聖なる力と未知なる力
どうも~。
ミイラ隊長と一緒に“慈愛の囲い”っていう組織で活動してます~。
副隊長のカッパです~。
僕もミイラ隊長と一緒に前作で登場してたんだ~。
みんなは覚えてるかな~。
僕もゴリラ隊長に殺されかけたんだよね~。
おかけで僕もミイラ隊長も病院送りにされちゃったり、未だに全身は包帯でグルグル巻きにされたまんまで散々だよ~。
これは余談なんだけど、ミイラ隊長は退院した翌日にお見合いがあったらしいよ~。
全身に巻いた包帯がまだ取れてないから、そのまんまの状態でお見合いしたらしいんだ~。
そしたら、ゾンビか魔族と間違えられて相手が逃げ出しちゃったらしいよ~。
なんか、可哀想だね~。
~“慈愛の囲い”カッパ副隊長~
ポンズ王国防総省内にある教誨室。
ハリガネはポンズ教の聖職者であるノレー神官から教誨を受けている最中であった。
本来、ポンズ王国においての教誨とは刑務所に収監された囚人等に対し、今までの過ちを悔い改めさせ徳を養えるよう道を説く事をいうのだが...。
「“エンドレスレイン”...。君は“エンドレスレイン”を体験した事はあるかい? 」。
「い、いや...(“エンドレスレイン”...? 止まない雨って事か? つーか、何だそりゃ?? )」。
ハリガネは困惑した表情を浮かべながらも、ノレー神官にそう答えた。
「実際、“エンドレスレイン”は存在しない。やがて、レインは止み、スノーも止む。そしてロングに渡って続いてきた戦争もエンドを迎えた。そう! サッドネスな事も、いつかはハッピネスにチェンジッッ!! ジェフやヴェルディだってジェイワンにワンモアカムバックッッ!! 世の中に不可能はナッシングッッ!! ラブアンドピースッッ!! 」。
ノレー神官はそう説くと、ハリガネに向かってドヤ顔を見せながら白い歯を輝かせた。
「うぅ...。なんて素敵な話なんでしょう...」。
「あぁ...。幸せな気分になるわ...」。
そして、ノレー神官の教誨を聞いていた修道女達は静かに涙を流していた。
「...」。
その一方で腑に落ちない顔をする男が一人。
(何...? 俺がおかしいの? この神官の言ってる事が全然理解できないんだけど...? 何でみんな泣いてるの? 俺が捻くれているだけなの? 俺の心が汚れてるの?? )。
ハリガネはノレー神官の話を聞きながら心の中で自分自身にそう問いかけていた。
しかし、ノレー神官の言葉が心に響いていなかったのは、ハリガネだけではなかった。
「ククク...ッ! ウクク...」。
ボックス含めた兵士達はハリガネ達から顔を背け、必死に笑いを堪えていた。
そんな中、修道女組であるコブシとブリッジの二人だけは真顔で口をポカーンと開けたまま、不思議そうな顔でノレー神官の話を漠然とした様子で聞いていた。
まさに、心ここにあらずといった感じであった。
「“ミスターブレイヴ”ッ! 貴方はこの王国にギルティを受けてしまいましたが、この王国のためにファイトし続けてきました。ミスターブレイヴのパッションは私達の胸にいつまでもメモリーしています」。
(ミ、“ミスターブレイヴ”...? 勇者って事?? おかしいなぁ~? さっきハリガネって自己紹介したのになぁ~? )。
ハリガネは小首を傾げながら目の前にある聖書を眺めていた。
「さて、それではミスターブレイヴの新たな旅立ちを皆さんでお祈りいたしましょう。それでは...」。
ノレー神官と修道女達は瞳を閉じ、指を組んで祈りを捧げる姿勢を整えた。
「エヴリワンッッ!! ミスターブレイヴッッ!! ポンズ神のご加護があらんことをッッ!! トゥギャザーしようぜッッ!! 」。
ノレー神官は再びハリガネにドヤ顔を向けて白い歯を輝かせた。
「ポンズ神とウィズッッ!! トゥギャザーッッ!! 」。
修道女達もノレー神官に続いて祈りを捧げた。
(だから、トゥギャザーって何だよっ!? それに、一文一文読み終わる度に俺の方へ向けるあの神官のドヤ顔は一体何だよっ!? )。
ハリガネは周りに合わせて祈りながら平常心を装いつつ、ノレー神官の独特なアクションに対して心の中でそうツッコんでいた。
そして、祈りを捧げ終えたノレー神官は椅子から立ち上がり、ハリガネの方へ歩み寄った。
「さて、最後になりますがミスターブレイヴ...。旅立ちの前に神のラブとして、今から私の魔力を貴方に注ぎます。そうッッ!! “魔力は神の愛の中に”ッッ!! 」。
ノレー神官は声高らかにそう言いながら、椅子に座っているハリガネの頭上に自身の手をかざした。
「あ、神官様、僕は戦士なんで魔法は使わないんですが...」。
ハリガネがそう言うとノレー神官は微笑んだまま、ゆっくりと首を横に振った。
「ノープロブレム、ミスターブレイヴ。神のラブに魔術師も戦士も関係ないさ~」。
「は、はぁ...」。
「まぁ、儀式みたいなもんや~。特に実用的な意味合いは無いで~」。
コブシがノレー神官に代わってハリガネにそう説明した。
「あ、そうでしたか...」。
「それではレッツスタート~!! 」。
ハリガネの頭上にかざしたノレー神官の手が、黄色く光る魔力に包まれた。
シュァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!
