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ニセモノの勇者がホンモノの勇者になる話  作者: 平 来栖
第6章 ステキなおともだち
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その8

 グラムの真意を聞いたグラディアート家の面々は再び押し黙ってしまう。


 問題の内容が先ほどから大きく変容してしまったからである。


 話の真贋はこの際置いておくとして、グラム=グラディアートが今の話、ザンブレイブの秘面の物語を史実だと信じてしまっていることが問題なのである。


「その、もう一度確認させていただきたいのですけども、今のお話し、お父様は本当に信じていらっしゃるの?」


 最後のあがきとばかりにマヘリアが再度問いかける。


 するとグラムはアゴヒゲを撫でつけながら困った表情を浮かべる。


「……半分程度かな。個人的に思うところもあってね。でも一番の問題は五大家の老人たちがザンブレイブの件を信じ切ってしまっていることだよ」


 五大家


 それはグラディアート家を陰から支え、ミレニムの発展に尽力してきた五つの名家。

 その影響力、発言力は領主であるグラディアート家でさえ無視することはできないものであった。


「……あの老害どもが騒いでるのね」


「ダメだよそういう事言っちゃ。キミたちの誰かが領主になった暁には必ずあの家にお世話になる時が来るんだから。普段から礼を失してはダメだ」


 そういうのは必ず出てしまうからね、と念を押すように言い含めてからグラムは再度、皆に向き直る。


「……まぁ、そういう訳だから今回の件については僕の意向が半分、あとの半分は政治がらみが半分ってところだね。こんな物々しい会議になったワケ、察してもらえたかな?」


 グラムはペロリと舌を出して顔の前で手を合わせる。

 

 グラムはつまり、鉄血会議開催の裏には五大家に対するポーズの意味が多分に含まれている、という事を言っているのであった。


 緊急召集された参加者たちとしてはそれは面白くない事実だったが、その事実に対して面と向かって抗議や意見を言える程の立場ではないと誰もがわきまえていたため、声を荒げる者は皆無だった。



「………………」



 そして真実が告げられても事態は何一つ好転しない。


 ダテンシから遺跡を奪還するのに一体どんな方法があるというのか、誰もがその答えを持ち合わせていなかった。そんな悩める子羊たちの先手を打って、グラムがさらに続ける。



「あとゴメン。これは当たり前すぎて言わなかったけど、一応伝えておくね。今回の件で外部の力を借りるのは絶対にNGだ。ミレニムを救うのはミレニム内部の力によってなされねばならないからだ」


「……それは……つまり王都に支援を求めるな、という意味でしょうかお父様?」


 片目が前髪でふさがっている青髪の少年が挙手し、発言する。


「そう、その通りだよゼロムス。王都に借りは作っちゃダメなんだ」


「ですがダテンシについては王都の正騎士団に一日の長があります。彼らは実際にレコンギスタ教団と戦って勝利をおさめてるわけですから。実戦の経験が違いすぎます。それに近年彼らは新たなオーパーツを手に入れて戦力を増強したとの噂もあります。援助を求めるのが一番の得策かと」


「それはキミに預けてるミレニム騎士団じゃ荷が重いって意味かい?」


「率直に申し上げてそうです。まだ着任して日が浅いですがあれはただの烏合の集です。先だってのダテンシ襲撃事件で人数も減ってしまいましたし、とてもまともに機能しているとはいいがたいです」


「う~~ん、それを機能させるのがゼロムスの仕事だと思うんだけど……前任のセシリアはそれなりに努力してたよ……」


 グラムは誰にも聞こえないように愚痴をこぼす。

 

「でもでも最近ミレニム周辺に生息しているダテンシが狂暴化してるってハナシじゃないですかぁ。ミンナいってますよ。え~~~っと、なんだっけ、昔よく聞いてた、えっと、たしか、仮性化でしたっけ? ……えっ? 亀が皮かぶるってこと?」


「活性化だバカモノ」


 背骨がないのか常にフニャフニャしているボサボサ頭の少女に、口を真一文字に結んだ姿勢正しい少女が合いの手を入れる。

 

「今メメアとルナが言ったようにミレニム周辺のダテンシは活性化している可能性があります。先だっての水の離宮の襲撃事件もその事実を裏付けております。それはすなわちレコンギスタ教団に生き残りの残党がいた可能性をも示唆しています。もしかすると教団自体が再建されている可能性だって捨てきれません。だとすればこれはすでにミレニム自治領だけの問題ではない、世界規模の問題なのではないでしょうか」


 ゼロムスは姉妹の発言で自説を補強し、グラムを説得しにかかる。


 それは真に世界的危機の到来を憂いての発言か、それとも自分の管理する組織にお鉢が回って来るのを避けたい保守的な思いからの発言なのか、彼の感情に乏しい表情からは読み解けそうにはなかった。


「なるほど。それがゼロムスの意見か。なるほど、なるほど」


 

 グラムは何度もその場で頷きゼロムスの発言を咀嚼する。


 そして視線をゼロムスに合わすと開口一番。



「ゼロムス、お前は失格だ」



 ………………………………



「えっ? ちょ、まっ、だって、僕は、ミレニムのことをかんがえ」



 バァン!!


 その時、会議室の扉が乱暴に開かれ黒服を来た男たちがなだれ込んでくる。


 そして呆然としているゼロムスを担ぎあげると一言も発さず会議室を後にする。


 ―――それは、ものの数秒の出来事であった。


「先だってのレコンギスタ教団による聖地返上によって多くの領地を失った王都は植民地づくりに躍起になっている。連中に借りをつくればそれはすなわち泥棒にカギを渡したことと同意義になる」


 驚きのあまり言葉を失っているグラディアート家の面々に向かってグラムは諭すように告げる。


「乗っ取られるぞ。連中を甘く見ない方がいい。私がお前たちに望んでいるのは歯車となることだ。ミレニムの独立を守りながら維持・発展させる優秀な歯車になって欲しいと、心からそう願っている」

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