“恐戦士”の野望
おおっ! 登場人物不足で前書き担当する人が重複しちゃって大変なんやってなぁ~!
とは言っても、俺も言う事なんてあるかな~?
え? ポンズ王国について?
ああ、ポンズ王国か...。
ポンズ王国は国王を一国の主とした国王君主制なんや。
王国は法律に基づいて統治されている法律国家なんやけど、国王の執行権は法的効力を上回る。
そこは絶対王政の特色が出てるな~。
あくまでも王様は命令は特別って事や。
~ポンズ王国ユズポン軍事刑務所、軍曹ボックス=シニア刑務官~
「当時“奴”の部隊で同行してた奴等から聞いたんだけど、まず“奴”の態度がいきなり優しくなった事に凄い驚いていたそうだ。それはそうだわな。今まで理不尽な言動や蛮行で軍内を振り回してきたり、隊員を散々ゴミや奴隷みたいに扱ってきた“カス”だ。しかも今までの非礼に関しても詫びてきたというね」。
「なるほど、まずは姿勢や行動といった立ち振舞いで態度を改めていったように見せていたわけかな~? 」。
ジューンがそう相槌を打つと、ハリガネは頷きながら話を続けた。
「悪魔の微笑み程怪しくて恐ろしいものはない。ソイ=ソース侵攻する前は、毎日のように隊員達と食事を共にし、積極的にコミュニケーションを取るようにしていたそうだ。俺は別の部隊にいて基地から離れてたから“奴”の行動なんてほとんど知らなかったんだけどね...てか、知りたくもなかったし」。
「確かに、今まで自分達をぞんざいに扱っていた上官の態度が急変したら逆に怖いよね~」。
「最初はもちろん戸惑ったらしいんだが、最終的には打ち解けて良好な関係を築けて隊内の雰囲気も良かったようだ。そして、出征当日、“奴”は千人近くの大隊を率いてソイ=ソースへ侵攻する事になった」。
「侵攻が上手くいってソイ=ソース領域の一部を手に入れる事に成功したんだよね~。確か、当時のソイ=ソースは共和国じゃなくて皇帝を君主とした帝国国家だったんだよね~」。
「そっ! それで“奴”は侵攻した街の酒場で、酒や食材を大量に購入して侵攻先の街で酒盛りをしだして...」。
「ち、ちょっと待ってっ!! 」。
ジューンは慌てた様子でハリガネの話を途中で遮った。
「えと、話の内容に色々と追いつかない部分があるんだけど...。酒と食材を購入? 」。
「うん」。
「侵攻した敵地で...? 強奪じゃなくて?? 」。
ジューンがそう問うと、ハリガネは頷いた。
「そこが“奴”のしたたかな所なんだ。“奴”は侵攻した敵国の民衆をみだらに虐殺しない。まぁ、歯向かってきた人間には容赦しないと思うがな。それで“、奴”が率いていた前線部隊は騎兵隊と共に防衛に回っていた敵軍兵士を撃退し領域の侵攻に成功したが、敵国ソイ=ソースの市街地に占領する事は“奴”の想定内だった」。
「想定内...? 」。
ジューンは顔をしかめて呟いた。
「領地を占領して“奴”はその後小隊を引き連れて現地の酒場や店舗を一通り立ち寄り、そこで大量の物資を買い漁った。しかも、ただ買うだけじゃなくて“奴”はソイ=ソース国内でなかなか入手できない物資を運搬しながら出征していて、それを現地の住民のためにプレゼントしていたらしい」。
「ほぉ~!! 母国では“恐”戦士と呼ばれている男がなぁ~!! まるで戦場のサンタクロースみたいやないかぁ~!! 」。
ボックスがそう言うと、ハリガネは苦笑交じりに頷いた。
「サンタクロースみたいだよ、本当に。そして“奴”は占領した区域の政治や経済事情のデータも当たり前なんだけど予め分析していて、地元の住民に対して巧みな話術でフレンドリーに接して住民達の警戒心を徐々に解かせつつコミュニケーションをとっていった。ソイ=ソースもポンズ王国もお互いの言語が通じるしな」。
「まぁ、もともと同じ民族やったしな~。それにしても、敵対関係にある現地住民に対して思い切った事をしよるな~」。
