ハリガネは敬虔なポンズ教信仰者ではありません
なんやぁ~! また登場人物不足かぁ~??
まぁ、ええけど。
ん...? 『この話はよく兵士が登場するけど、どうしてポンズ王国は兵士がそんなに多いの? 』って?
う~ん、他の国と比較したことないから分からんなぁ~!
でも、ポンズ王国は民間の労働者の方が多いって気がするけどなぁ~。
あと、ポンズ王国軍では組織や部隊によるけど、縮小してるところもあれば強化しているところもあるしな~!
話が展開されていくにつれて、魔法を用いた製造業とか建設業とか...。
まぁ、この先も新たな分野が続々と出てくるかもしれんなぁ~!
~ポンズ王国ユズポン軍事刑務所、軍曹ボックス=シニア刑務官~
ハリガネが神妙な表情を浮かべながら考え事をしている時、職員とすれ違う形でセタガヤ国防長官が数人の兵士達を引き連れて入室してきた。
「ほぉ~、何やら楽しそうにお話をしていましたね~」。
軍法会議で見せていた厳かな態度の時とは打って変わり、セタガヤ国防長官は朗らかな表情を浮かべながらハリガネに微笑んだ。
「いやぁ~、ちょっと懐かしい仲間が会いに来てくれましてね~」。
「ええ、さっき職員と通路ですれ違いましてね~。とても嬉しそうでしたよ~」。
「はははっ! 」。
ハリガネは照れ臭そうに笑った。
「さて、それじゃあ始めましょうか。...では、こちらへ」。
セタガヤ国防長官はハリガネにそう言いながら、腕に抱えているファイルから一枚の紙を取り出した。
ハリガネはボックスに促され、神妙な面持ちでセタガヤ国防長官の正面に立った。
「ええ~、上甲に係るハリガネ=ポップに対する本王国追放の件は、裁判官言渡しのとおり執行せよ。ポンズ国王、テンポ=ジャイアン」。
セタガヤ国防長官はハリガネにそう告げると、読み上げた書類を再びファイルの中へ納めた。
「ハリガネ=ポップさん、貴方とは今日でお別れとなります。この国から出た瞬間に貴方はポンズ王国の民ではなくなり、身分も一切保証されなくなります。処分執行以降、本国は勿論の事ですが本国との友好条約を締結している諸国への出入りも禁止となります。もし、刑を執行後に貴方を本国内及び周辺区域に見つけ次第、そのまま拘束し処刑もしくはその場で“正当に殺害”します」。
(“正当に殺害”ってパワーワード過ぎるだろ...)。
ハリガネはそう思いながらも笑いを堪え、平常心を装いながらセタガヤ国防長官の話を神妙に聞いていた。
「え~、ただし軍法会議後に説明があったように、この追放処分には条件が含まれております。国王陛下の権限により魔獣“アルマンダイト”討伐を完遂した場合は、国外追放処分の刑を満了したものとみなされて貴方の身分も復活します」。
「...」。
ハリガネはセタガヤ国防長官の話を聞きながら、自身の頭の中で考え事を始めていた。
(裁判前だったり色々と準備する事があったから、あんまり気に留めてなかったけど...。今、冷静に考えてみたら“奴”がパルメザンチーズ山脈に行く事はだいたい想像できた事だったか...。最初は追放された足で何で山脈へ向かったんだって思ったけど、昨日“奴”と“アルマンダイト”の因縁をオッサンに話した時に色々と思い出してきた...)。
ハリガネがそう考えを巡らせながら小さくため息をついた。
(そりゃあ、そうだよなぁ~。立場が無くなって身軽になったわけだし、何よりもクソ執念深い畜生アンド外道悪魔だ。まぁ、パルメザンチーズ山脈へ真っ先に向かうわな...。でも、一人であの怪物の討伐はさすがに無理だろぉ~。“奴”の残骸もあったみたいだし、やっぱり“アルマンダイト”に食われちゃったかな...? まぁ、それは心底どうでもいいけど...)。
ハリガネの考え込んでいるのを余所に、セタガヤ国防長官の話は続く。
「あと、王国に残してある財産等に関する処分関係の手続きと遺言書作成は、後々別室の方で行ってもらいますので。それと、前もって用意されている武具や持っていく物に関しては、出国するまではお渡しする事が出来ません。詳細に関しては、出国する際に誘導していく兵士から説明がありますので心配なく。...何か、他に気になる点はありますか? 」。
「いや、特に無いです」。
ハリガネは即答すると、セタガヤ国防長官は小さく頷いた。
「そうですか、それでは最後になりますが...。ここで何か言い残す事はありますか? 」。
「う~ん」。
セタガヤ国防長官の問いかけに、ハリガネは瞳を閉じてしばらく考え込んだ。
そして、頭の中で整理がついたハリガネは目を開けて話を切り出した。
「あ~、まずは軍や親しかった人達には本当にお世話になりました。そして“ガレージ”の件では国民と軍に多大な迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。ただ、神に誓って王国に対し国家転覆を目論んで出動したわけではありません。あくまでも国防のためですが、今回の件はノンスタンスへの通報を怠っていた事もあり自身に非があるという事は否めません」。
ハリガネはそう話を終えると一旦間を置き、ゆっくりと再び口を開いた。
「そして、王国を危機に晒してしまう最悪の結果となってしまいました。除隊したとはいえ、今日まで王国剣士の一員として従事してきた身としては恥すべき出来事であったと反省しています」。
ハリガネはそう言って、セタガヤ国防長官に頭を下げて謝罪の意を示した。
それを受けたセタガヤ国防長官は小さく頷きながら、神妙な面持ちで黙々とハリガネの話を聞いていた。
ハリガネは再び間を置いた後、変わらず淡々とした口調で話を続ける。
「この度、刑を受ける“アルマンダイト討伐”が、兵士であった自分ができる王国への償いであると思っています。国王陛下の寛大な裁きを心より感謝致します。今回の反省を忘れずに王国から去っていきたいと思います。本当にありがとうございました」。
ハリガネは終始毅然とした態度で話し終え、最後にも深々と一礼した。
「...はい、その気持ちをこれからも忘れずに生きてくださいね。さて、私の方からも以上...あ」。
セタガヤ国防長官が不意に後方に控えている兵士達の方へ振り向き、二三の言葉を交わして何か確認をしていた。
「そうそう、ハリガネさん。聖職者の教誨についての事なんだけどね。確か君が王国軍に仕えてた時の同僚は今、修道院で生活しているらしいじゃない? その元同僚が君にお別れの挨拶をしたいのと、修道院のみんなと賛美歌で見送りたいという申し出が修道院経由で軍の方にあったらしくてね~。王国から離れる前にちょっと聞いていったら? 」。
「あ、はい...」。
「それじゃあ、この後の順序がちょっと変わっちゃうけどそのまま教誨室の方に行ってください。先に神官からの教誨を受けて、その後に賛美歌っていう流れになると思うので。手続きとかは教誨室で済ませられるよう手配しておくので心配なく」。
「あ、分かりました」。
「さて、それではお別れですね。ハリガネさん、いってらっしゃ~い」。
「あ、ありがとうございましたっ! 」。
ハリガネはセタガヤ国防長官に再度深々と頭を下げて感謝の意を示した。
セタガヤ国防長官は笑みを浮かべながらハリガネに軽く会釈して応え、付き添いの兵士達と退室していった。
(...? 同僚だった修道院の人間?? 誰だっけ?? )。
「ほな、行こうか~! 」。
「あ、はい...」。
腑に落ちないハリガネは、ボックス達に促されながら教誨室へ移動する事にした。




