表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新・ひだまりの国  作者: 白波
第1章 はじまり
2/4

第2話 どうやら異世界に来ていたようです

 さて、私がいきなり流氷の上に飛ばされるという衝撃体験をしてから約一週間。

 ちゃんとした女の子である私としては、いい加減お風呂に入りたい今日この頃ですが、この一週間でいろいろなことを理解しました。

 ここにきて、長々と語るのもつまらないので私がこの一週間つけ続けていた日記でこの一週間の出来事を振り返ることにします。


 なお、この日記は流氷の上に飛ばされる寸前も飛ばされてからも手元にあるノート(108円)にいつも持ち歩いているボールペンで記されたものだということも明記しておきます。



 *




 〇月〇日 漂流1日目 天気:晴れ

 目が覚めると、海の上を流れる流氷の上にいた。

 偶然乗り合わせた(?)男の人(ヴァーテルという名前らしいので、以下ヴァーテルと書きます)に話を聞いてみると、どうやらここは北極でも北海道でも、もう少し言えばロシアでもないらしい。もちろん、南極でもない。そのあたりについて、詳しく話を聞いていると私の知らない地名ばかり出てくるので、そもそも、私が知っている世界ではない可能性が出てきた。

 もっとも、そのあたりの事情については陸地につけばはっきりとするだろう。


 ヴァーテルが言うには、生きて陸上につく可能性は神のみぞ知るとのことだ。


 この先どうなるのでしょうか……


 あぁカニ鍋が食べたい。




 *




 〇月△日 漂流2日目 天気:吹雪

 寒い! とにかく寒い!

 ヴァーテル曰く、このあたりではこれが普通らしい。昨日みたいに晴れているのは奇跡だとのことだ。なんでこんな過酷な環境でヴァーテルが生き続けているのか気になるが、そんなことよりも寒い! 寒すぎる!

 ダメだ。寝てはいけないとわかっていても眠気が……


 こたつでテレビを見ながらごろ寝して、みかんを食べたい。




 *



 〇月◇日 漂流3日目 天気:猛吹雪

 昨日以上の猛吹雪だ。

 ヴァーテル曰く、時々あることらしい。時々ぐらいのタイミングでこんなことがあってたまるかと思うのだが、気象現象なのだから仕方がない。

 なんかいろいろな感覚がマヒしてきた気がする……私は生きて陸上にたどり着けるのだろうか……


 あぁキムチ鍋が食べたい……




 *




 〇月▽日 漂流4日目 天気:花?

 よくわからない……

 なぜか、起きてみたら雪ではなく花が降ってきた。


 突然の出来事に動揺する私をよそに、ヴァーテルは食べ物じゃなくて残念だとか言っている。


 本当になんだんだろうか。わけがわからないよ。


 深く考えてはいけないのだろうか……


 かき氷が食べたい。




 *




 〇月口日 漂流5日目 天気:吹雪

 今日もまた吹雪だ。

 こればかりはどうやっても慣れることができない。


 ヴァーテルに聞いたところ、この世界にはたくさんの魔法があるらしい。

 その魔法はすべて系統分けされていて、古代からある自然の力を使うものと、最近になって作られた新型魔法があるそうで……なお、ヴァーテルは古代魔法の水魔術なるものが使えるらしい。


 いろいろと気になるところではあるが、ヴァーテルは今はそれどころじゃないと言って語ってくれなかったので、この疑問は後日に持ち越されることに……後日があればの話ですが


 ……唐揚げが食べたい。




 *




 〇月◎日 漂流6日目 天気:吹雪

 そろそろ記号がなくなってきた。そもそも、こちらの世界に日付という概念があるのか、あるとしたらどういう考え方なのかという点がわからなかったので、記号を使っていたのだが、いい加減思い浮かばなくなってきた。

 ヴァーテルにそのことを相談してみたら、日付について教えてくれるわけでもなく、ただ単に“記号を二つ使えばいいじゃないか”という返答が返ってきた。


 おでんが食べたい……




 *




 〇月〇△日 漂流7日目 天気:猛吹雪

 おでんが食べたい。




 *




 以上のように一週間を振り返っていた私は、今まさに希望に満ち溢れていたのです。


 とでも言いたいところですが、残念ながら私の視界はどこまでも広がる海とそこを流れる流氷に覆われています。

 そろそろ毎日の唯一の楽しみである日記に書くこともなくなってきたので、何を書こうかと考えながら私は流氷の上に寝転がります。普通だったら、この段階で冷たくてどうしようもないと思うのですが、どういうわけかそうできてしまうわけです。これもきっと魔法のおかげなのでしょう。


 はぁおでんが……


 その瞬間、私の頭に衝撃が走る。


「いい加減にしろ! そのオデンとかなんとか食べ物のことばかり考えているな!」

「痛っ! 何をするんですか!」

「毎回毎回、よくわからない食べ物のこと書いて何が面白いんだ! どれだけ食いしん坊なんだ!」

「なんだっていいじゃないですか。食べたいんだから」


 私が頭をさすりながら反論しますが、ヴァーテルは引き下がる気配を一切見せません。むしろ攻勢を強めて来ました。


「全く。こっちは必死に魔法で流氷を維持しているというのに……何か手伝ったらどうなんだ」

「無茶を言わないでくださいよ。私、魔法なんて使えませんから」

「あぁそういうやそうだったな。とにかく、俺の維持がどれだけできるかわからないからな。割れたときは割れたときで覚悟しておけよ」


 そういったあと、ヴァーテルはその場で寝転がりました。

 一体全体何が彼を怒られてしまったのかわからないが、私は小さくため息をついてから起き上がります。


 あぁおでんが……


「だからいい加減にしろ!」

「なんで私が考えていることがわかるのよ。まだ日記すら書いてないのに。何? 私の頭の中をのぞき込むような魔法でも使っているの?」

「そんなものは使えない! だがな! お前の雰囲気を見ていればわかる!」


 意味が分かりません。まぁそんなことよりもおでんが……


「何度言えばわかるんだ!」


 私はそのままヴァーテルに蹴られて海に落とされました。


 結局、氷漬けになった私が海から引き揚げられたのはそれから約20分後のことです。


 多分、この人流氷の上にずっと取り残されていてイライラしているんだろうな。そんなことを考える一方で私は思います。


 あぁおでんが食べたい。


 そんな私の食欲はさておいて、今の状況を簡単に説明するならば、私はどうやら平行世界(パラレルワールド)もしくは異世界と呼ばれるところに迷い込んでしまったらしいです。

 なんか魔法とかが存在している世界ですが、ここでよくあるライトノベルみたく魔王を倒す展開になったりするのでしょうか?


 もっとも、この世界には魔王など存在していないようですが……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