ボックスがそう相槌を打つと、ハリガネは頷きながら話を続けた。
「しかも、『我々は侵攻ではなくッッ!! 重税に苦しむソイ=ソースを救済のために参上したッッ!! 我々は貴国との友好関係を築く事を強く望みッッ!! 貴国を尊重し領土をポンズ王国配下に置かない事を天命に誓うッッ!! もしッッ!! 王国が友好関係を築かぬ姿勢を見せようならばッッ!! 我々もソイ=ソース国民と共に戦おうぞッッ!! 』、みたいな耳が腐る事をほざきまくったらしい」。
「うわぁ~! 処罰されたのに、早速背信行為ですか~い? 」。
ジューンは呆れ顔を浮かべた。
「まぁ、事実上の王国に対する宣戦布告だわな。その上、今まで百パーセント手前が悪いのに真実と平等を求めて王国に訴えたが、自分は何故か国家の不当な圧力により左遷されて“どーたらこーたら”とボケ抜かしまくって現地の住民達に寄り添っていたわけよ~。いやぁ~! 反逆者の鑑だね~! ここまでくると逆に素晴らしいよ~! 」。
ハリガネは皮肉交じりにそう言いながら大きく溜息をついた。
「凄いね...。でも、敵地でよくそんな大胆に振舞えるね~。話を聞く限り隙が多かったと思うし、酒や食べ物に毒盛られたり狙撃で暗殺されてもおかしくなかったんじゃないかな~? 」。
ジューンがそう言って苦笑すると、ハリガネもつられて苦笑した。
「普通は...ね。でも前線部隊にいた当時の歩兵部隊の兵士は、実戦と訓練の経験で五感が獣並みに鋭いんだ。そこが魔法を使わない戦士の強みな」。
「戦士は直接攻撃とか接近戦がメインやし、敵に直接出くわすからな~。特に戦時中の前線部隊は相当場数踏んでるからな~」。
ボックスが助け舟を出すと、ハリガネは小さく頷いた。
「そうそう、しかも“奴”の場合はその兵士達の比にならず、魔獣並みに危険察知能力が鋭いんだ...あんまり認めたくないけどな。最初のうちは、住民も“奴”の部隊が侵攻した事もあって当然だがポンズ軍を警戒していた。自国の兵士が一掃された後も、防衛のために住民が前線部隊が購入した食材に毒を盛ったり罠を仕掛けたり、街に潜んでいた傭兵が狙撃を企てていたらしい」。
「まぁ、現地には決起した民間の防衛隊とかは普通にいるよね~」。
「ああ、現地のソイ=ソース住民は部隊に抵抗しようとしてたんだ。でも、“奴”にとってはそれもお見通しだった。全部“奴”にバレてたんだ。毒を盛った商人には“最期通告”を突き付けて忠告し、狙撃や暗殺を実行しようとした者は容赦なく返り討ちにしていたようだ。こうして“奴”は部隊の勢力や存在感を誇示しながら、着実に現地住民の距離を縮めつつ信頼関係を築き上げていった。しかも、“奴”は部隊の拠点に前哨基地を建設せずに現地の各所ホテル全ての部屋を貸し切りにして、そこに部隊を一週間近く待機させていたようだ」。
「えぇ~?? 敵地で酒盛りするだけじゃなくて宿泊までしてたのぉ~?? 」。
「破天荒やな~!! そんな軍おらへんで~?? 」。
ジューンとボックスは目を丸くして驚いた。
「ちゃんと部屋分の宿泊代も払ってんだぜ? 現地の住民達の信頼を得るためにな。もちろん、ソイ=ソース国の貨幣は無いからポンズ王国から積んできた物資を代価として取引していたそうだ」。
「...でも裏から敵軍に通報されたりとかしなかったのかな? 」。
「部隊はソイ=ソース国軍と占領した街との情報通信手段を遮断したんだ。部隊は基地代わりに利用していたホテルだけでなく、外部から敵が侵入しないよう街中の警備を買って出ていたそうだ。もちろんそれは建前で、帯同させていた魔術部隊に防壁を市街地周囲に建てさせ、その地域をソイソース本国から引き剥がし鎖国させる事に成功した。そして、部隊の隊員が街中を巡回する等と通報対策を実施し、総員約千人が待機している状態で有事に対応できる体制を整えた」。
