嘘つきの町
ある所に、Zという町がありました。
この町はダダル・Mという町長によって治められていました。
彼は多くの人が羨む大金持ちでしたが、どういうわけか、とても人気者でした。
度々民衆に多額のお金を配ったり、慈善活動にも多額のお金を出したりと、気前が良かったからです。
しかし、そんな彼のパフォーマンスには苦言を呈する人達も少なからずいました。
というのも、彼は実はとても虚栄心が強く、世界一の人気者になりたがっていたからです。
そしてその目的を達成するため、彼は国じゅうの民衆に対して、多額のお金を出す代わりに、多大な人気票を要求していました。
お金に弱い民衆は、すっかり彼の盲信者となってしまっていたため、彼には多くの人気票が集まり、望み通り、国一番の人気者になる事が出来ました。
そんな風だったため批判も少なからず受けていたのですが、彼は批判者に対してはいつも「お金さえ出せば誰かが助かるのに、私を叩いても誰も得しないよ」などと傲然と一蹴していました。
それは一見正論だったため、多くの盲信者達は「彼が稼いだお金をどう使おうが彼の自由だ」などとこれまた一見正論的な事を述べて彼を擁護しました。
ところが実は、彼は大嘘つきでした。
彼は、なかなか仕事が無くて困っている人々に優しい顔をして近づいては、「うちの町に来ればいくらでも仕事があるので、安心して生活出来ますよ」などとうまい事を言って騙しては次々と町へ誘い込み、奴隷にしていたのです。
つまり彼の資産の多くは、彼が直接稼いだわけではなく、哀れな奴隷達の重労働によって生み出されていたのです。
そして彼は、彼のために一生懸命働いて資産を生み出してくれる奴隷達の事など一切顧みる事も無く、お金は他所の町にばかりばら撒いていたのでした。
というのも、奴隷達にお金をばら撒いたところで、彼の求める人気票が増える等の、大した恩恵も期待できないからでした。
こうして傲慢と虚栄、そして欺瞞によって一世を風靡した彼でしたが、あまりに度が過ぎたため、最後にはとうとう怒った奴隷達の反乱により、広場に引きずり出され、吊るされてしまいました。