スペシャル赤ん坊、試練の時
読者の皆様、こんにちは。近年におきましては、春夏秋冬を問わず、とても暑い状況が続いていますね。水分補給をしすぎて身体が爆発しないよう、気をつけてお過ごしください。
第4章 スペシャル赤ん坊、試練の時
ーアラマの館ー
「ふぅ...今回の仕事は大変だったな。まさか戦闘中に別のキモンが乱入してくるとは。」「そうザマスねぇ。そのときはイケメンのライバル登場かと思って一瞬ドキドキしたザマスが、キモンで良かったザマス。さあ、次の仕事はどんなものザマスかねぇ?」
アラマさんの館で、先日の仕事の疲れを取る2人。アラマさんは居眠り中だったが、俺たちが人気テレビゲーム「哀れな鼻水」の話をして盛り上がっていると、ノソノソと起き上がってきた。
「あらま、2人とも帰ってきてたのかい?仕事お疲れさん。...何か言いたげな顔ねぇ、壮」「はい。私たちは同時に2種類のキモンを倒す実力が、既についています。今後、より強大なキモンに立ち向かうためにも、ぜひ新たな机撃技を伝授していただきたく...」俺は期待に満ち溢れていた。
「あらま、そんなことだったのかい。もちろんだわよ。でも、1つ条件があるの」
俺は、少しばかり驚いた。その理由は、これだけの功績を作ったならば当然強力な机撃技を覚えられるだろう、とタカをくくっていたからだ。「そ、その条件とは?」俺は困惑した様子で聞き返す。すると、ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、アラマさんはこう言い放った。
「この赤ん坊を笑わせてみなさい」
差し出してきたのは無表情極まりない赤ん坊。「なんだこれザマス!?私たちは赤子をあやしている暇など無いザマス!!」久保田くん、激昂。
「あらまぁ、まあまあ、落ち着いて聞きなさい。この子は一見すると人間のように見えるだろうけど、実は私が作ったサイボーグなの」なるほど、どおりで不気味なまでに無表情なわけだ。
俺は一番気になっている疑問を投げかける。「どうすれば笑うのですか?」アラマさんは、再び気持ちの悪い笑みを浮かべながら話しだす。
「短歌を作りなさい。それも、飛び切りパワフルな短歌をね。ちなみに短歌というのは、五・七・五のリズムで詠むアレのことで、季語なんかは必要無いわよ。...それとも、あらま、そういう分野は苦手なのかい?」「できますとも!!」「余裕ザマス!!」俺たちは即答し、10日間の長考の末、いくつかの候補を赤ん坊に贈ることにした。
「それでは、私から詠ませていただきます。」
アラマさんと久保田くんは、真剣な表情で俺を見つめる。なに、飛び切りパワフルな短歌を詠めばいいのだろう?俺にとっては朝飯前だ。
「...雄叫びで 周囲を破壊 中村くん」
サイボーグの赤ん坊は、残念ながら無表情のままだった。
「中村くんは、大学時代の友達です。嬉しいことがあったときに雄叫びを上げるのですが、近所迷惑だと評判でした。」俺は歌の意味を説明した。それに対し、「いいから次の歌を詠むザマス」と久保田くん。俺も準備を整える。
「...強すぎる 全知全能 ゼウス神」
しかしながら、またしても赤ん坊は無表情のままであった。何故だ?この歌ならば笑わせられると思ったのに。まあ良い、歌の説明をしてやろうか。
「ゼウス神は、かつて私が飼っていた犬の名前です。あの子は、想像を絶するほど芸が達者で、他のどの犬よりも多種多様なパフォーマンスができました。それだけでなく、予知能力によって危機に瀕していた私を助けてくれたり、前足と後足を器用に動かして、料理を振舞ってくれたこともあるんです。そんな愛犬を見て、まるで”全知全能だ”と感じた。そのインプレッションを、そのまま歌にしてみました」
それに対し、「いいから次の歌を詠むザマス」と久保田くん。俺も準備を整える。
「次が3首目の歌です。それでは詠みます...!!」そう俺が言うと、辺り一面に緊張が走った。大学時代の友と深淵なる女性は、再び息を飲んだ。
「...破壊神 踊り狂って ドンドコドン」
これは俺にとっての渾身の一首だった。さあ、吉と出るか凶と出るか。
「.........ニヘッ」
お!!
「ニヘッ、ニへへへへ!エヘヘヘ!」
おお!!笑った!!笑ったぞ!!その時俺は、感動のあまり全身がガクガクと震えだし、涙がボロボロと溢れ出るのを感じた。
「......あらま、合格ね。おめでとさん、壮」と嬉しそうなアラマさん。「はい!!私、やりました!!この子を笑わせることに成功致しました!!」と感極まる俺。そこには、温かく、そして喜びに満ちた空間が広がっていた。
さらに、「やるザマスね、壮。これには私も完敗、恐れ多いザマス。」と、珍しく久保田くんも感服している。良かった、本当に良かった。
しかし次の瞬間には、「私も負けてられないザマス。壮、アラマ、私の歌を聴くザマス」と積極的な態度を見せる彼。そうだ、そういうところだよ、お前が俺の親友たる部分は。
「私が用意したのは一首だけザマス。この一首に、私の人生の全てを込めたザマス」俺とアラマさんは、気持ちを切り替えるとともに、自信に満ち溢れた彼の歌を聴くことに集中し始めた。さあ、どんな歌を詠むのだろうか。ワクワク、ドキドキの瞬間。
「それでは、心して聴くザマス!!!」
今回も、お足元の悪い中この作品を読んでくださってありがとうございます。今日の朝ごはんは、カレーライスと醤油ラーメンにしようと思います。




