表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破離刃離☆勇者ハリガネⅡ~王国に仕える兵士として生きてきた戦士の俺、何故か王国の反逆者に...~  作者: 田宮 謙二


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/47

運命の判決


えぇ~??


私の役職ですかぁ~??


軍内における監察を担当をしているわけですよぉ~!


もっと簡単に言うと、組織内における警察や監視役みたいなもので汚職とかコンプライアンス違反のチェックしているわけなんですねぇ~!


パワハラって許せないよねぇ~??



~ポンズ王国軍国防総省監察室長、バイキン中佐~




(“奴”とノンスタンス...。どっちか恨むとしたらって...。そりゃ、“アイツ”に決まってるでしょ)。


ハリガネは長考して答えるまでに間を置いていたが、自身の重たい口をゆっくりと開いた。


「そりゃあ...」。


そして腹を括ったハリガネはフッと鼻を鳴らし、その“アイツ”を嘲笑するかのように不敵な笑みを浮かべた。


「そりゃあ、“奴”ですよ...陛下」。


今まで国王に対して畏まっていたハリガネであったが、いつも通りのらりくらりとした口調でそう答えた。


「...ん? “奴”?? 」。


国王は首を傾げながらハリガネにそう聞き返した。


「はい、“奴”ことハリボテ=ポップです。俺は“奴”を父親とは思いたくないんでね~。あえて、“奴”と呼ばせてもらいます」。


ハリガネがそう答えると、国王は一枚の書類を手に取った。


「あぁ~! ハハハッ!! 兄ちゃんの生い立ちが書いてあらぁ~!! 」。


国王はそう言ってその書類を凝視すると、しばらくそれに目を通した後のけ反りながら大笑いし始めた。


「あっはっはっは~!! そりゃ、父ちゃん恨むわな~!! はっはっは~!! 」。


(いや、死ぬ一歩手前だった事が何度もあったし...。全然笑えないんだけど...。つーか、そんなに笑う事なくね? )。


ハリガネとセタガヤ国防長官は台を何度も叩いては両足をバタバタとさせ、一人で爆笑し続ける国王を冷ややかな目つきで見つめていた。


「ヒィ~!! ヒィ~!! スマン!! スマン!! あまりにも兄ちゃんの父ちゃんがバイオレンス過ぎてよぉ~!! ヒィ~!! ヒィ~!! あ~!! 面白れぇ~!! 」。


国王は苦しそうに腹を抱えながらハリガネにそう言った。


「いえ、生きている今となっては笑い話で済む事でしょうし...」。


すっかり国王のテンションに疲れ切った様子のハリガネはうつむきながらそう答えた。


「まぁ~! そんくらいの鍛錬や覚悟がねぇとやってられないわなぁ~! 戦士職なんてよぉ~! 」。


「いや、そういう事でも無いような気がしますか...。自分のとこが単に異常だったと思うんですが...」。


「なるほどな~! そうか~! それで恨むとしたら親父の方か~! そんでさぁ~! 父ちゃんはどのくらい恨んでるの? 」。


「ぶち殺したいくらいです。“奴”が死刑判決になってたら、自分が進んで執行人やりたかったです」。


目の据わったハリガネがそう即答すると、国王は思わず苦笑した。


「おいお~い!! そこまでかぁ~い!! 」。


そして、国王は大袈裟に驚いた様なリアクションをハリガネにしてみせた。


「確かにノンスタンスも憎いです。軍の仲間達も奴等との抗争のせいで命を落としていきました。特にリーダーのデイをあそこで始末できなかったのは今でも悔やんでいます。結果論ですが、家で鉢合わせになった時に、今の心理状態であれば間違えなくリスクを鑑みることなく立ち向かっていたでしょう」。


ハリガネは両拳を固く握り、こみ上げてくる怒りを鎮めながら淡々と供述を続けた。


「しかし、“奴”に関してはそれ以上に殺意が湧いています。今まで軍隊内での秩序や立場という事もあり、理不尽な部分も無理矢理呑み込んできました。結果として、“奴”の身勝手な暴走により家族同然付き合ってきた兵士の仲間達や大切な物を犠牲にしてきました。もう“奴”には殺意の感情しかありません。“奴”の賠償金も承継する形になっちゃいましたし...」。


「ほう...。穏やかな話じゃねえが、殺意が湧くほど憎しみ続けていたって事か...。まぁ、返し続けてる賠償金も兄ちゃん個人で背負ったものじゃないしな...。残った実家と引き換えに、一生掛かっても返せない借金を背負うのは割に合わないわなぁ~」。


