超管理社会
処女作ですので暖かい目でご覧ください。
あれは何時だっただろうか、夜も更け静かに虫のなく声が聞こえてくる夏の日、のどの渇きを覚え目を覚ませば、僕は見知らずの平原に横たわっていた。体を起こしてみると嫌に服がべたつく、暗くてよく見えないがヌメっとしている。
「なんだこれ」とつぶやき、違和感のあるズボンの中に手を入れてみる。
すると中にはスマホが入っていた。取り出して時刻を確認する。
”7月7日0 3:00” 画面にはそう書かれていた。
おかしい、僕の記憶では7月1日の23時頃に布団に入った記憶までしかない。そう思ってスマホから脳内に内蔵されているチップに信号を送り自分の行動ログを確認しようとした瞬間さらなる混乱に襲わた。
「なんだ、これ」
先ほどと同じつぶやきとともに頭が真っ白になった。
赤黒かったのだ。自分が着ている服が。まるで人の血でもかかったかのように。
そこから先は速攻だった。とにかく服を脱いで丸め、人目につかぬように一人暮らしのマンションに逃げ帰った。どうやって帰ったかは覚えていないが、帰宅後すぐにシャワーで血液を洗い流した。
シャワーから出るとすぐに精神的疲労や現実逃避による睡魔が襲いその日はベットに倒れこむようにして眠った。幸いなことに明日は日曜日のため、大学へ行く必要はない。
翌日、目が覚めると時計は10時を軽く過ぎたころだった。お風呂場の前には当然のように、持ち帰った血だらけの服がある。
「夢じゃなかった」そんな絶望的な現実に頭が痛くなりながらもこれからのことを考える。
「まずは現状把握だ。」そう考え、机にあるルーズリーフとペンを持ち自分が思い出せる範囲の情報を書き出していく。
影山徹(19歳)XXXX大学学生
バイト先 XXXX食堂
家族関係 父、母、祖父母
彼女いない歴=年齢
書いていてあまりの情報量のなさに悲しくなってくる。
「次は、記憶がなくなる前日の記憶を思い出してみよう。」
朝は普通に起きて、大学に行き、サボりつつもいつもどうり講義を受けた。午後からはバイトが入っていたのでバイト先へ行った。週末のバイトと言う戦場が終わり帰宅すると9時を回っていて家事をしていたらそのまま11時になっていた。
「ダメだ、何もおかしなところがない。」
悩んでも記憶が思い出せず、イライラし始めると突然チャイムが鳴った。
心臓が飛び出るかと思うような驚きと不安が僕を襲ってきたが無視するわけにもいかず、カメラモニターで確認すると宅急便だった。
少し警戒しながらも玄関へ行き荷物を受け取る。どうやら普通の配達人だったようだ。
配達されてきたものは段ボールに入れられた何かだった。正直、開けるのが怖いが開けざるを得ないだろう。なぜなら送り主の名義はこう書かれていたからだ。
”影山徹0702 XXX-XXXX YY〇丁目〇番〇号”
0702が日付を表している可能性が高く、しかもこのタイミングで届く荷物、いかにも怪しい。覚悟を決めて段ボールを開けていく。
すると中には手紙と封筒のようなものが入っていた。
好奇心に駆られ手紙を読んでいくとそこにはこんな内容が書かれていた。
「拝啓 初夏の暑さが日に日に増していく今日この頃〇〇〇〇様に置きましては如何がお過ごしでしょうか。私は先日あなたの体をお借りしてある人物を殺めました。
あなた様におかれましてはさぞ混乱されていることと存じます。しかしながら、今回の件で罪が発生したり、事件として捜査されることはございませんのでご安心ください。
封筒の中身は迷惑料のようなものだと思っていただければ幸いです。この度はご協力誠にありがとうございました。
これにてお礼と謝罪についてのお手紙を終わらせていただきます。敬具。
P.S
今回の件につきましては他言無用に願います。当方は害なき者には不干渉を信条にしておりますゆえ、害ありとみなした場合の身の安全は保障できかねます。」
手紙を読み終わったころ背筋には冷たい汗が流れていた。そこで思い出したのは世界政府が誕生して十数年、世界は多くの命と資源を失った。そこで政府は人々の脳内にチップを埋め込み超監視社会をつくることで世界の均衡を管理している。しかし、一般の人々には内密に信用ポイントというものをAIがつけ、ポイントの高い人は優遇されるが低い人は優遇されず一定の基準から外れると不要とみなされ消されるという話である。
この話を眉唾だと思っていた僕にとってこれは頭をバットで殴られたかのような衝撃と恐ろしさを与えるのに十分だった。何が恐ろしいかといえばいつの間にか自分の体をいつの間にか乗っ取られていることである。この世界は本当の意味で世界政府が支配していると実感させられた。
その後封筒の中身を確認すると500万円が入っていた。
ありがとうございました。