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ニセモノの勇者がホンモノの勇者になる話  作者: 平 来栖
第7章 ステキな騎士たち
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その8

(な、なにが起きたのだ)


 N2にむかって重滑走(ムーヴィング)を仕掛けた直後、ロイドは身体が天に向かって昇っていく感覚を味わっていた。


「ロイドオォォォォーーーー!!!」


 そして遥か彼方でアプリスの叫ぶ声を聞く。

 一体なにが起きたのか、ロイドは何一つ理解できなかった。


(エ、N2はどこに行ったのだ!? そ、それにアイツは何をあんなに必死に……ッ!!!?)


 その時、突如として上昇していく感覚が終了し、ロイドは自分の身体がゆっくりと落下を始めていることに気づく。


 その落下はロイドが今まで経験したことがない程に長くつづき、途方もない高さから落ちているのだという事を肌で感じる。


 なぜこんなことに? そんな疑問を吟味する間もなく落下速度は加速度的に増していき、呼吸をするのも困難なほどに空気の流れが速くなっていく。

 

 こんな高さから落ちたらどうなるのか―――考えるまでもない。


 ロイドは避けようのない死を実感してしまい、恐怖で内臓が収縮していくのがわかった。


 この縮こまった内蔵が数秒後には身体を突き破って大地にぶちまけられる―――そんな想像をしてしまい全身に恐怖が広がっていく。


 なぜ なぜ こんなことに 


 なぜ なぜ


 だれかたすけてくれ 


 なぜ こんなめに 


 なぜ こわい 


 なぜ なぜ なぜ




「なぜなんだぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!」



 ロイドの今際の言葉は現状に対する疑問の叫びであった。


 そして―――





 ドオオオオオオオオオオン



 


 ロイドの身体が大地にしたたかに叩きつけられる。






 ―――だが、彼の予想に反して萎縮しきった内臓が周囲にぶちまけられることはなかった。






「だ、だいじょうぶか、ロ、ロイド」


「ア、アプリス」




 ロイドは下敷きになっている同僚の顔を信じられない思いで眺める。




「お、お前、オレをかばって」


「き、気にするな、そ、そんなことより早く逃げるぞ」


 感謝の言葉を告げる暇もなく撤退を告げられロイドは混乱する。


「に、逃げるだと、な、なぜだ? ここでN2を確実に仕留めなければならないのではなかったのか?」


「認識が甘かった。ヤツには二人がかりでも敵わない」


「き、貴様、怖気づいたのか」


「なんとでも言え。文句は後でいくらでも聞いてやる。とにかくヤツには重滑走は通用しない。離脱だけに専念するんだ。そうすれば活路はある」


「な、何を言っている!? 重滑走が通用しないだと!? そんなことがあるわけないだろ!?」


「現実を見ろ!! お前は今死にかけてたんだぞ!! お前の落下地点だってN2が教えてくれなければ分からなかった。次は間違いなく助けられん!!」


「い、一体なにがあったというのだ」


「相談は終わったか、それじゃそろそろお前たちの目的でも教えてもらおうか」



 その時、ロイドとアプリスの会話を遮って闇の中からN2が姿を現す。

 そしてその肩には巨大な板状の物体がのせられていた。



「な、なんだアレは……? アイツいつの間にあんなモノを」


「アレがお前を天まで運んだんだ……N2の重滑走封じの秘策だ」


「秘策などと大層なモノじゃない。ただ、お前たちの動きを観察したところ単純な直線運動だったからこれで事足りると判断したまでだ」


 N2は肩から板を下すとそれを地面に突き刺し固定する。

 よく見るとそれは途中からカーブがかっており、まるで子供が大好きな上から滑り下りる遊具(滑り台だよ)のようにも見えた。


「先史時代には船がはるか星の宙まで旅をしていたそうだ。その際に使われていた発射台を模して結合してみた。まあ、言うなればロスティス・マスドライバーといったところかな。空のお散歩は楽しんで頂けたかな?」


「た、楽しいワケがないだろう、そ、それにしてもロ、ロスティスだと? い、いったいお前はなんなんだ」



 驚愕するロイドの耳元にアプリスがささやくように告げる。


「……N2は暗器使いとは聞いていたがあんな容量(サイズ)違いのモノを袖から出せるワケがない。N2がまとっているコートは間違いなく発掘良品(ネオメア)だ。それもオレたちのスピードメイルよりも数段高ランクの良品に違いない」


「な、なんだと」


「……それに加えてあの化け物じみた反射神経だ。お前は重滑走が直線運動だと分かっていたからといって反応できるか? 見えているだけじゃダメだ。重滑走の軌道を正確に見切ってその進路上に一瞬の内に配置しなければならないんだぞ。人間業じゃない。ヤツは時速300キロメトルの世界に反応できる反射神経を持っているのだ。……ここまで言えばオレの言いたいことは分かるな」


「クッ……………不本意ではあるが…………仕方ない……」


 

 ロイドは悔しさを顔一面ににじませながらもアプリスの言葉に同意する。最後の最後で判断を誤らない理性だけは持ち合わせていたようだった。


 そしてN2に背を向け重滑走の体勢に入る。



「ほう、逃げるか。いい判断だ。だが、そうはさせない。お前らの目的にも少し興味が沸いたからな」


「なにっ!?」


「痛い目にあってもらおう」


 N2はそう言うと右腕に左手を添え発射の体勢をとる。

 

 袖の奥に隠された暗器の一部が月光を受けてキラリと一瞬きらめいた。



「アプリスッ!!!」


「ああっ!! 行くぞロイドっ!! 前だけ見て疾走(はし)れ!!!」


「この悪夢から逃げきれると思っているのかっ!? 甘いぞ騎士たちっ!!」


「残念だがN2、痛い目を見るのはお前の方だっ!!! アルテナ様っ!! 後は頼みますっ!!」


 アプリスはそう叫ぶとN2に向かって紅い光を当てる。

 スピードメイルに内蔵されたもう一つの機能、位置情報発信機能の残光だった。


「起動させました」


「何だと――――!!!?」



 紅い光をうけたN2は二人に向けていたテンタクルエッジの刃先を突如として天に向け、そしてそのまま躊躇することなく発射する。


 

 バシュゥッ





 パリィィィィン







 そして直後にテンタクルエッジが、ロスティスが空中で砕かれた音を耳にするのであった。




「競り負けただとっ!? クッ!!」



 慌てて回避行動に移るN2だったが、その前に飛来した巨大なジャベリンによって大地に身体を縫い留められてしまう。

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