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最終話 冷たき雨

「うぉりゃあああああああああ!!!」


龍夜は巨大な隕石の目の前にたどり着いた瞬間、自分の全ての水の力をぶつけた。


レオンハルトの作り出した巨大な隕石は土と炎で出来ているため、水が有効なのだ。


「くっ、ダメだ!

力が足りない…!」


龍夜は精霊の力と共に自分の体力や気力、精神力を使って上乗うわのせした。


これ以上やり続けると龍夜の身体は消えてしまう。


だが龍夜は、たとえ自分が死んでも地球を救ってみせると心に決めて能力をぶつけ続けた。


「……(あと少し、あと少しで打ち消せる…!

…身体が消えかけてきた…

だが…みんなを護らなくちゃ…ならねえ。

これが…俺の精一杯の…つぐないだ…!)」




「隕石が…消えた…!」


さつきは天空に浮かんだ隕石を見ていて、それがなくなったのを見逃さなかった。


「やったのね、彼」


恭子もつぶやいた。


「お兄ちゃん、さすがだよ」


美由紀もつぶやいた。


その瞬間、天空から冷たい雨が降り注いだ。


その雨は、レオンハルト達に殺された人々を生き返らせた。


綾姫も目を覚ました。


「龍夜…?」


綾姫はとてつもない不安にかられた。


「龍夜!龍夜は大丈夫なの!?」


綾姫は周りの人間に訊ねた。


だが、みんなは口を揃えて、わからないと答えた。


「龍夜…」


まるで龍夜の身体が水となり、地上に降り注いでいるみたいで…


綾姫は不安を早くなくしたかった。


降り注ぐ冷たき雨は龍夜の身体の一部だと思った。


それは、みんな同じ考えだった。


隕石が消滅してから10分が経過しても雨は降り続いていて、龍夜は姿を現さない。


「そんな…龍夜……!」


綾姫は大粒の涙を流していた。


綾姫だけじゃなく、さつきも恭子も美由紀も貴志も、みんな涙を流していた。


「龍夜ぁぁああああああ!!!」


綾姫は天に向かって叫んだ。


「あたしは龍夜が好き…!

いつもあたしをからかうけど、あたしは龍夜が好きなの!

なのに…気持ちを伝えることも…出来ないなんて…!」


綾姫は届かぬ想いに悲しみ、子供のように大声で泣きじゃくった。


「龍夜…気の合う親友になれたと思ったのに…」


さつきも龍夜の事を想い、泣きじゃくった。


「あなたは凄いわ。

ちゃんとみんなを救った。

でも、お礼くらい言わせなさいよ…」


恭子も泣きじゃくった。


「お兄ちゃん、死んでなんかないよね…?

お兄ちゃんは……!」


美由紀も泣きじゃくった。


「龍夜さん、僕はまだあなたにお礼を言っていませんよ…

一人前にしてくれたり、暴走した僕を助けてくれたり…

龍夜さん…僕は……!」


貴志も泣きじゃくった。


天空から降り続いていている雨は水の精霊の治癒能力によって傷ついた者を治したが、龍夜は治せないのか…!?