「本来の目的がソイ=ソース国への侵攻だったもんね~。前線を強化するのは正しい選択よね~」。
「まぁ、真の目的は不純だったけどな。兎にも角にも、国軍に出動されないよう市街地を本国ソイ=ソースから孤立化させることに成功した。そして、街の飲食店や酒場に現地の住民達を招き入れ、隊員と食事を共にしながら自分の事や今後の街の事とか色々と話を交わして打ち解けていったようだ。当時の戦乱の最中、“奴”はコミュニケーションを通じて住民のメンタルケアも怠らずに準備を続けていた」。
「う~ん、街を防壁で囲って鎖国状態にしたって事はさぁ~。市街地的にも部隊的にも流通経路が絶たれた事になるから、兵糧攻めされたら結構悪手じゃない? それは大丈夫だったの? 」。
「魔術部隊にポンズ王国へ通じる通路魔法陣を描かせたんだ」。
ハリガネがそう答えると、ジューンは怪訝な面持ちを浮かべた。
「...ん? 通路魔法陣を? ソイ=ソース国からポンズ王国へ? 」。
「うん」。
「距離に無理じゃない? 魔法陣で通路作る時って目的地に魔法陣を敷くだけじゃなくて距離が遠ければ遠い程、つまり接続に必要な魔力の注入量はそれに比例して多くなるはずだ。それに、現地からポンズ王国までは結構遠いよね? いくら魔術部隊がいるといっても、魔法陣に相当の魔力を注がないと王国まで繋がらないんじゃないか? 」。
ジューンがそう言うと、ハリガネは何度か頷いてベッドから上体を起こした。
「無理矢理繋いだらしい」。
「えっ!? 繋いだのっ!? しかも無理矢理っ!? 」。
ジューンは見開いた目を何度も瞬きさせ、驚いた様子を見せた。
「市街地の広場に魔法陣描いて、魔術部隊の兵士が強引にポンズ王国まで繋いだんだ」。
「でも、そうだとしてもあっちからポンズ王国からまでだと、魔法部隊を二十四時間フルで機能させなければいけないよね? それじゃあ、魔力的にも体力的にも持たないじゃないかな?? 」。
「だから、強引に経路を繋いだのよ。“奴”にこの世の常識なんか通じねぇ。確かに、あそこから王国までの距離を考えると、魔法陣を成立させるためには二千人以上の熟練魔術師が必要になる。現場にいた魔術部隊の兵士は二百人ちょいしかいなかったらしいが、その兵士達は魔法陣に向けて交代式に魔力を注入している一方で他の隊員は疲弊しきった隊員のサポートに回っていたみたいだ」。
「なるほど、連携を取っていたってわけか」。
「それだけじゃない。そこでも“奴”の人心掌握術が発揮される事となる。通路魔法陣の開設中に“奴”も率先して食料や魔力を補充する即効薬を兵士に与え、指揮官自らが兵士にサポートする姿勢を住民達に“わざと”見せていたらしい。わざわざ人の目に入りやすい広場に魔法陣を開設していたのは、自分達は一生懸命努めて街を良い方向に向かわせるという事をアピールするためだったみたいだな」。
「おお~、随分と大胆な事してたんだねぇ~」。
「“奴”はそこで見物していた住民に向かってポンズ王国の経路を繋ぐ事と、ポンズ王国からの持続的な物資供給を行う事を伝えた。そして、“奴”は声を高らかに兵士をサポートしながら増えていく見物人に向かって演説を続けた。さらには、街に繋げた経路先や運搬する物資とかの詳細も住民に説明していたらしい」。
「街に繋げた経路先はポンズ王国の何処だったの? 」。
ジューンは腕を組みハリガネに問いかけた。
「王国軍の倉庫に通じていたようだ。そこから待機していた部隊の兵士達に現地へ物資を運搬させていたらしい。もちろん、本部には内密にしていた。食料や医薬品に街の気候や環境に適して栽培できる野菜の種や、薬の調合に使われる植物の種を運搬していた事を兵士から聞いたな。他にもポンズ王国の魔導書や、薬品の調合法が記された書物等といった書籍や武具なんかも提供していたらしい」。
