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第十三話 修行

「千葉県の能力者犯罪捜査組織総司令官の白木綾姫です。

中へ入れてください」


本部にたどり着いた二人は見張り役の、でかい男性に言った。


「承知しました。

どうぞなかへ」


本部の入り口にある大きな扉がゆっくりと開かれた。


本部はかなり広く、迷子になりそうだった。


ひたすら真っ直ぐ進み、総司令官室にたどり着いた。


綾姫はノックをして言葉をはっした。


「千葉県の能力者犯罪捜査組織、総司令官の白木綾姫です」


「中へ入ってくれたまえ」


ドアの向こうから声が聞こえて、二人は総司令官室へ入った。


「始めまして、総司令官様」


綾姫は深々と頭を下げた。


「なんだ、おっさんじゃねえか。

ま、よろしくな」


龍夜は誰に対しても敬語は使わない。


よって、上司であろうとタメ口で話す。


「はっはっは、なかなか面白い人だな。

君が世界でただ一人のマスターアビリター、氷室龍夜だな?」


40歳くらいの中年の男性は笑った。


「そうだ、良く知ってるな、おっさん」


「敬語を使いなさいよっ!」


綾姫は龍夜をしかりつけた。


「はっはっは、別に構わないさ。

力では私のほうが弱いからね。

いくら偉くても力が弱いんじゃ迫力ないだろ?」


「総司令官様がそういうなら」


綾姫はしぶしぶならがうなづいた。


「さて、その傷はACGにやられたんだな?

報告してもらえるか?

何があったのか」


「はい、No.47漆黒の暗殺者リオンと名乗る者がやってきてあたしとおじいちゃんを切り刻んだあと、龍夜と戦ってギリギリで龍夜が勝ちました」


綾姫は簡潔に説明した。


「奴は精霊の力を使っていたぞ、おっさん。

今回はなんとか勝てたが、連戦となると勝ち目はゼロだ。

どうする、おっさん?」


「清々しいくらいの上から目線だな…

まぁ、嫌いではない」


「おっさんには好かれたくないんだがな」


「はっはっは、なかなか口が達者だな。

まぁそんな事はおいといて、奴らは全員、精霊の力を手に入れている。

違法な方法でな。

精霊を作り出した、という事が考えられる。

なぜなら精霊の力を正規に手に入れる事が出来るのはマスターアビリターのみだからな。

言ってることがわかるか、龍夜君?」


「…鳥肌たったじゃねえか。

頼むから龍夜って呼んでくれ。

まぁ、話しはわかったぜ。

つまり、俺に精霊の祠へ行けってことだな?

精霊の祠へ行って精霊の力を手に入れてこい、と」


「その通りだ。

しかし、知ってるかはしらないが精霊の力を手に入れるには試練を受けなければならない。

へたしたら命を落とすことになるかもしれない。

それでも行ってくれるか、龍夜?」


「当たり前だ、おっさん。

どうせ力を手に入れないとみんな死んじまうんだ。

だったら精霊の試練で死んだほうがまだましだろ?

