国王の尋問が始まってしまった...
へへっ!!
オイラがこの国の王様になって、もう五十年以上経つのか!
なんだかんだ言って続くもんだな!
へへっ!! そう言えばちょっと面白い政策を考えたんだが聞いてくれるか?
実はこの王国にも自己破産っていうシステムがあるんだけどよ~。
それ無くして、負債返済が不可能な国民には五千ゴールドを一日単位として考えて、強制労働で返済してもらう制度を作ろうかなって思ってんだ~。
それで、新しく強制労働施設を建てて債務者を収容するんだ。
借りた金はちゃんと返さねえとな~!
へへっ!!
ちなみに食費以外の医療費とか諸費用に関しては自己負担だ。
返済額に加算するぜ~。
~ポンズ王国、テンポ=ジャイアン国王~
「い、いやいやっ!! おかしいっ!! おかしいっ!! こんなの絶対におかしい...ッッ!! いくら王様でも...ッッ!! これはおかしい...ッッ!! 」。
ハリガネは必死な顔で証言台から身を乗り出し国王に抗議した。
「へへっ! 冗談だよっ! 冗談っ! 」。
国王は笑いながら手元にある書類を見始めた。
「...へっ? 」。
「そんな腑抜けた声出すんじゃねぇよ~! 兄ちゃん~! てかさっ! もともと兄ちゃんはオイラの兵士だったみたいじゃねぇか~! こういうジョークは部隊内でしなかったのかい? 」。
「は、はぁ...(ジョークになんねぇよ。裁判で死刑なんて...)」。
たじたじなハリガネには気にも留めず、国王は神妙な面持ちで書類を見渡していた。
「ふ~ん、随分と派手にやったみたいじゃねぇか~」。
「は、はぁ...」。
ハリガネは書類を確認している国王の様子を見つめながらそう相槌を打った。
「ふ~ん、除隊後は傭兵と狩猟関連の仕事をずっとやってきたと...。今はそういうのやってないわけ? 」。
「はい...」。
「へぇ~、それはどうして? 」。
「え~と...」。
「戦争も無くなって魔獣愛護団体の圧力もあって仕事が少なくなったんですよね~」。
ハリガネが国王の問いに返答を躊躇っていると、セタガヤ国防長官が助け舟を出した。
「あっ!! おいっ!! 何で被告人のフォローしてんだっ!! この野郎っ!! 」。
「これはフォローじゃなくて相槌ですよ~」。
セタガヤ国防長官は国王にそう返事しながら、自身も手元にある書類を眺めていた。
「んまぁ~! 白々しいっ! ...でも、いっかっ! 」。
(いいんかいっ!! )。
ハリガネは国王の適当な発言に心の中でそうツッコんだ。
「ん~と、ハリガネ=ポップ...。あ~! 親父がハリボテかっ!! なるほどっ! なるほどっ! ポップ家だから、ずっと戦士職だったのかっ! でも、父ちゃんいなくなって、しばらくして兄ちゃんも軍を除隊か~! 」。
「はい」。
「それはどうして? 」。
「王様、ちゃんと書類読んでます? 当時は魔物の狩猟に需要があって、傭兵の方も戦中期だったから各国への仕事が豊富だったんですよ? 当時は軍隊の幹部支給額より傭兵個人の報酬額が遥かに高かった時代だったんですよ。王国の兵士が一番馬鹿にされていた時代だったんですよ~」。
「へぇ~! そうなの~! オイラの軍隊情けねぇな~! 」。
「王様、何を他人事みたいに...。それに、父親のハリボテ元兵士はソイ=ソース共和国侵攻においての背信行為やその他諸々ありましたからね~。彼は軍においての居場所も失いつつあり、それも一つの原因として除隊したんですよ。書類に記載してあるんですから、ちゃんと確認しておいてくださいよ~」。
「ふ~ん」。
「何が“ふ~ん”ですか! もう~! 適当なんだから~! 」。
呆れ返るセタガヤ国防長官を余所に、国王は適当な相槌をしつつ書類を眺めていた。
「それで、今は何してんの? 」。
「今は派遣とか日雇い仕事で生計立ててます」。
ハリガネがそう答えると、国王は怪訝な面持ちでハリガネに視線を送った。
「それは狩猟とか傭兵とか? 」。
国王の問いかけに、セタガヤ国防長官はうんざりとした様子でガックリとうなだれた。
「だから、王様~!! ちゃんと書類見てくださいってば~!! それにさっきの話聞いてました?? もう諸国との戦争も終わって、魔獣愛護団体の件もあってみだりに狩猟もできなくなって戦士関連の仕事が激減したんですよ~!! 彼に至っては今回のノンスタンス侵攻の件を除いて二年近くも傭兵や狩猟の仕事はしていないんですよ~!! 」。
「うるせぇなっ!! この野郎っ!! さっきから横槍入れやがってっ!! 」。