「なるほど、パイプ役を使って上手くやってたんだ。しかし、経路を繋げたのは凄いな...とても考えられない...」。
「ああ、俺も当初話を聞いた時は滅茶苦茶過ぎて自分の耳を疑ったよ。それで、無防備ではないにしても“奴”は住民との距離を縮める事に成功した。そして、約一週間後に“あの作戦”が決行される事になる」。
「遂に“アルマンダイト”討伐か...」。
ジューンがそう呟くと、ハリガネは頷いて話を続けた。
「隊員とのコミュニケーションも良好で、部隊内の雰囲気も良い感じだったそうだ。そして当日の早朝には街の周辺の魔獣狩りを行い、その狩った魔獣達の肉を肴に酒を嗜み隊内のムードを高揚させた。そして“奴”はわずか数十人の兵士を残し、部隊と共に“アルマンダイト”の生息地であるパルメザンチーズ山脈へ向かった。ここまで物事が上手くいってただけあって、“アルマンダイト”討伐にも部隊はすっかり乗り気だったらしい。感覚が麻痺しちゃってたんだな~。酒も飲んでたわけだし...」。
「出発前に飲酒か...。考えられないな~」。
ジューンは苦笑しながら肩をすくめた。
「でも、部隊はその日“アルマンダイト”に遭遇する事はなかったそうだ。ただ、周辺の魔物狩りと現地の鉱山の鉱石採集をしながら、翌日仕切り直すつもりで街に“戻ろうとした”んだ」。
「“戻ろうとした”...? 」。
ジューンが眉をひそめてハリガネにそう聞き返した。
「部隊が街へ引き返そうとした時、その街で待機していた隊員から本国ソイ=ソース軍が総力を挙げて防壁を破り、街を奪還すべく進撃してきたという連絡を受けたらしい。それで、“奴”は街で待機していた部隊に通路魔法陣から王国へ直ちに退却する事と、魔法陣を削除して経路を塞ぐよう指示した。“奴”が占領していた地域から連絡が取れなくなっていた事に異変を察知したソイ=ソースは、地域の周辺に偵察部隊を気づかれぬように潜伏させていたんだ。それで、“奴”が大勢の兵士を引き連れてパルメザンチーズ山脈に向かった事をその偵察部隊が確認し本国へ報告すると、“奴”がいなくなった事で手薄になったその地域にソイ=ソース軍は兵士を投入して強行突撃したってわけよ」。
「あぁ、周辺を監視されていたのか。でも、あの“恐”戦士がその偵察部隊に気付かないのは何とも...」。
「酒が入ってて注意力散漫だったんじゃないかな? 普通に考えられないけど...。そんなこんなで、“奴”は街へ戻る事が不可能だと判断し、山脈から王国へそのまま撤退する事になったと。そして、“奴”は軍への重大な背信行為を犯したという事で無事逮捕され、今まで犯してきた不祥事も考慮された結果ポンズ王国から追放されましたとさ。めでたし、めでたし」。
「う~ん...。俺が知ってる記録上の話では、ソイ=ソース軍の突撃に現地の住民と街に残った兵士が抵抗したって聞いたけど...」。
ジューンの言葉を聞いたハリガネは何度も頷いた。
「ああ、実はそうだったらしいんだ。待機していた兵士は王国へ戻った者と街に残った者に分かれた。残った兵士は現地の住民に情が移り、“奴”の指示に反してその地域の防衛のために尽くした。中には住民と愛を育み、結婚を約束してソイソース軍に立ち向かった兵士もいたそうだ。広場にあった王国の経路を繋ぐ魔法陣はさすがに消したらしいがな」。
「最終的に残って戦い続けた兵士は全員戦死してしまったらしいね。しっかし、凄いよな~! あの後に現地の住民が結託してソイ=ソース軍を撃退するんだよね? 」。
「そうらしいな。実際に兵士が通路魔法陣を頑張って繋いでる時にも、住民が協力してたっていうし兵士との距離も縮まってたんだろうな~。そして、本国のソイ=ソースに反発した住民は街の周辺も占領し、陣地を拡大していったと...」。
