GB テリーのワンダーランド
GBのレトロゲームをやってみた感想文です。
この作品は、ドラゴンクエスト 1〜6までをやり倒してきた人達には本当に涙ものの作品なのではないでしょうか。
ドラクエ1〜6までのフロア、BGM、ボスがGBで一気に見る事が出来るのはこの作品だけです。ただ、それぞれドラクエ1〜6までをやり込んだ人でないと、それぞれの場面での状況が分からないため感動は半減してしまうかと思います。
要は、このゲームの主人公がドラクエ1〜6までの世界に行って、各ストーリーの主人公が来る前に各主要なイベントの前にその現場に行っていろいろあった後に、1〜6の本編の主人公達がそこを訪れて各ストーリーが進んでいたという『前日譚』のような話なので、ドラクエ1〜6のストーリー展開を知らない人にとってはイマイチピンと来ない内容になってしまう可能性が高いです。
さらに、ドラクエ1〜6を知らない人にでもそれなりに楽しめるように作られているため、攻略サイトなどでも各ストーリーへの伏線について書かれているものは皆無で、このゲームの醍醐味でもある『モンスター育種』についての解説に終始している攻略サイトが殆どです。
なので、ここではこのゲームのストーリーについての感想を書いていきたいと思います。
まず、このゲームのストーリーはドラクエ6に登場した『テリー』の幼少期の物語です。
ドラクエ6の時点でのテリーは、姉であるミレーユが帝国の性奴隷として強制収容されていく際に迎えに来た帝国の兵士に怯えて、それを食い止める事が出来なかった事で精神を病んで最強の武器と肉体を求めて放浪の旅を続けた挙げ句、悪魔の力を得るためにダークドレアムに弟子入りした悲劇のキャラです。このゲームでは、そんなテリーがまだ幼い頃に姉のミレーユと一緒に穏やかに暮らしていた時点の物語です。
ある夜の事、テリーとミレーユが暮らす家に一匹の猿が来ます。その猿がミレーユを夢の世界『大樹国』へとさらって行きます。それを見たテリーが慌てていると、もう一匹の白い猿が来て 「お姉さんを取り戻したければ一緒に夢の国に来い」みたいな事を言って、テリーは猿の後を追ってタイジュ国に行きます。
この時点でのテリーは、まだ幼いため自分で戦う事は出来ません。要は、ポケモンと同じように魔物を捕まえて育てて戦わせるのがこのゲームです。
タイジュ国はわりに穏やかで、闘技場で自分の育てたモンスターを戦わせる『お祭り』が唯一の楽しみのような世界です。お祭りには沢山の国から参加者が来ており、主催国であるタイジュ国の国王も自国の代表が大会で優勝する事を望んでいるただの道楽者です。しかし、この世界で特別な夜『星降る夜』に開催される『星降り大会』というイベントで優勝するとどんな願いでも叶うという言い伝えがあり、テリーは姉を見つけて連れて帰るという目的のために、この星降り大会での優勝を目指す事になります。これがこのゲームの本筋です。
『自国の名誉のために星降り大会で優勝したい』という国王の思惑と、『姉を見つけて元の世界に連れて帰るために星降り大会で優勝する』というテリー目的とで、どちらも星降り大会優勝という共通の目的が出来た事で国王とテリーが協力し合います。
大会に優勝するにはまず強いモンスターを捕まえてこなければ話にならないため、国王は、より強いモンスターを捕らえられるよう、強いモンスターのいる異世界の扉を順々に解放してテリーをそこに向かわせます。いきなり強すぎて負けないよう、格闘技場でG〜Sまで8段階のクラスでそれぞれ優勝できればそれぞれのクラスに合った扉を解放していくシステムです。
この1〜8までの扉の先がドラクエ1〜6までの名場面を再現した世界で、この時点での過去作のドラクエファンにとっては涙ものです。ネタバレですが、この時点では過去作のボスは出てきません。出てくるのはイベントボスだけです。ただ、BGMは過去作のものですし、過去作のイベント前日譚はどれも秀逸です。テリーが幼な過ぎてローラ姫を抱っこ出来なかったためにローラ姫が「もっと大きな人が来るのを待つわ」と言ったり、ゴーレムを倒しても「今この町に入っても意味がない」と言ったり、正気のキラーパンサーを倒したらキラーパンサーが野生化したり。よくもまあこれだけ過去作に伏線を付けたものだと感心します。
このようにしてドラゴンやキラーパンサーが過去作のストーリーで主人公達が訪れる前に『一時的に』テリーの仲間になり旅を続ける事になります。また、最後には『将来の自分の姿が見られる』というタイムパラドックスな扉があり、ダークドレアムの手下となった未来の(ドラクエ6時点での)自分と戦う事となり、戦いに勝利すると未来のテリーが「こんな道を歩むな」みたいな事を言って消えてゆく演出があり、印象的です。
