外問わず急激に増えているんだ。それで教団下にある各地の教会や聖堂が献金で大分潤っていると耳にした王様が、教団への税金導入を先月王の権限で決定しちゃってね~」。
「ああ、あれは国会の方でもかなり荒れましたよね~」。
ボックスがそう相槌を打つと、カノーは溜息をつきながら頷いた。
「あれには参ったよ...。聖職支持派は凄まじい勢いで猛反発してたからね~。いや、当たり前なんだけど...。まぁ、王様も独断で執行する事があって、特に教団への当たりは強いからね~。さすがに教団も色々と我慢できなかったんじゃないかな...? まぁ、教団が憤るのも無理ないと思うんだけどね~。ただ、教団の事情は我々の方でも把握できない部分がたくさんあるしね~」。
カノーがそう話をしていた時...。
ザワ...ッッ!!
「...ッッ!? 」。
ハリガネ達は背後から何者かの気配を感じ取って辺りを見回した。
「憤り...すなわち怒りとは身を滅ぼす悪の炎と化します。私達は王国に遺憾の意を示しているわけであって、怒りを他者にぶつけてはいけない。それに、ポンズ教が国教であるとしても、国家も王の支配下で成り立っています。神に服従する信仰者の我々と王に服従する民、神の下にある教団と王の下にある王国が相まみえないのは当然の事です」。
墓地の周囲を囲む一か所の柱の陰から、低く厳かな声と共に数人の黒いローブを身に纏った修道士らしき者達が姿を現した。
「アっ!! アングリー神官長っっ!! 」。
修道士らしき者達と共に白い祭服を纏った坊主頭の神官長が、柱の陰から姿を現すと主任は目を丸くして声を上げた。
アングリー神官長が姿を現すと、墓地の花飾りをしていたブリッジやコブシも他の修道女達と同様に姿勢を正しくしその場に佇んだ。
「セブンス主任、元気にしてるかい? 」。
日焼けした様に黒ずんだ顔のアングリー神官長は、主任に微笑みながら声をかけた。
(神官長...? )。
ハリガネは怪訝な表情を浮かべてアングリー神官長を見つめていた。