「そして、ハリボテ=ポップ氏が占領した街は、ソイ=ソース国から独立して“ウスター=ソース独立国”を建国したって事かぁ~!! はははっ!! お父さんは一つの国を建ててしまったわけかぁ~!! いやぁ~!! 凄いね~!! 一つの野望のために敵国の街を動かしちゃうなんてね~!! いや、ノンスタンスを手懐けてたわけだし、一国をまとめる器自体はあったのかもねぇ~!! 」。
ジューンは苦笑しながらハリガネにそう言った。
「驚くのを通り越して呆れるわ。どんだけ“アルマンダイト”の首が欲しいだよって話だよ」。
ハリガネは呆れた表情を浮かべながらそう言って肩をすくめた。
「まぁ、“恐戦士”と呼ばれた百戦錬磨のハリボテ=ポップとしては、片目を奪われただけあって相当の私怨があったのかもね~。ところで、ハリガネ君は当時何してたの? ハリガネ君は戦地へ向かってなかったの? 」。
「俺は“奴”とは違う部隊だったんだ。俺の隊は後に加勢する事になってたんだけど、“奴”のせいで戦況が一変したから途中で引き返す事になったんだよ。王国軍の基地に戻って事態を知った時は驚いたよ。本部の指示を無視するどころか連絡も一切取らず、前線から離脱してあんな事やってたんだもん。しっかし、皮肉なもんだな~。“奴”と同じ反逆罪で国外追放になるなんて。まぁ、死刑よりはよっぽどマシ...あっ!! 」。
ハリガネは目を見開いて声を上げ、ジューンに視線を向けた。
「ん? どしたの? 」。
ジューンは怪訝な面持ちで首を傾げた。
「そういえば、俺に言ったよな? 」。
「え? 何を? 」。
ハリガネの言葉にジューンは眉をひそめた。
「ほら、色々と俺の事調べてるみたいだけどさ、アンタの事も教えてもらうってさ」。
「ジューンだよ。名前忘れちゃったの~? 」。
ジューンが不満げにそう答えると、ハリガネはしかめっ面をして溜息をついた。
「名前を聞いてるんじゃねぇよ。俺が死刑を免れたら、アンタは結局何者なのか話をしてもらうって約束をしてたろ? 約束は守ってもらうからな」。
ハリガネがそう言うと、ジューンは苦笑して首を横に振った。
「いやいや! 俺は『判決で君が“無罪”になったら教えてあげるよ』、とは言ったけど『“死刑を免れたら”教えてあげるよ』とは言ってないよ~! ハリガネ君は有罪判決受けたじゃん~! 」。
「はぁっ!? そんなの屁理屈じゃねぇかよっ!! 」。
「ハリガネ君~、正論だよ正論。屁理屈じゃなくて」。
「はぁ~!? 」。
「こう見えても個人情報は徹底してるからね~」。
「ふざけんなっ! 散々、人の個人情報調べといてそんな事が...」。
ハリガネが身振り手振りでジューンに抗議していた時、急に照明が落ちて目の前が真っ暗になった。
「お、もう消灯の時間やな~」。
ボックスがそう言うと、そそくさと魔法陣へ戻っていくジューンにハリガネは気付いた。
「あっ!! お、おいっ!! コラっ!! 」。
「それじゃ、おやすみ~! 」。
ジューンはハリガネにそう言い残し、さっさと魔法陣と共に消えていった。
「さぁ~て! 仕事の時間やな~! 」。
ボックスも、そう言いながら部屋から出ていった。
(何だよっ!! 結局、昔話しただけで終わっちゃったよっ!! これから一人で作戦立てなきゃいけないのにっ!! )。
ハリガネは溜息をつき、布団を身体にかけて再び横になった。
(...とはいえ、“アルマンダイト”相手に一人だけだと完全に無駄死にで終わるな。単身で討てる魔獣じゃない。さっきウスター=ソースの事を話したけど...確かあそこはポンズ王国や諸国と友好条約結んでなくて今も鎖国状態だよな? ワンチャンあの国にかくまってもらうのもアリかな...? う~ん...)。
その夜、ハリガネは頭の中で色々と考えながら眠りについた。