そして、その手から黄色い光線が放たれ、ハリガネの頭上に命中した。
(こ、これが魔力か...っ!? )。
魔力の光線を受けたハリガネの身体は、ノレー神官の黄色い光に包まれた。
その瞬間...。
パァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!
乾いた破裂音と共に、ハリガネを包んでいた黄色い光はまるで火花の様に四方八方へ飛び散った。
「うおっ...!? 」。
ハリガネや修道女達は破裂音に驚きたじろいだ。
「ま、魔力を跳ね飛ばしたで~!? 」。
ボックスも驚いた様子でハリガネを見つめていた。
「ほ、ホワ~イッッ!? 」。
ノレー神官も目を丸くして驚愕していた。
「な、何やっ!? 自分、魔法使えたんかっ!? 」。
「い、いやいやっ!! 全く使えませんよっ!! 」。
ボックスの問いかけに、ハリガネは激しく首を横に振って否定した。
「せやかて、神官様の魔力を跳ね除けるなんて普通考えられんて~! それに、魔力を持たない人間が魔力を跳ね返す事なんかでけへんで~? 魔力は適性が無い人間でも、普通は体内に吸収されるはずなんやぞ~? 」。
「え? 魔力って、そういうもんなんっすか? 」。
「あ、そういえば勇者君は広場でブリッジちゃんの魔力を受けたと思ったんだけど~、あれも跳ね返されてたのかな~? あの時は何にも感じなかったんでしょう~?」。
「広場...? 」。
カッパ副隊長がそう問いかけると、ハリガネは瞳を閉じて当時の事を思い出そうとしていた。
「ほら~、広場の中央にステージあったじゃ~ん」。
「ああ!! 広場の時か!! 」。
「そうそ~」。
「ん~、そうっすね~。確かに、何にも感じなかったですね~」。
ハリガネがそう答えると、ボックスは腑に落ちない様子で険しい表情を浮かべた。
「ホンマか~? 魔力には適性の無い人間にもヒーリング効果が得られるはずなんやぞ~? 」。
「ヒーリング?? それって回復とか治療魔法とかそういう感じですか? 」。
ハリガネがそう問いかけると、ボックスは首を横に振った。
「ちゃうちゃう、勿論そういう専門の魔法はある。せやけど、魔力は魔法を生み出す他に魔力を体内に取り入れる事によって、人間の疲労を癒したり元気にする効果があるんや。本来、魔力の注入は不足してしまった人間に対して補充する手段やったんやけどな~」。
「ほう~、魔法を使わずに魔力単体でもそんな効力が...」。
ハリガネは腕組みをしながら納得した様子で何度も頷いていた。
「あ、あり得ない...。そ、そんなバカな...。せ、聖なる魔力が...跳ね返された...だと...? 」。
呆然としているノレー神官は、冷や汗を滴らせながら身体を震わせてそう呟いた。
「しっかし、ポンズ教の聖職者...ましてや神に仕える神官の魔力が跳ね返されるとは...。こんな光景初めて見たわ~」。
ボックスは表情を曇らせて困惑しながらそう言った。
「何にも感じなかったって事は、あの時も魔力を跳ね返したという事なんだね~。でも勇者君は魔力が出せないはずなのに、何だか不思議だね~」。
カッパ副隊長はそう言いながら両腕を組みつつ、不思議そうな様子で首を傾げた。
「の、ノレー神官...? 」。
主任は痙攣した様に身体を震わせているノレー神官を心配して声をかけた。
「ホ...ホ...」。
ノレー神官の身体の震えが次第に大きくなり...。
「ホォォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!! リィィィィイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!! パァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! ワァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 」。
そして、急に大声を張り上げながら凄い剣幕で、ハリガネに向けて自身の両手を突き出した。
「な...っ!! 何だ...っ!? 」。
逆上したノレー神官に驚いたハリガネは、椅子から勢い良く立ち上がって身構えた。




