表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

第十二話 本部

「なんの騒ぎだ…?」


龍夜は佳奈の部屋から出ようとしたとき、総司令官室の方が騒がしいのに気が付いた。


「何かあったのかしら?」


恭子はつぶやいた。


「行ってみましょう、佳奈はここに残って。

佳奈は能力者じゃないから、いざというときに危険だからね」


さつきは万が一の事を考え、佳奈を部屋に残した。


「なぜだか分からないけど、危険な予感がする」


美由紀は肩を震わせながらつぶやいた。


「美由紀もここに残れ。

危険な予感がただよってやがる」


龍夜は美由紀は部屋に残るようにと言って、みんなと共に総司令官室へ向かった。


総司令官室の前に黒い男が立っていた。


「ん?氷室龍夜?

ようやく見つけた」


黒い男…リオンは龍夜を見ながら言い放った。


「あ?誰だお前?」


龍夜はリオンを知らないみたいだ。


「おっと、自己紹介してなかったな。

俺の名前はリオン。

ACG…能力者犯罪集団のNo.47、漆黒の暗殺者リオンだ。

本名はリオン・ヴェルサスと言う」


リオンは丁寧に自己紹介をした。


「名前など聞いてねえ。

なぜ俺の名前を知ってるんだ?」


「君が殺したキールという男が持っていた情報だよ。

あ、キールって言っても分からないか。

感情操作の能力者と言えば伝わるか?」


「いまいち話が理解できないんだが…

お前は死人と会話できるのか?」


「精霊に聞いたのさ。

キールにも精霊がいた。

弱い精霊だったけどね。

精霊同士はどんなに離れていても会話することが出来る。

つまり、キールと君が戦った事やキールが死んだことも、全て知っている」


「精霊…だと……?」


龍夜の顔は一気に青ざめた。


「精霊について知ってるのか。

まぁ、これで俺がどれほど強いか分かってくれたか?」


「No.47と言ったな。

つまり、お前より強い奴が46人もいるということか!?」


「その通り、俺の仲間達は今、あちこちの能力者犯罪捜査組織に出向いているはずだ。

ものの数分で壊滅するだろうね。

ここも含めて、ね」


リオンは無邪気な笑みを浮かべた。


「逃げろ、こいつは俺が食い止める」


龍夜はリオンを睨み付けたまま恭子とさつきに言った。


「でも、龍夜一人で大丈夫なの?」


さつきは訊ねた。


「お前らじゃ足手まといにしかならねえ!

今すぐみんなを連れてここから逃げろ!」


龍夜は叫んだ。


「わ…わかった」


さつきと恭子は龍夜の覚悟に素直にうなづき、美由紀や佳奈達と共に建物から逃げた。


「なぜ逃げる邪魔をしなかった?」


龍夜はリオンに訊ねた。


「雑魚はいつでも殺せる。

それより、地上でただ一人のマスターアビリターである氷室龍夜を相手にした方が楽しそうだし」


リオンは無邪気に微笑んだまま龍夜に言った。


「ふっ、生まれて始めてヤバイと思ったぜ。

まさか精霊の力を持ってるとはな…」


龍夜は恐怖心をいだきながら言った。


「じゃあそろそろ始める?

あ、その前に一つだけ教えといてあげる。

俺の能力は必殺。

刹那の間に47回切り刻み、必ず殺す力。

まぁ、マスターアビリターである君なら5回くらい耐えられると思うけどね」


「なぜ俺にそんな事を教えた?」


龍夜はなぜ自分が不利になるような事を言ったのか分からなかった。


何も教えずに自分の能力を連発すれば簡単に殺せたはずなのに、と。


「ハンデだよ。

簡単に死んじゃつまらないじゃん。

言っとくけど、俺は君より10倍強いよ」


「上等じゃねえか」


龍夜は一瞬だけ微笑み、いきなり本気で能力を発動した。


龍夜の前方から氷の槍が大量に形成され、リオンに向かって飛んでいく。


「こざかしいよ」


リオンは刹那の間に大量の氷の槍を全て切り刻み、粉々にした。


「まだだ!」


龍夜は砕けた氷を水に変えてリオンを取り込み、また氷に変えてリオンを氷付けにした。


だが、氷付けにした瞬間にリオンをおおっていた氷は砕け散った。


「バカな…!身動きできないから剣を振るうことは出来ないはず…!」


「忘れたのか?

