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ニセモノの勇者がホンモノの勇者になる話  作者: 平 来栖
第1章 ステキな出会い
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その5

「それでエルシーは何を見ていたんだい?一人でさ」


 ギアックに背を向けエルシーの肩を抱くミユキからは、「ギアック、テメーはもう消えろ」オーラが滲み……あふれ出ていた。


 そんな子供らしい態度を目の当たりにして、ギアックは怒りよりも可笑しさを覚えてしまう。


(大人っぽい見た目の割にずいぶん幼稚な事するなぁ)



「えっ、えっ、えっとぉ、その、あの」



 だが天使なエルシーにとってはそんな険悪な雰囲気は耐えがたがったようで、彼女は救いを求めるように視線を巡らせる。



 そして―――あることに気付く。



「あれ?」


目を何度もしばたかせ確認したが間違いない。

 あるはずのモノが無くなっている。


 大掲示板に張り出されていた謎の赤紙の通達、それがこつぜんと消えていたのであった。



「あれっ?なんで?」



「…………」



 小首をかしげるエルシーにギアックは目で訴えかける。

 そして二人の視線がバチッと交差するとエルシーは「ああ」と納得したような表情になり、ミユキに向き直る。



「え、えへへ実は今日の晩御飯の献立を見てたんだ。二人でね! 

 それで私トマト苦手だから食べてくれない? ってお願いしてたの」


(ナイスだ。エルシー。さすが入団以来の腐れ縁)


 赤紙の存在を微塵も匂わせない理想の回答をしてくれた同期に、

 次回の「嫁にしたい推しメンは誰だ!? ドッキドキ総選挙1919夏」もエルシーに投票することを固く誓うギアックなのであった。



「なに? そんなことかよ? すっごく深刻そうな顔してたから何事かと思っちゃったよ。ダメだぜ? エルシーはちっちゃいんだから好き嫌いなんかしちゃ」


「もぅーひどいよミユキ!! わたしだってちゃんと成長してるんだから!?」


「ああ、悪い悪い。そうだな。たしかに出るとこは出てるもんな」


 ポヨン


「も、もうっ、そういう意味じゃなくて―――あ」


「おうおう、全く何を食ったらこんなに育つんだか。アタシにも教えて欲しいもんだぜ」


「もう、あ、や、やめてよ、そんな、乱暴に、あっ、しちゃ、うん、ダメだって………………………ハッ!!!」




 エルシーはそこでハタとギアックの方へと振り向く。


 

 そこには血走った眼を大きく見開き、なぜか前かがみになっている同期の姿があった。



「ギアック……」


「テメェ……腰抜け……」



 オーラの色が「ギアック、テメーはもう消えろ」から「ギアックもう死ねよ」に変化し始めているのを敏感に感じ取った青年は、敏感部分を刺激しないようにゆっくりと後ずさる。



「あ、あ、あー、あー、そ、そうだった。僕、今日、アレだ。アレの当番だった。アレをアレしなきゃ先輩にアレされちゃうんだ!! という訳でもう行っかなっきゃなー!! ゴメン!! それじゃそういうアレなんでそろそろアレさせてもらうね!! じゃあの!!!」



 逃げるように去るとは正にこの事。


 ギアックは二人の怨嗟の声を背後に聞きながら、前傾姿勢で一目散に駆け出して行った。


 その後ろ姿を見てミユキは。



「アイツ……逃げ足だけは一級品だな……」



 その余りの速さに驚嘆することしかできなかった。





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