「...」。


ハリガネは表情を曇らせ、黙り込んだまま地面の見下ろした。


「それで、父ちゃんはノンスタンスとの親交があった事を知らなかったって言ってたけどさぁ~。実際にその話を聞いてどう思った? その時も自分の父ちゃん憎んだわけ? 」。


国王がそう問いかけると、ハリガネは眉間にしわを寄せて歯軋りをした。


「正直、怒りを通り越して心底から失望しました...。どんなに軍に対して迷惑をかけても僕がどんなに理不尽な扱いを受けても、腐っていても戦士の魂を持った王国の兵士だと思っていたのですが...。ただのサイコパス野郎だったみたいです。まさか王国軍兵士の身分でありながら敵対関係のノンスタンスに肩入れしてたなんて...」。


ハリガネは怒りで身体を震わせながら更に話を続けた。


「“奴”は人の皮を被った魔物であって戦士じゃない...ッッ!! もし、生きてて目の前にでも現れたりしたら剣を向ける自信しかないです...ッッ!! 」。


ハリガネが怒りを押し殺すように低い声でそう答えると国王は再び苦笑した。


「でもよぉ~! 兄ちゃん~! 父ちゃんが強いってのは、自分が一番分かってるはずだぜ~? 父ちゃんに勝てるのか~い? 」。


国王は憤るハリガネに臆さずにそう問いかけた。


「...死ぬかもしれません。でも、五体満足のまま生かしはしない...ッッ!! 腕一本でも墓場まで持っていきます...ッッ!! 無駄死にはしません...ッッ!! そして、今までの報いは一生償ってもらうつもりです...ッッ!! 」。


「ほぉ、覚悟は決めている感じだな」。


「...生きてたらですけどね」。


ハリガネがそう付け加えると、国王は小さく頷きながら尋問を続けた。


「まぁ、あれだ。過去の自分にやってきた事に対しての怒りだけじゃなくて、兵士や戦士としても見切ったという事かい? 」。


「戦士どころか同じ人間としてはもう見ていません。それに、今となっては反逆者のレッテルを貼られている身分ですが、自分も国に仕えてきた人間です。死んでいった仲間や民衆の無念さは知っているつもりですし、自分の仕事が無くなったとしても戦争は起こらない方が当然良いに決まってます。しかし、王国を護る事が自分達の役目であり、“奴”にもその気持ちぐらいはあると思ったのですが...そうじゃなかったみたいです」。


ハリガネが力を込めてそう供述すると、国王は軽く頷いて書類に視線を移した。


「それじゃあ次の話なんだけどさ、自分が兵士だった時の元上官に追従してノンスタンスのいる区域に出撃したのは、上官に指示されたからか? それとも自分の意思か? 」。


国王がそう尋ねるとハリガネは再び地面を見下ろして少し考え、頭の中で整理がつくと国王の方に向き直った。


「最終的には自分の意思で部隊に追従しました。ですが、もともと傭兵として出動した際は待機命令が出ていましたし、王国軍が解決するという話は現地で聞いていたので当初は出撃なんて考えていませんでした。ただゴリラ隊長を含めた部隊は士気が高く、自身も部下だった事もあり成り行きで追従する形となってしまいました」。


「今、改めて考えてみてさ、あの出撃は正解だったと思った? 」。


国王の尋問に、ハリガネは一呼吸置いてから話し始めた。


「王国軍の指示に無視したノンスタンスとの抗争だとは当時思っていました。私自身は現場で偵察等と他の隊員の穴を補う形でフォローに回ってましたが攻撃にも参加してました。正解かは...自分一人では判断できませんが、その選択に関して後悔はしていません」。


「この件は一緒に逮捕された元上官も供述していたが、『歩兵隊の待遇や今回のノンスタンス侵攻に対する軍の対応に我慢ができず、本隊から離脱し現場突撃の強行を決断した。あくまでの自分の意思のみで、そこに参加した兵士や傭兵の意思はなく自分が勝手に部隊を編成して出撃した』、との事だったらしいんだけど...。そうかぁ~、兄ちゃんは自分の意思で行ったのか~」。