俺には精霊がついてるんだぞ?

たとえ身動きできなくても精霊は攻撃できる」


「……(こいつ…掛け値無しにヤバすぎる。

こいつより強い奴がまだたくさんいると言うのか!?)」


「今度は俺の番だよね」


リオンが言い終わった瞬間、龍夜の身体に無数の切り傷がついていた。


「…なぜだ…!

剣の攻撃範囲には入ってねえぞ…?」


「いちいち驚かないでよ。

俺は凄まじい速さで切ることが出来る。

それによりかなり離れた所にまで真空波が伝わるんだよ。

まぁ、普通に切るよりは威力は低くなるけどね」


「は…はは。

こんなに恐怖を感じたのは生まれて始めてだ」


龍夜は恐怖でわずかに身体が震えている。


「もっと楽しませてくれよ。

マスターアビリターは俺達の敵の中では最強なんだから。

君が死んだらこの世界は俺達の物になるんだよ?

もっと本気でやってくれなきゃ」


「…充分、本気なんだがな…」


「いや、まだ君は本気じゃない。

君は俺を殺さずに倒す方法を考えてる。

俺を殺す気でやればもっと力は使えるだろ?」


「…どうやらそれしか方法がねえみたいだな。

どのみち、お前を殺さねえとみんな死んじまうんだからな。

なら、たった今からお前を本気で殺しにかかる」


龍夜は全能力を解放した。


その瞬間、辺り一面が凍りついた。


「ほう、絶対零度のオーラを身にまとったのか…

これで実力は俺の3分の1くらいかな」


リオンは未だに余裕の表情を浮かべている。


「3分の1かどうかは自分の身体で確かめな!」


龍夜は手を後ろに伸ばして、水蒸気爆発を発生させとんでもないスピードでリオンの顔面を殴った。


殴ったあと、接触しているリオンのほほと龍夜の拳の間から水がにじみ出し、それを気化させ水蒸気爆発を発生させた。


リオンは吹っ飛ばされ、壁に激突した。


「…な…なぜだ?

君のどこにそんな力が…」


リオンは殴られた所を左手で押さえながら右手に持っている剣を握りしめた。


「な〜んちゃって」


リオンは壁に打ち付けられたはずなのに、一瞬で龍夜の後ろに回り込んだ。


そして直接龍夜の身体を切り刻んだ。


「ぐぁぁああ!」


リオンの攻撃をまともにくらった龍夜はそのまま倒れ込んだ。


「さっきの攻撃、普通の奴なら致命傷だったか、死んでいただろうね。

だが、精霊の加護を受けてる俺には致命傷にならない。

でも、ちょっとだけ痛かったよ」


「てめえ、もはや化け物だな。

勝てる気がしねえよ

で、さっきの瞬間移動はどういう原理だ?」


龍夜は絶望した。


「精霊の力だよ。

俺のような超高速の能力に精霊の力をプラスすることによって身体も超高速で移動することが出来る。

これだけ丁寧に説明してるのに俺に大ダメージを与えることが出来ないのか…

マスターアビリターと言ってもこの程度か。

もはや俺達に敵はいないな」


「能力が分かっていてもどうにもならねえこともあるんだよ」


「……(待てよ?精霊の力を使っていても身体は人間と同じ構造なんだよな?

ってことは…!)」


龍夜は希望の光を見つけ出した。


「もう終わりにしようか」


リオンはそう言って瞬間移動して龍夜の背後へ回り込んだ。


「甘いんだよ!」


龍夜は瞬時な背後を振り返りリオンの左肩に触れた。


龍夜はがリオンの左肩に触れた瞬間、リオンの左腕はこっぱ微塵に砕け散った。


「ぐあああ!」


リオンはなくなった左腕を押さえるようにして叫んだ。


「な、何をした!?」


「お前の体内なある水分を気化させて内側から水蒸気爆発を発生させたんだ。

どうやら、大ダメージは与えたみたいだな」


「…もう許さない!

