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ニセモノの勇者がホンモノの勇者になる話  作者: 平 来栖
第7章 ステキな騎士たち
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その9

 「クッ、なんなんだこれは!? 」


 N2は突如飛来してきたジャベリンの凶撃を間一髪でさけ、なんとか致命傷をまぬがれることはできた。

 

 だが、コートの裾を槍で縫い留められてしまい身動きが取れなくなってしまう。そして上空に新たな気配が迫っていることをN2はすぐに察知する。


 もはや一刻の猶予もない状況ーーー


「テンタクルエッジを、いや、ダメか!!」


 先ほど飛来してきたジャベリンにテンタクルエッジが破砕された光景がフラッシュバックする。


 信じがたいことではあるが敵の武器は最高峰の希少金属ロスティスの強度を上回っているのだ。

 ここで分の悪い賭けにでて虎の子であるテンタクルエッジをすべて失う訳にはいかなかった。



「なら、コレを使わせてもらおうっ!!」



 そこでN2は自分を大地に縫い留めているジャベリンに手を伸ばし意識を集中させていく。


 身器統一(コンセントレーション)の境地、N2の身体は一瞬のうちにジャベリンの一部と化していく。


 その直後、雲の壁を切り裂いて二撃目のジャベリンが降ってきた。

 それは正確無比にN2の脳天目がけて落下してきた。


 

 「スゥ――――」



 武器と化したN2はジャベリンを大地から引き抜くと同時に垂直に投げ放つ。


 引き抜いた際の勢いはすべて攻撃に転化され、さらにコートによって強化された全身のバネにより投擲の速度は即座に音速の領域に突入した。長槍は真空波を生じさせながら天に昇っていく。





 ボガァァァァァァァン!!!





 そして槍が衝突しただけとはとうてい思えない爆発音が上空で鳴り響く。


 そのあとに細かい金属片が小雨のように降り注いでくる。



「デタラメな威力だな……また来るのか!?」



 そして休む間もなく新たな殺気が上空から迫ってくる。

 その気配は先ほどと同じようにほぼ真上から感じられた。



(この攻撃ーーー正確すぎる。どこかで僕を見ながら攻撃しているのか? いや、そんなレベルの話じゃない。三回とも僕の真上をとらえてるんだぞ…人間業じゃない。 いったいどういうカラクリだ?)



 そこでN2は先ほど長身の騎士アプリスが放った捨て台詞を思い出す。



『残念だがN2、痛い目を見るのはお前の方だっ!!! アルテナ様っ!! 後は頼みますっ!!』



『起動させました』




(……この攻撃はさっきの捨てゼリフがトリガーになっているに違いない。そしてアルテナという奴が攻撃の主だとするならあの騎士はあの一瞬で僕の位置を正確にアルテナに伝えたということになる)


 アプリスの姿はすでにどこにも見当たらない。

 N2がジャベリンを避けている間に重滑走(ムーヴィング)によって離脱したようだった。


 そんな状況で寸分の狂いもなくN2の位置を伝えるとなると―――



「ふつうに考えて不可能……ヤツ等のいうところの発掘良品(ネオメア)とやらの力か」


 アプリスは去り際に紅い光をN2に当ててきた。そして『起動させました』というその場にそぐわないセリフからもその線が濃厚であると思われた。



 「だが本当にそれだけなのか?なにか、まだ……決定的な見落としがあるような気が…」



 どうにも釈然としない。

 2発目の槍もN2めがけて飛んできた。そして今まさに迫っている3発目のジャベリン。

 2度目の攻撃をやり過ごした際にN2は大きく移動もしている。


 にもかかわらず3発目の槍はその移動後の位置にピタリと照準を定めているのだ。

 