話は逸れますが、このゲームの最大の魅力の一つとして一般的に挙げられるのが『交配システム』で、様々なモンスター間で交配させて所謂『ハーフ』のようなモンスターを誕生させ、更に『クウォーター』のような第二第三世代と交配を重ね、ダークドレアムやゴールデンスライムといった強い交配種が誕生させる事が出来るという点が挙げられますが、私がクリアした時点でのパーティーはドラゴン、ゴーレム、キラーパンサー。いずれも第一世代です。なぜかって、ドラクエ1からリアルタイムでやってきた世代なら分かって頂けると思います。ゴールデンゴーレムだのゴールデンスライムなんて思い出に無いんですよ。まあ、GBでドラクエ5のBGMが聴けた時は感動しましたけど。
そんなこんなでネタバレですが、星降り大会での最終決戦の相手はミレーユです。
ミレーユが夢の世界にさらわれて行った先はモンスターバトル競技でタイジュ国の最大ライバルであるマルタ国。そこでテリーと同じように「星降り大会で優勝したら元の世界に返してやる」みたいに言われてモンスターを集めて鍛えていたという事で最終決戦でテリーと戦います。ここでテリーが勝つと本編のエンディング。
エンディングはありきたりなもので、『夢オチ』。目覚めると全ては最初からテリーが見ていた夢だったという話になり、しかし、ミレーユも同じ夢を見ていたと言い、『不思議な体験だったね』みたいな終わり方をします。
しかし、ここからがこのゲームの面白いところ。一度エンディングを見てセーブデータから再開すると所謂EXダンジョンが追加されていて、そこでドラクエ1〜6までの歴代のボスが総出演となります。
ここからのストーリーは『モンスターの育成』だけが目的であり、本編ストーリー(ミレーユ探し)とは全く関係なくなります。ただひたすら強いモンスターを作り出すだけ、タイジュ国の国王も「なんのためにまだ旅を続けているんだ?」と半ば呆れるくらいストーリーは無いです。ただ、このEXダンジョンでしか歴代のボスには会えず、そのフィールドを見ることもBGMを聴くことも出来ないという仕様、流石エニックスだと思います。本編ストーリーは最短で進めば多分10時間弱でクリア出来ます。しかし、エンディング後の余剰話で交配でダークドレアムを誕生させるにはRTAでも9時間半が最短。ハマった人は後半に70時間以上費やした人もザラにいるというから怖いというか、そりゃ本編ストーリーが話題にならないのも頷けます。
EXダンジョンでは、まず始めにモンスターじいさんと戦う事になるのですが、ここが一番の難所だと思います。ここで戦う『しんりゅう』には、よっぽどの運がないとまず勝てません。しんりゅうは1回の攻撃でブレス2発、全員が400近いダメージを食らうので頭が良く全体回復を使えるモンスターを仲間にしていないと全滅必須で、しかもHPが6500もあるので、こちら物攻担当もコンスタントに叩き続けられるような攻撃力が必要となります。運良くしんりゅうを倒せたら、後はドラクエファンにとっては懐古を目的とした歴代ボス巡りの旅でしかないのですが、ここにこのゲームの最大の欠点があるのも確かです。
各EXダンジョンの最深部に各歴代のフロアとBGMが再現されていて、各作品と同じように歴代ボスがいる訳ですが、その各再現されたフロアに到達するまでのダンジョンマップが、最初のダンジョンから最後まで使い回しなんです。イメージとしてはSFCの風来のシレンと同じと思って下さい。しかも、風来のシレンのようにランダムに画面マップが組み合わされるようなシステムではなく、各階層マップは固定で、階層がランダムに変わるシステム。各階層にある『階段』に相当する穴の位置がランダムに変わり、各面の難易度によって階層の数が変わるというシステム。簡単に云えば、最初のステージは3階層目でボスフィールドに到達していたものが、最終ステージでは30階層目でボスフィールド。30階層までの途中階層には最初のステージで出てきた階層マップもあり、今まで出てきた階層マップも当然ある。ただ、階段位置が以前とは違うので毎回探索が必要といった感じ。これ、当然飽きますよ。しかも、戦闘が風来のシレンやゼルダみたいなARPG式じゃなくドラクエ伝統のコマンド選択式なので、一回一回の戦闘がそれなりに長いため、マップの細い先端まで行って行き止まりだったりしたら、もう戻る気も失せますし、更にこのソフト、なぜか敵と遭遇してから戦闘画面に移る際に若干の読み込みラグが発生しており、ほんの2秒ほどではあるんですが、結構な頻度で毎回毎回2秒ほど待たされるって結構なストレスなんだと実感出来る仕様となっています。
歴代ドラクエシリーズ蒼々たる名場面の前日譚を実はテリーが廻っていたという着想、GBでドラクエ1〜6までのBGMが聴けて、各ボスのフィールドが再現されていて、各ボスとも戦えるという超豪華仕様。ドラクエからの派生シリーズとしては最高だと思います。GBでこれをやって退けたという点で評価すべきか、GBで限界まで詰め込んでしまったために沢山の粗が出てしまったという云うべきか。
懐古としては最高の名作だとは思います。
凄いゲームだとは思いました。