「だから、フォローしてるんじゃないですか~!! 」。
「へんっ!! ...そんで、今は日雇いとかしながら父ちゃんの借金を返してるって感じか~。それで、金額が...四兆ゴールド?? 」。
「はい...」。
ハリガネは国王の問いかけにうつむきながら答えた。
「一生返せねぇだろ~、こんな額...あっ!! でも総計六十兆ゴールドだったのかよぉ~!! よくこんなに返せたなぁ~!! 兄ちゃ〜ん!! 」。
「さっきも話しましたが、当時は傭兵バブルでしたからね~。しかも、傭兵は固定給じゃなくて歩合制だったし」。
セタガヤ国防長官は書類を見ながら国王に相槌を打った。
「とりあえず賠償金の件はいいとして、父ちゃんはノンスタンスの連中と仲良かったみたいだな? それは知ってた?? 」。
国王はそう問いかけると裁判官席から身を乗り出し、悪戯っぽくハリガネに笑いかけた。
「いえ…。全く知りませんでした。ただ、諸国との戦争で理由も告げず、前線から離れたり突然いなくなる事が多々ありました。ノンスタンスとの接触があったとは知りませんでしたが、あの時の行動を不審に思っていた事は事実です」。
「調書には侵攻前日に首謀者と会ったらしいが、父ちゃんがノンスタンスを家で招いて食事を振る舞ったりして親睦を深めていた件もあって、首謀者は兄ちゃんの家の住所を知っていて今回の件について頼ってきたと書いてあるな。兄ちゃんはこの事に関して何か言い分とかあるかい? 」。
ハリガネは一呼吸して自身の気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと口を開いた。
「はい、自分は父がノンスタンスを家に招いた事を知りませんでした。軍へ入隊してからは軍の施設内で生活してましたし、除隊してもしばらくは実家ではなくマンションに暮らしてました。父が国外追放された後は実家の所有権を相続した関係で戻ってきましたが、父と共同で生活する機会が兵士になって以降はありませんでした」。
「父ちゃんがそういう事を匂わせてたというのは感じなかった? 」。
「いえ、そもそも父とは会話らしい会話を軍隊内外でする事がほとんど無かった…というか親子としてのコミニュケーション自体取っていなかったので、父とノンスタンスの関係性についても気づく事はできませんでした。陛下の仰せの通り、前日にリーダーのデイが実家に侵入してきましたが、活動の邪魔をしないように忠告を受けたくらいで侵攻の旨は聞いていませんでした」。
国王はハリガネの供述に頷きながら書類を眺めていた。
「なるほどね~。それでね~、書類を見るとさ~。実家でノンスタンスの首謀者に遭遇した際、通報せずに侵攻を教唆したって書いてあるけどさ~。これに関してはどう? 」。
国王の尋問にハリガネは顔を強張らせた。
「...侵攻の教唆はしていませんが、通報は...怠ってしまいました...」。
「ほう? 怠った? それはどうして? 」。
ハリガネは気まずそうに答えると、国王は腑に落ちない顔で首を傾げながら続けてそう問いかけた。
「自分勝手な言い分ですが、定職に就けず...あの...その場しのぎの仕事しかできない日々が続きまして...。あの...生活も正直カツカツで頭が回ってなかったっていうか...」。
国王はしどろもどろに供述するハリガネを見て笑った。
「へへっ!! 別に勝手な事でも良いじゃねぇかよ~! 自分の生活を守るのに勝手も何もないだろう~? 自分自身の人生なんだからよ〜! 」。
「は、はぁ...」。
「結果的に兄ちゃん達がノンスタンスと戦って撃退してくれなかったら、国の方としては色々面倒臭い事になっていたかもしれんしな~」。
「い、いや…」。
「それで、ちょっと聞きたいんだけどさ...」。
国王はそう言った時、今までニヤけていた表情が急に真顔になった。
「...ッッ!? 」。
国王の鋭い眼差しで、ハリガネの身体が一気に硬直し直立不動になった。
(な、何だ…ッッ!? この威圧感…ッッ!? これも国王の力なのか…ッッ!? ま、まるで自分が蛇に睨まれている蛙になったみたいだ…ッッ!! か、身体が思うように動かない…ッッ!! )。
冷や汗を掻いて激しく動揺するハリガネに対し、国王はゆっくりと口を開いた。
「兄ちゃんさぁ...。父ちゃんとノンスタンス...。恨むとしたら、どっち選ぶ? 」。
「...ッッ!!」。
国王の静かな口調が法廷内に響き渡った。