それから一年後…


「綾、事件だよ。

現場に向かってもらえる?」


さつきは綾姫に言った。


綾姫はあれから狂ったように仕事に取り組んだ。


龍夜が死んだ悲しみを消すように…


悲しみは時間が解決してくれるはず、そう思ったが何もしてないと龍夜の事ばかり考えてしまう。


仕事をして、気をまぎらわすことで自我を保った。


「うん、じゃあ行ってくるわ」


綾姫は車で事件現場へ向かった。


未だに能力者の犯罪は消えない。


能力者がこの世界に存在する限り、能力者の犯罪は消えないのかもしれない。


今なら、レオンハルトの目的が理解できた。


レオンハルトも自分なりに考えた結果が能力者絶滅という結論に至ったのだろう。


だが、綾姫はレオンハルトを許さなかった。


綾姫はレオンハルトを殺したのだ。


初めての殺害だ。


レオンハルトのせいで龍夜は死んだ。


今でも綾姫はレオンハルトを恨んでいる。


死んだ者を恨んでもむなしいだけだとわかってはいたが、恨まずにはいられなかった。


綾姫は事件を軽く解決して能力者犯罪捜査組織へ戻った。


見張り役の佳奈はいなかった。


不思議に思いながら中へ入っていったが、誰一人いなかった。


総司令官室にも誰もいない。


総司令官室の綾姫の机の上に一枚の紙が置いてあった。


「訓練場に来て。

さつきより」


紙にはそれしか書かれていなかった。


綾姫は不審に思いながらも訓練場へ向かった。


………


……



「綾、おかえり」


訓練場ではさつきが綾姫を迎えた。


訓練場の中には能力者犯罪捜査組織のメンバーが全員集まっていた。


「何?なんでみんな集まってるの?」


綾姫はさつきに訊ねた。


「お祝いしようと思ってね」


さつきはそう言って訓練場へ綾姫を引っ張っていった。


「お祝いって、何を祝うのよ?」


「綾を」


さつきは即答する。


「あたし?誕生日はまだ先だけど?」


綾姫は自分が祝われる理由が全くわからない。


「相変わらず間抜けなつらだな、綾姫」


綾姫はそこにいるはずのない人物に話しかけられ驚き、声をなくした。


「ん?あまりの驚きでしゃべれねえのか?」


「あ、あ…あ」


綾姫は何かを言おうとしている。


「あ?」


「あんた、なんでいるのよ!?」


「ん?俺がいてはいけなかったか?」


「……心配したんだからね、龍夜」


綾姫は龍夜に抱きついた。


「…わりいな、俺もついさっき蘇生したんだ」


「蘇生?」


「ぁあ、水の精霊の治癒能力によってな。

そのかわり、精霊の力はなくなっちまったけどな」


「……あたし、龍夜に言いたいことが…あるの」


綾姫は抱きついていた身体を離して、下を向きながらもじもじした。


「なんだ?」


龍夜は綾姫に訊ねた。


「あたし……龍夜の…事が………

好き…」


綾姫は自分の気持ちを龍夜にハッキリと伝えた。


「綾姫、顔が真っ赤だぞ?」


龍夜はまた綾姫をからかい、顔をかなり近づけた。


綾姫は顔を離そうとするが、龍夜が綾姫の肩を押さえて離さなかった。


「…は、離しなさいよ…!」


綾姫の顔はますます赤くなる。


龍夜は徐々に顔を近づけて、綾姫の唇にキスをした。


「ひゅーひゅー!

昼間から熱いね〜」


さつき達は二人をからかった。


「な、な…な……!」


綾姫は顔だけじゃなく、身体全身が真っ赤になっていた。


「綾姫、俺と結婚してくれ」


「………はい」


綾姫は龍夜の申し出に素直にうなづいた。


それからすぐに二人の結婚式を行うため、みんな揃って結婚式場へ向かった。


あらかじめ用意してあったタキシードどウェディングドレスを着た二人は永遠の愛を約束した。


………


……



「俺はこれからも能力者犯罪捜査組織で仕事をやらせてもらう。

つぐないではなく、俺がやりたいからだ。

文句はないよな?」


「当たり前よ、文句なんかないわ。

でも、今日はデート…だから…仕事は明日からね」


二人は結婚式が終わったあと、二人だけで車に乗り、遊園地へ向かっていた。


デートの定番だからだ。


こうして、一年ぶりに綾姫は笑顔を見せた。


二人はこれから、幸せに生きていく。


また、ACGのような奴らが現れるかもしれないが、その時は二人で協力してなんとかする。


なんとか出来る自信があった。


さつきはあれから能力を鍛えて、綾姫の側近そっきんとなった。


立場は恭子を越えたが、力ではまだ恭子の方が上だ。


さつきは貴志と付き合い、やがては結婚をするつもりだ。


貴志はさつきにいいようにからかわれていたが、自然とつらくはなかった。


恭子はモデルの仕事を掛け持ちし始めて、すっかり有名人になっていた。


佳奈は相変わらず見張り役を任されている。


時々、綾姫とプライベートで遊んだりしている。


美由紀はお父さんのお墓を立てて、能力者犯罪捜査組織のメンバーとして今まで通りの生活をした。


綾姫のおじいちゃんは実家に帰り、余生を楽しむことにした。


平和な日常だ。


この平和は絶対に守り続ける。


みんな、そう心に決めて生活をした。


綾姫と龍夜は遊園地でデートしたあと、能力者犯罪捜査組織へ帰ってきたが、さつき達にからかわれた。


龍夜もさつき達と一緒に綾姫をからかう。


だが、綾姫は怒らず、むしろ喜んでいるようだった。


「お前、Mなのか?」


「違うわよっ!」


「だってからかわれてんのに喜んでいるから」


「あたしはこういう幸せな日常に喜んでたのっ!」


「言い訳は見苦しいぞ、綾姫」


「言い訳じゃないわよっ!

その口、叩き斬ってやる!」


綾姫はイレイズブレイドで龍夜に攻撃する。


もちろん本気ではない。


「悪かったよ、これで許してくれ」


龍夜は綾姫の唇にキスをした。


「な、な……な」


綾姫は一気に顔を赤らめる。


「何すんのよぉお!」


綾姫は喜びと恥ずかしさを見せながら叫んだ。


この幸せよ、永遠に続け…


みんな、心からそう思った。


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