法律事務所“モアーデリシャスコンボ”
憲兵は街中を巡回したり、事件が起きた時に出動して活躍する軍事警察というイメージがあるわな。
ポンズ王国の憲兵は全国各地に存在する警察署や派出所の中で公務し、治安維持のために活動している組織なんやな。
え? 王国兵士と憲兵の違い??
憲兵は管轄区域の治安維持を義務とする事に対し、王国兵士は事件発生の際に王国軍の出動指令があれば管轄区域関わらず出動する義務があるという事やな。
また、憲兵は全国各地の警察署や派出所が公務先であるのに対し、王国兵士は都市ユズポンを含めた王国内に存在する数ヶ所の基地とポンズ王城が公務先となっている。
あと、憲兵は国民に対し逮捕権を有しているのに対し、王国兵士は内戦が勃発等といった緊急時を除いて逮捕権を有していない。
本部の王国兵士はもともと戦時中においては戦闘部隊という事もあり、組織も部隊も複雑な上に兵数も多いから職権乱用を防ぐために通常は逮捕権を与えていないという経緯がある。
え? 『そういえばハリガネも前作で王国兵士に逮捕されたよね~』って?
おう! ちなみに彼を逮捕した兵士は、特殊治安部隊という特別な立ち位置の部隊に配属されている兵士だ。
特殊治安部隊は王国軍の中でも名の通り特殊な組織であり、通常時でも逮捕権を有している兵士の部隊だ。
まぁ、我々憲兵の中でも出世といえばこの部隊があてはまるだろう。
~ユズポン警察署留置管理課、憲兵伍長フォートナイト留置担当兵~
ハリガネがユズポン警察署の留置場に勾留されて一日が経った。
そして、その日の夕方はハリガネに会うためにある面会者が訪れていた。
ハリガネが面会室に入ると、既に二人の男が椅子に座って待っていた。
一人はサイドに刈り上げトップをオールバック気味に整えた黒い短髪に、顎髭を整えた恰幅の良い中年の男性であった。
その男はプロレスラーがプリントされている半袖のシャツにジーパン姿で、ずっと厳つい面持ちのまま腕組みをして室内に入ってきたハリガネを見つめている。
もう一人の方は落ち武者ヘアーでサングラスを着用し、全身黒タイツといういかにも不審者にしか見えない男であった。
「あ~、君はポッキー派? プリッツ派? 」。
全身黒タイツの男がアクリル板越しからハリガネに話しかけてきた。
「...え? 」。
面を食らったハリガネの反応を見た半袖の男が、一回咳払いをして話を切り出した。
「あ~、コイツは『私があなたの弁護を担当する弁護士のギャグと申します。罪状は国家反逆罪に基づいた密告,軍事組織妨害,内通,領域内侵入教唆等々...。それで、国家反逆罪って事で裁判は軍法会議で判決が下されるみたいだね』、と言っとる。すまんの~、コイツ言語が上手く喋れへんねん。せやからコイツの通訳が必要ちゅう事で、コイツの言ってる言葉が分かる俺がこれから訳していくからな。それと、俺の名前はジュードー。ジュードー=カシンっていうんや。よろしくな~。ちなみに俺ら“モアーデリシャスコンボ”っちゅう同じ法律事務所に所属してる弁護士や」。
ジュードーはそう言ってハリガネに軽く手を振った。
(べ、弁護士ぃ~!? )
出で立ちといい二人共あまりにも個性的な風格をしており、本当に弁護士なのかハリガネは少し疑っていた。
「は、はぁ...。せ、先生は外国の方なんですね...」。
「いや、コイツはポンズ王国出身や。ただな、学生の頃に宇宙人にさらわれたらしくてな。それから、奴等のアジトで気の狂うような拷問や改造手術を受けたらしくて...。その出来事での後遺症でよう喋れんようになってしもうたらしいんや...。可哀想な奴やで...」。
「...」。
神妙な面持ちで話すジュードーを白い目で見るハリガネ。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォッッッ!?!? シャリの上に板チョコ載っけてハーシーチョコレートソースかけるのが俺の夢ぇぇぇぇえええええええええええええええええええええッッッ!!! 」。
急にギャグが狂ったように頭を振りながら大声を上げた。
「...ッッ!? 」。
ハリガネはギャグの大声と行動に驚いて身構えた。
「『友人のミドル君から差し入れ預かってきたから留置場の方へ渡しておくよ。国家反逆罪の疑いがかかってる人間は、外部からの密告や内通の恐れを防ぐために弁護士以外の面会は認められてないからね。あと文通も同様に禁じられているんだよね』、と言っとる。ところで、今日の午前中は軍の法務部の方で取調べを受けたらしいな。何か言われたか? 」。
「あ...。は、はい。僕がノンスタンスと内通していると拘束したノンスタンスのメンバーが証言しているようです」。
ハリガネがそう答えると、ジュードーは深く頷いた。
「ポンズ王国治安保護法第六百六十六条ッッ!! カレーライスには福神漬けを添えなければならないッッ!! 」。
「『念のために確認しておくが、ノンスタンスとの関りは持っていないという事で良いね? 』と言っとる。あくまでも、ゴリラ兵士とノンスタンスを撃破するために共闘したという事やな? 」。
「はいっ! ノンスタンスは親交はありませんっ! 傭兵として防衛のために現場へ出動したのであって、ノンスタンスと共闘も内通もしていませんっ! もちろん、国家に危機を及ぼす事も国に対するクーデターも考えていませんっ!! ノンスタンスのメンバーも軍も言ってる事はほとんどデタラメですっ!! 」。
ハリガネがハッキリと答えると、ジュードーは再び頷いた。
「チェロとコントラバスの違いがよう分からんけど、君には分かるぅ~? 」。
「『傭兵として現場へ出動しただけで王国に対して危害を加える事はしていないし、するつもりもなかったと...。分かりました...。あまり時間は無いとは思いますが、裁判までにしっかり準備しておきましょう。今日は午前からずっと取調べで疲れていると思うので、今回はこの辺で失礼するね。じゃあ、これからお互いに頑張りましょう』、だそうだ。あと供述調書の確認はしっかりな。調書がデタラメだったら署名するなよ? それじゃあ、おやすみ~」。
ジュードはそう言ってハリガネに軽く手を挙げ、椅子から立ち上がり背伸びをした。
「野戦士ィィィィイイイイイイイイイイイイイッッッ!!! 野戦士ィィィィイイイイイイイイイイイイイッッッ!!! 」。
ギャグは突然そう叫び始め、ほふく前進しながらジュードーと共に退室していった。
(何か...。めっちゃくちゃ不安なんだけど...)。
ハリガネは早くも絶望を感じながら二人を見送った。