「はい」。


「自分の意思って言ってたけど、兄ちゃんが部隊に追従したその意思について説明できる? 」。


国王にそう問われ、ハリガネは考えを巡らせながら供述を続けた。


「はい、引くに引けない状況になってましたし僕自身ここまで来た以上はリーダーである赤髪のデイを討伐し、ノンスタンスを壊滅させたいと思っていました。先程もお話ししましたが僕はノンスタンスとの戦いで死んでいった仲間達に対する思いがありましたし、王国が危機的状況な事もあって戦士であり元王国兵士として一矢報いたかったという気持ちもあります。これは事が起きた後の考えなんですけどノンスタンスを発見した旨の通報を怠ってしまった責任の念も感じていたので、部隊に参加した事に関しては重ねて申し上げますが後悔していません」。


「へへっ!! ノンスタンスのリーダーの首をオイラのところへ持っていけば、手柄としてワンチャン賠償金もチャラになるかもしれないからな~!! 」。


(そういう気持ちも、無きにしもあらずだったんだけど...)。


悪戯っぽく笑う国王の言葉に、ハリガネは表情を曇らせて黙りこくってしまった。


「さてさてっ!! 一通り聞いたところで、どうすっかなぁ~!! 」。


国王はそう言って天井を見上げ、長考した。


「...」。


「...」。


しばらく、法廷内でしばらく沈黙が続く。


「...」。


「...」。


「...よし! 分かった!! 」。


何かを決心した国王は正面に向き直った。


「...? 」。


ハリガネは怪訝な面持ちで国王を見つめた。


「兄ちゃん、ちょっと頼まれてくれるか~? 」。


「頼み...ですか? 」。


ハリガネが眉をひそめてそう言うと、国王は二カッと白い歯を見せて笑った。


「おうっ! 兄ちゃん魔物狩りもしてたんだろぉ~? オイラさぁ~! 魔物の鱗や皮革をコレクションにするのが趣味でさぁ~! ちょうど欲しい魔獣の部位があるんだよねぇ~! ちょっと狩ってきてくんなぁ~い? 」。


「か、狩りですか...? 」。


「おうっ! 」。


ハリガネが問いかけると国王が大きく頷いた。


「ちょっとっ!! ちょっとぉ~!! 王様~!! 何を勝手な事を言ってるんですかぁ~!! だいたい魔獣狩りって、王様もしかして...」。


セタガヤ国防長官が顔をしかめながら国王を制止しようと席から立ち上がると...。


ピコッ!!


「あたっ!! 」。


国王はピコピコハンマーでセタガヤ国防長官の頭を叩いた。


「うるせぇっ!! もう決めたんだよっ!! 馬鹿野郎っ!! 」。


「結局、滅茶苦茶な展開だよぉ~!! これ軍と政府の方にどう説明すればいいのよぉ~!! もぉ~!! 」。


セタガヤ国防長官は困惑した表情を浮かべながら頭を抱え、すっかり諦めてしまった様子で再び椅子に腰掛けた。


「フンッ!! そんなの知るか馬鹿野郎っ!! 」。


「またメディアに叩かれて国民から顰蹙ひんしゅくを買う事になるじゃないですかぁ~!! 」。


「...それでよ、兄ちゃん! 引き受けてくれるかい? 」。


(そりゃあ、答えは一つでしょ...)。


国王が問いかけに、ハリガネは神妙な面持ちで即座に口を開いた。


「国王陛下、喜んでお引き受け致します」。


「へへっ!! 交渉成立だなっ!! 兄ちゃんっ!! 」。


ピコッ!! ピコッ!!


ハリガネの答えを聞いた国王は満面の笑みを浮かべながら満足した様子で、台をピコピコハンマーで勢い良く叩いた。


「フィニ~ッシュッッ!! それでは判決を言い渡しまぁ~すッッ!! 」。


「...」。


国王が高らかに宣言すると、ハリガネは顔を強張らせて固唾を呑んだ。


「被告人を“条件付き”の国外追放の刑に処す~!! 」。


ピコッ!! ピコッ!!


「あ~あ!! 私はもう知らないよ~ん!! 」。


国王が下した判決を間近で聞いていたセタガヤ国防長官は、苦虫を噛み潰したような顔で天を仰いだ。


(とりあえず首の皮一枚繋がった...。後は...俺の腕次第だな)。


「へへっ!! 良い面構えじゃねぇかっ!! さすが戦中期に前線で戦い続けた戦士だねぇ~!! 」。


国王の視界には、瞳の奥に闘志の炎を燃やしている戦士ハリガネの姿があった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