容赦なく切り刻んでやるよ!」


リオンは精霊の力で瞬間移動をしながら超高速の剣技を放ち、それによって発生した真空波で龍夜を切り刻んだ。


「……(片腕がなくなっても剣技の威力が下がってない…!

正真正銘の化け物だぜ…!」


龍夜は必死に真空波をかわそうとするが、リオンの攻撃速度が速すぎる。


「…(あいつの身体に触れないと内側からの水蒸気爆発は起こせない…!

だが、精霊の力で瞬間移動しながら一定の距離を保ち、攻撃をしているからなかなか近づけない)」


龍夜は背後で水蒸気爆発を発生させ、自分の身体をリオンに向かって吹っ飛ばした。


「面白い、どちらが上か分からせてやる」


リオンも龍夜に向かって走り出した。


二人が近づいた時、リオンは超高速の剣技で龍夜を攻撃、龍夜はリオンの胸に手を置いて水蒸気爆発を発生させた。


………


……



「…(さすがに、これ以上は戦えなさそうだ…

ダメージをくらいすぎた)」


龍夜はリオンの剣技をくらい、そのまま後ろへ倒れた。


「…(あいつが立ち上がったら、俺の負けだな…)」


「はぁ…はぁ…

胸にでっかな穴があいちまったぜ」


リオンの声が聞こえた。


龍夜はかろうじて身体を起き上がらせ、リオンを見た。


リオンの胸はなくなっており、お腹からのびた皮膚がギリギリで首と繋がっていた。

精霊の加護を受けているのでまだ死んではいない。


「さすがに、今のは効いたぜ…

だが、君はもう立てない。

俺の勝ちだな」


「……そうみたいだな…」


龍夜はそのままあお向けに倒れた。


「君はかなり強かったよ。

だが、相手が悪かったな。

安らかに眠れ…氷室龍夜」


リオンは剣技を繰り出そうと、剣を握りしめた。


その後、切られた。


リオンが。


「綾姫、でかしたぞ…!」


龍夜はリオンの背後から現れた綾姫をかすかに見て、言った。


「ば、バカな!あの一撃で死んだはず…!」


「…あたしを…甘く見ないで…欲しいわね…」


綾姫はボロボロになった身体で、立っているのがギリギリだった。


「ならば…もう一度くらわせてやる!」


リオンは超高速の剣技を使おうとしたが、なぜか使えなかった。


「な、なぜだ…!

なぜ発動しない…?」


「…そうか、綾姫の持つイレイズブレイドの力によって精霊を消したのか…

精霊が消えればお前は精霊の力を使うことは出来ない」


「ぐっ、小娘ごときに…!」


綾姫はリオンに手錠をかけた。


「勝った…んだよな」


龍夜はつぶやいた。


「…そうね…お互い、ボロボロだけどね」


綾姫はそう言って崩れるように地面に座り込んだ。


「ったく…ACGってのはこんな化け物の集団なのか…

こいつより強い奴がまだ46人もいるらしいからな」


「修行しなきゃダメね、あたし達」


「無理だと思うぜ。

のんきに修行なんてしてる時間はないはずだ。

すぐにでもACGの奴らが来てもおかしくない。

マスターアビリターは世界中で俺一人だからな。

傷が全回復する前に俺を殺そうと思うのは当然だ」


「…なら、本部に行きましょう!

本部にはかなり強い能力者がたくさんいるの。

マスターアビリターはいないけど、色々な能力を持った人達がいるから敵の弱点をつくことが出来るかもしれない」


「…そうだな、なら本部へ行こう。

今すぐにな」


綾姫と龍夜はお互いに肩を貸しながら車に乗って能力者犯罪捜査組織の本部へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