それに、俺は死なねえ。

死ぬわけにはいかねえ」


「龍夜、ありがとう。

さて、綾ちゃん」


龍夜に簡潔にお礼を言って綾姫に話しかけた。


「すいません、綾姫と呼んで下さい。

鳥肌がたちました」


綾ちゃんと呼ばれたのは始めてであり、40代の中年の男性に言われると気持ちが悪い。


「はっはっは、冗談だ。

綾姫はイレイズブレイドの強化、そして体術の強化をしてもらう。

ようするに修行だな。

あ、安心してくれ。

もしACGがここに攻めてこようとしてもかなりの時間を稼げる。

結界が張ってあるからな。

1日攻撃され続けても壊れることはない。

いくら精霊の力を使っていてもな」


「すごい結界なんですね」


綾姫は驚いた。


「龍夜には地図を渡す。

そして精霊の祠に行き、精霊の力を手に入れて来る。

綾姫は私や他のみんなと共に修行をしてもらう。

綾姫の持つイレイズブレイドは精霊使いにとって天敵だからな。

これを鍛えないことにはいかないだろう」


「わかりました、修行頑張ります」


綾姫は言った。


「じゃあ早く地図をよこせ、おっさん」


龍夜は偉そうに言って手を差し出す。


総司令官はその手を固く握りしめた。


「なにしやがんだ、じじい。

気持ちわりいな」


龍夜は固く握りしめられた手を振りほどき、総司令官をにらんだ。


「はっはっは、冗談だ。

さて、これが地図だ。

龍夜には水の精霊の祠を訪ねてもらう。

ってかそれ以外の精霊の祠へは龍夜じゃ行けないからな」


精霊の祠へは誰でも行けるのだが、その能力のマスターアビリターじゃないと祠の中へは入れない。


精霊の祠は能力の数だけ存在する。


その能力を極めて、マスターアビリターになったものだけが精霊の力を手に入れる事が出来る。


ACGは違法な方法で精霊の力を手に入れたが。


龍夜は地図を受けとるとすぐに向かった。


綾姫は総司令官と共に修行場へ行き、さっそく修行に取り組んだ。


この時、さつきや佳奈や美由紀や恭子は本部の者によってここへ案内され、修行をやらされた。


佳奈は能力者ではないので、保護したという形になる。


他の県の能力者犯罪捜査組織の一員は全て壊滅。


生き残りはゼロ。


千葉県の能力者犯罪捜査組織では、綾姫のおじいちゃんはかろうじて息を吹き替えし、貴志は逃げ延びた所を本部の者に案内され、ここへやってきた。


貴志も修行をやらされた。


ACGの調査を担当していた本部の者が手に入れた最新の情報によると、ACGの奴らがここへ攻めてくるのは3日後。


一斉に攻撃をしかけてくる模様。


たった3日しか時間がないので、超ハードな訓練が行われた。


綾姫はイレイズブレイドの能力を強化し、マスターアビリターにするのが目的だが、たった3日では絶対に不可能だ。


なので、体術を集中的に強化しながらイレイズブレイドを使った実践訓練を行った。


他のみんなは能力の強化を集中的にやり、ついでに体術を強化するトレーニングをやらされた。


やがて訪れる最後の戦いに向けて…


その頃、龍夜は…


「はぁ、遠すぎる」


本部が東京都で、これから向かう精霊の祠は北海道にある。


車で空港に行き、飛行機で行かなければならない。


かなりの時間がかかる。


「はぁああ!」


綾姫は総司令官と実践訓練をしていて、手加減抜きの本気の勝負の真っ最中だ。


「甘いぞ、綾姫」


総司令官は必死に攻撃をかわす。


「精霊使いと戦うときは一撃でも与えれば勝ちなんだ。

だが、一撃も与えることが出来ないなら勝ち目はないぞ」


総司令官は綾姫に言った。


「はい!」


綾姫は攻撃を休めることなく言った。


綾姫はさっきのリオンとの戦いで傷ついているが、手当てもしないで修行をしている。


理由は一つ。


傷ついてボロボロになってる状態で修行をすることで、ACGとの連戦をイメージしているのだ。


無傷の状態なら一撃を与えることが出来る可能性はかなり高い。


だが、ボロボロの状態で一撃を与えることが出来なければACGとの連戦では勝てない。


綾姫は死ぬ気で修行をしている。


力では圧倒的にACGのほうが有利だ。


だが綾姫は、一撃を与えることが出来れば勝てるイレイズブレイドを持っている。


イレイズブレイドを操ることが出来るのは綾姫しかいない。


イレイズブレイドが綾姫の手から離れたらただの剣だ。


もちろん、一度イレイズブレイドを手放しても、もう一度綾姫が持つとイレイズブレイドの力は発揮される。


だから必死に綾姫を鍛える必要があるのだ。


綾姫はACGにとって天敵なのだから。


だがここで疑問がしょうじる。


なぜACGは天敵の綾姫を今すぐにでも殺さないのか。


それはまだ分からない。


3時間後。


「ちょっと休憩しよう」


総司令官は綾姫にそう言った。


「はい」


綾姫はひたいの汗を手でぬぐい、攻撃をやめた。


「まだまだ強くなるぞ、綾姫は」


「はい、頑張ります」


「はっはっは、冗談だ」


「そこは冗談じゃ困るんですが…」


「はっはっは、冗談だ」


「もう何がなんだか分かりません」


「綾姫は強くなるぞ。

身体が回復したら全身に重りをつけてさっきの続きだ」


「はい」


綾姫はしばらく休憩をした。




「やっとついたぜ」


龍夜はほこらの前にたち、つぶやいた。


祠の入り口には小さなドアがあり、祠はかなり小さかった。


祠の入り口を護るように男が目をつぶって座っていた。


「おい、そこの男、止まれ」


祠を護っている男に声をかけられた。


「すげえな、目を閉じてるのに俺が男だということを見抜くとはな」


「貴様は何をしに来た?」


祠を護っている男は目を開け、龍夜を見ながら言った。


「精霊の力を手に入れるために来た。

そこをどけ」


「そうか、ならば私を倒してから行け。

第一の試練だ」


祠を護る男は座ったまま龍夜に言い放つ。


「やってやろうじゃねえか」


龍夜は水の波を前方から発生させ、祠を護る男を飲み込んだ…はずだった。


男に向かっていった水の波はそのまま龍夜のもとへ戻り、龍夜を飲み込んだ。


「…(俺の能力を跳ね返した?

いや、ただ跳ね返しただけじゃない…!

俺は水の能力者。

俺相手には水は全く効かないはず。

水をコントロールすることで威力をゼロに出来るからだ。

だが、跳ね返ってきた水はコントロール出来ない。

なぜだ…?)」


「我に当たる攻撃は全て反射する。

反射した攻撃は必ず、攻撃をした奴に跳ね返り、必ず命中する。

我がここにいるだけで最強の壁になる。

我にはいかなる攻撃も通用しない。

絶対攻撃反射の能力者だ」


「なぜ跳ね返ってきた水で俺にダメージを与えられるんだ?」


「コントロールが出来ないようにして跳ね返したからだ」


「常識はずれだぜ。

だが、お前を倒す方法が必ずあるはず。

じゃないと試練をクリアできないからだ」


「その通り、我を倒す方法が一つだけある。

だが、その方法は教えることは出来ない。

この祠の奥にいる水の精霊様に口止めされているからだ」


「了解」


こうして、精霊の力を手に入れるための第一の試練が始まった。


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