 恒久的にN2の位置を把握できるのか、それともまだアプリスがまだどこかにいてN2の位置を伝え続けているのか。



 「未知なる攻撃、おまけにロスティスをも打ち砕くほどの威力……まったくイヤになる。セシリア様を助け出す前にこんな強敵に出会ってしまうとは。だが、やるしかない!」



 ひとりごちるとN2は赤い一つ目を一瞬きらめかせながら覚悟を決める。

 そして手近な廃屋の中へと身を滑らせ臨戦態勢をとる。


 屋内に入ってしまえば位置を見失ってくれるかと一瞬期待したが、残念ながら身を押しつぶすようなプレッシャーと殺気は変わらず天上に存在していた。


 しかしN2は最初からそんな薄い望みに期待したわけではなかった。

 彼は少しでも生存確率をあげるためこの廃屋に逃げ込んだのだった。


「この暗さでしかも上空からだと距離感がいまいち掴めない。だがここならば着撃の瞬間は視ることができる」


 N2は自らを勇気づけるかのように己の考えを口にする。


 あのジャベリンの勢いならば屋根に激突してからN2までの距離などほんの一瞬にしかすぎない。が、それでも攻撃の瞬間を確実に視認できるのは大きなアドバンテージであった。


 N2クラスの達人ならば攻撃の方向さえ分かれば避けることはそう難しいことではない。不確定要素さえなければ―――




「―――おいでなすったッ!!!!」




 バリバリバリバリバリバリ!!!!!


 

 落雷が落ちたかのような炸裂音が鳴り響くのと同時に屋根をつきぬけジャベリンがN2の元へと迫ってくる。


 N2はジャベリンの進入角を見て取るやいなや、すぐさまバックステップで回避行動をとりその攻撃の軸から身を逸らす。


 少ない動作ではあったがこれで確実にジャベリンの凶撃を躱すことができるはず。





 だった。




「何だとぉぉぉ?!!」



 しかし、ジャベリンの先端がN2の眼前で突如として飴細工のようにぐにゃりと曲がった。

 

 そして天井からN2までのほんの一瞬の間に軌道が再びN2を直撃するコースへと変わった。


 

「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉおお!!!!」



 N2はありったけの武器を袖口から吐き出し防御壁をつくる。

 少ない動作で回避行動をとっていたおかげで生まれた刹那の余裕が明暗をわけた。


 


  ガキィィィィィィィィィィィィンンンンンン




「くぅっ」


 ジャベリンはロスティスの壁をいともたやすくつらぬきN2の元へと迫った、が、最後、重滑走を防いだロスティス・マスドライバーに奇跡的にぶつかり、それによって軌道が変わりN2を直撃するコースから逸れた。


 だが、N2は計り知れないダメージを負っていた。

 なぜなら―――




「くっ、くそ、な、なんてことだ、こ、これ、すごく高いんだぞ、セ、セシリア様になんて釈明すればいいんだ―――」



 N2の代名詞とも呼べる紅い一つ目の兜、その瞳部分がジャベリンの衝撃により砕かれ、そこから生じた大きな亀裂が兜全体に走り、もはや防具としての用をなさない、ガラクタと化してしまった。



 そしてその亀裂の隙間からはN2の素顔―――ギアック=レムナントの狼狽した表情がのぞいていた。



「こ、これ、弁償になっちゃうのか!? い、いや、ムリだろ!? とても払えないぞ!? だがあの人ならきっと間違いなく弁償させるはず!! さっきもらった20万ギルダなんかじゃ足しにもなりゃしないぞ、ちきしょう、接着剤とかでくっつかないか―――」


 

 しどろもどろになりながら兜の破片を集めて回るギアック、その姿からは普段のN2としての威厳は微塵も感じられなかった。



 そして大部分の破片を拾い終えたギアックは立ち上がると、いきなりその破片をすべて投げ捨てる。



「なんてこった――――」




 絶望に満ちた表情でつぶやくギアック、

 この時彼は遥か天空から迫る殺気をふたたび察知していた。


 

 そしてその殺気の数は1つではなく―――少なく見積もっても5つは感じられたのであった。


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